突然の転校
今日は夏休み最終日。美月と美優との初めてのダンジョン攻略から1週間が経った。あの日以来まだ、迷宮には行っていない。
この1週間は貯めに貯めた夏休みの宿題をずっとやっていた。もっと前半から少しずつやっておけば良かった。毎年そう思うが、もちろんのことそんな事出来る訳がない。そもそも、前半からやっとけば良かったって言って次の年出来る奴はほとんどいない。
とまあ、そういうわけでこの1週間は全然修行が出来なかった。1日だけ修行の日にして、初級弓術のレベルを8にした。そして、現在のステータスがこちら
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加藤拓也 lv.1
称号:「期待されし者」
HP:100/100
MP:50/50
STR:5
DEF:3
AGI:4
INT:6
LUX:10
スキル
L :「無限の才能」
U :
N : 鑑定、初級剣術.10、睡眠耐性、疲労耐性、初級弓術.8
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レベルはまだ上がっていない。1週間前のダンジョン攻略で、1レベル上がると思ったが上がらなかった。だが、美月のレベルは上がっていた。なぜ?まさか、これもレジェンダリースキル効果なのか?と思ったが、どうやら美月は経験値1.2倍のスキルを持っていたらしい。
経験値○倍系のスキルは珍しい事は珍しいが、意外と持っている人は多い。美月の持っている1.2倍だと100人に1人の確率で現れる。その他に1.15倍と1.5倍があるが、1.15倍の方はなんと10人に1人の確率で現れる。1.5倍ともなるとユニークスキルと同じ確率の1000人に1人の確率となる。
噂によると高校生でS級になった秋山晃樹って人は3倍のスキルを持っているらしい。おそらくユニークスキルであるだろうが3倍はやばすぎるだろ。1.5倍がユニークスキルと同じ確率なのにそれで3倍を引くって事は相当運が良い人なんだろう。
でも、それだけでS級にはなれないと思うから、おそらくもう一つユニークスキルを持っているはずだ。ユニークスキル2つ持ちとなると確率は一気に上がり、100万人に1人の確率となる。今までで確認された中で最も多くユニークスキルを持っていた人は6個も持っていたらしい。その人はもう死んでしまっているが歴史に名を刻まれている大英雄だ。
今現在、生きている人だとアメリカ人の冒険者アルフレッド・コリンズさんの4個だ。その人は、今もアメリカ1の冒険者として活躍している。
さて、それじゃあ明日から学校だから今夜中に宿題を終わらせないと。
チュン、チュン、チュン
よし、何とか間に合ったー。僕は最後まで残しておいた数学のドリルを閉じた。結局徹夜してしまい、これからすぐに学校に行かなければいけない。あいにく僕には、睡眠耐性のスキルがあるのであまり眠くはない。
僕は朝食を食べるためにリビングに行った。そして朝食を食べている時
「今日の冒険者ニュースです。今朝4時半ごろブラジルでレジェンダリースキル保持者が発見され、保護されました。ブラジル政府によるとそのレジェンダリースキル保持者はS級ダンジョンにソロ攻略に行き、それを心配した冒険者協会による鑑定により発覚した模様です。これで、アメリカ、ドイツ、イギリス、に続いて4人目のレジェンダリースキル保持者となります。以上、冒険者ニュースでした」
「朝から、すごいニュースね」
「そうだね、まさかブラジルにいたとわ」
「本当よねー、どこにいるか分からないってのが怖いわよねー」
「そのどこにいるか分からないって話だけど、とある科学者が言うには八大神域ダンジョンがある国にいる可能性が高いらしいよ。今回の場合だって、ブラジルには八大神域ダンジョンの一つイグアスの滝ダンジョンがあるからね」
「そうなのー、それじゃあ日本にいる可能性があるじゃない」
「そうだね、意外と近くにいたりして。なーんてね」
ビビったー、兄ちゃんに気づかれてるのかと思ったよ。今の会話は、僕の母と兄のものだ。兄は、遅めのお盆休みで今は家にいる。
母さんが怖いと言っているのは、過去にアメリカのレジェンダリースキル保持者が起こした暴動のせいだ。その人は、国に監視されているのに嫌気がさし、監視してる人を殺して逃げてしまったのだ。その殺された人はA級冒険者だったのにも関わらず、一瞬で殺してしまったようだ。
その後そのアメリカ人は、アメリカ政府によって逮捕された。アメリカ政府は、その人の逮捕にS級冒険者を15人も動員したらしい。
そして、そのアメリカ人は今刑務所にいる。この事件がきっかけでレジェンダリースキル保持者は畏怖の目で見られてしまうようになった。レジェンダリースキル保持者を管理している他の国もこの事件を受けて、名目上監視の目をゆるくしたようだ。
まだ世界には、僕を除いて見つかっていないレジェンダリースキル保持者が3人いる。なぜそんなことがわかるのかと言うと、30年前にとあるS級冒険者が見つけたある石碑のせいだ。その石碑には、「ここ20年以内に英雄が8人生まれる」と書かれていたのだった。
その10年後に世界初のレジェンダリースキル保持者がイギリスで見つかった。そのイギリス人は、まだ10歳だったのにもかかわらず、政府に管理される生活をおくっている。
そこで、イギリス政府が興味本位でまだ10歳の子供とベテランのS級冒険者を戦わせたのであった。その結果は、10歳の子の圧勝。しかもスキルを手に入れてまだ3ヶ月ぐらいで、である。僕とは大違い。イギリス政府はその結果を全世界に発信し、レジェンダリースキル保持者が石碑に書かれていた英雄だと言った。
今では、その10歳の子も30歳である。20年間も政府の管理下に置かれる生活なんて僕には、我慢できない。でも、僕のレジェンダリースキルの能力を知ったら政府の人も落胆しそうだな。
その後、僕は朝食を急いで食べてすぐに学校に行った。あそこで僕に話が振られてたら変なボロを出しそうだったからだ。母さんも兄さんも変な目で見ていたが気にしない気にしない。妹の朱音はまだ寝ていた。あいつは妙に鋭いところがあるからあそこにいなくて良かった。
「遅いぞー、新学期早々ギリギリか!加藤」
そう言うのは、相も変わらず体育教師だ。そう、なぜか僕は早く家を出たはずなのにいつの間にかギリギリになってしまった。コンビニに寄ったのが良くなかったのかな?まあいいや、今日は勇太を見かけなかったけど早く来たのかな?
ガラガラガラ
「おはよー、レン。1週間ぶり」
「おお、拓也か。相変わらずギリギリだな。それよりさ、勇太のやつ転校したって」
「え?転校?この時期に?なんで?」
「そんな矢継ぎ早に質問すんなよ、どうやら日本冒険者学校に転校したらしい。クソ、俺と一緒に行くんじゃなかったのかよ」
「日本冒険者学校に?どうして急に」
「そんなの俺も知らねーよ。裏切られた気分だ」
「そうだよね、勇太はそんな酷いことするはずが無いんだけど変わったやつだからな」
「クソ、まあもうしょうがねーわ。俺も高校から日本冒険者学校に入ってあいつに直接文句言ってやる。よし、じゃあ拓也これからは一緒にダンジョン攻略行こうな」
「え?いいの!僕レベル低いけど」
「いいのいいの。どうせ他に一緒に行くやつ誰もいないしな。拓也のレベル上げに付き合うわ」
「本当に?あ、でも、僕今一緒にダンジョンに行く約束してる人たちがいるんだよね」
「ん?そいつらとも一緒で良いじゃねぇーか。拓也と同じぐらいのレベルなんだろ?一緒にレベル上げしちゃえば良いじゃん」
「それもそうだね。じゃあ今日の放課後聞いてみるからこの話はまた明日しよ」
「おう」
キーンコーンカーン
「はーい、皆席つけー」
僕は、自分の席に座った。それよりもどうして勇太は急に転校したんだろう?今日の放課後勇太にも連絡しよう。
放課後…
僕はまず、美月と美優に連絡をした。するとすぐに返事が来て、2人とも良いと言ってくれた。
さて、次は勇太にっと。僕は勇太に「どうして転校したの?」と言う文面を送ったが、帰ってきた返事は「気にするな」だった。
いったいどうしちゃんたんだよー