説明書
文章書くのって難しい
キーンコーンカーンコーン
6時間目の授業が終わった。あー、長かった。異世界とは言っても、授業の内容はほとんど一緒だから本当に退屈だよ。前世では学校には通っていなかったけど、通信制の授業を取っていたから内容は分かる。
「拓也、今日どっか行く?」
そう言ってきたのは、同じクラスの友達の影山レン。こいつは少しチャラい見た目をしている。背は183cmと高く、色黒でイケメンだ。僕の周りにはイケメンが集まるようだ。レンとは中学校からの友達で、普段は勇太との3人でよく一緒にいる。
「うーん、カラオケとかどう?」
「おっけー、じゃあ勇太も誘っとくわ」
そう言って、隣のクラスへと行った。残念なことに勇太は同じクラスではない。
さて、ここで部活やってないのー?と思ったのではないのではないだろうか。なんとこの世界には、部活がない。ステータスで左右される世界だから、部活は意味がないということなのだろう。その代わりに、同好会が結構ある。僕たち3人は、同好会には入っておらず放課後は遊んでばかりいる。とは言っても、勇太とレンは冒険者もやっているからちょくちょく2人でダンジョンに潜ったりしてる。僕も、ダンジョンに行きたいのだが、冒険者の資格を持っていないと入れないのでそういう時は、大人しく家で修行している。僕がまだ、冒険者にならない理由は、スキルが全然手に入らないからだ。
というわけで現在のステータスがこちら
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加藤拓也 lv.1
称号:「期待されし者」
HP:100/100
MP:50/50
STR:5
DEF:3
AGI:4
INT:6
LUK:10
スキル
L :「無限の才能」
U :
N : 鑑定.1、初級剣術.1
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はい、これだけ。こんなのじゃ全然戦えません。参考までに初級剣術.1がどれぐらいのレベルかと言うと、ゴブリンに余裕で負けるくらい弱い。このスキルが手に入ったのだって、つい1週間前のことだ。ステータスが手に入ってから毎日1時間素振りしてやっと入手したのだ。僕の予想だとこのスキルはありとあらゆるスキルを手に入れられるものだと考えている。しかし、条件が分からないからどうすればいいかも分からない。あー、説明書が欲しい!
ボトッ
ボトッ?目の前に一冊の辞書みたいな本が現れた。なにこれ?もしかして、説明書?僕が願ったから?でも今までだって何回も願ったけど?とりあえず開けてみることにした。
(ごめん、説明書のこと忘れてた。今さっき思い出したんだ。それ使って色んなスキル手に入れてね。それじゃあ頑張ってねー 神様より)
「なにしとんねん!」
急な出来事につい声に出してつっこんでしまった。周りの視線が痛いです。僕はダッシュで教室を出て、勇太とレンに今日は遊べないと言い、家に帰った。
さっそく、自分の部屋で説明書を読んでみることにした。いやー、説明書あったのか。忘れてたとか、あの神様適当すぎるだろ。でも、これでようやく強くなれるぞ!そう意気込み1ページ目を開いた。
[この本は、レベルが上がるごとに入手出来るスキルが増えていきます。じゃんじゃんレベルを上げましょー!そして、あなたにはスキルの所有制限がないので気にせずにスキルを取得してください。]
そう書いてあった。なるほどレベルを上げないと入手できるスキルも限られるのか。それを知ってればレベル上げてたのに!と言っても魔物に勝てないんだけど。
それに、スキルの所有個数の制限がないのか。これはめちゃめちゃ大きなアドバンテージになるぞ。この世界では普通1人が持てるスキルの量は10個までとなっている。例外として10個より多い人も何人かいるが、それでも15個とかだ。スキルの所有制限がないなんて前代未聞だ。こんなことが世間に知られたらますます大変なことになりそうだ。これは絶対にバレてはいけない。
さてさて、レベル1で入手できるスキルはなにがあるのかなー。
初級剣術、初級槍術、初級盾術、初級棒術、初級武術、初級弓術、初級短剣術…etc
ざっと目を通しただけでも100個近くあった。こんなにいっぱい手に入れられるのか。とりあえず、初級剣術のページを開いてみた。
初級剣術
剣を持ち、24時間連続で素振りを続ける。連続でやらない場合、取得までの時間が増える。レベルアップは、24時間連続で素振りを続ける毎に上がる。だが、1レベル上がったら3日のインターバルが必要。
な、なんて鬼畜なんだ。こんなのおかしいだろ。楽に強くなって無双するんじゃないのかよ。でも、この通りなら、僕がスキルを取得するまでに一年ちょっとかかったのは納得だ。しかし、1日1時間毎日やってもこんなにかかるのか。学校もあるし、24時間ぶっ通しでやる時間もない。これからは、ちょっと無理して1日3時間素振りをすることにしよう。
というわけで、さっそく庭で素振りを始める。家には、テニスコートより少し広いくらいの庭がある。剣は、父さんに買ってもらった安物のダンジョン産の剣だ。「もっと、良いやつを買ってあげるぞ」と、父さんに言われたが、ただの素振りに良い剣を使う必要もないと思い遠慮しておいた。夜ご飯までの、後3時間を修行に当てることにする。さて、僕がどのように素振りをしているかというと、適当に剣を振っているだけだ。素振りの参考にしようと思い、父さんの友人の剣の達人のもとへ行ったのだが、その人も結局スキル頼りで全然参考にならなかった。そういうわけで、自分で考えたメニューで素振りをしている。適当ではあるが、それなりの動きは出来ているはずだ。今日からは、いつもの3倍の量をやらないといけないので、少し憂鬱だ。でも、もっと頑張らないと強くならないなら、頑張るしかない。僕は、ワイヤレスイヤホンで好きな音楽を聞きながら、修行を開始した。
3時間後・・・
僕は、今地面に寝転んでいる。全身から汗が吹き出し、腕はプルプルしている。いつもの3倍にしたとはいえ、きつすぎる。こんな事じゃ24時間連続で素振りなんてできたもんじゃない。これは、筋トレも並行して行わなければならないな。都合の良いことにこの家にはジムもあるので、そこで鍛えよう。本当にこの家はなんでもあるな。さて、今日の修行はおしまい。僕は、家の中に入った。
「拓兄また変なことしてたの?いくら剣を振ったってスキルをゲットできるわけじゃないのに。」
こいつは僕の妹の加藤朱音。小学3年生でまだステータスは貰っていない。
朱音の言う通り、この世界では剣を振ってるだけではスキルを取得できないのが普通だ。普通の人がスキルを増やすにはスクロールが必要であり、滅多に手に入れられる物ではない。初級剣術でも、500万するほど高額だ。
しかし、家にはスキルスクロールが何個かある。父さんがダンジョンで見つけてきた物だ。父さんは、僕がスキルを教えたがらないのを良いスキルが無いからだと思っている。それで、父さんは僕に何度かスクロールを使わせることがあった。
だが、なんと僕にはスクロールが使えなかったのだ。ひどくない?まあ、納得できる部分もあるが、それにしたってひどい話である。これには父さんもびっくりしており、僕を病院に連れて行こうとしたが、なんとか拒んだ。病院に行くとスキルを調べられるかもしれなかったからだ。その後も何回かスクロールを貰ったが、全部使えなかった。父さんはまだ諦めてないようでたまにスクロールを持って帰ってきては、僕に使わせようとする。父さんを心配させないためにも早く強くならなければ。とりあえず僕はA級レベルの実力を備えるまでは、家族にもスキルのことを内緒にするつもりだ。だから、A級になることが今の僕の目標だ。
「しょうがないだろ、スクロール使えないんだから。やれる事はやっとかないと」
そう朱音に言うと、「ふーん」と言って自分の部屋に戻った。小学生ながらに兄が弱いことを気にかけてくれる優しい妹だ。僕が、弱いせいで妹にまで心配されるのはちょっと悲しいが、それも強くなるまでの辛抱だ。明日も修行頑張るぞ。
次の日・・・
めちゃめちゃ腕が筋肉痛になりました。
スキルのレア度
L :レジェンダリースキル
U :ユニークスキル
N :ノーマルスキル