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第一話 死後の世界

 死後の世界というのはどういうものだろうか。


 俺たちの国教では、戦って死んだ名誉ある戦士は神々に選別されて、特に勇敢に戦った者達は英霊アインヘリアルと呼ばれ、高級な酒や美味しい食事、それに絶世の美女たちがいる館に招待されるという。


 だけど、俺が目覚めたのはそういう場所ではなかった。

 近くに大きな泉がある深い木々に囲まれた場所だった。

 最初は死後の世界に行ったと思った。

 不思議と涙は出てこなかったが、胸に深い喪失感だけが残った。


 どうやら俺は英霊などにはなっておらず、名誉ある戦士となっていないことにも微かながらに残念だと思ったが、すぐに頭を振ってかき消した。

 死んだという事実のみが、俺の胸に深くのしかかったのだ。


 何日か死んだように草原に横たわった。

そして顔の上に蠅が止まった時、ようやく自分の状況を確かめるという心の余裕が生まれてきた。


 死ぬ前の状況を思い出す。

 ドラゴンに咀嚼されて殺されたという事実。

 思わず体がぶるりと震えるが、確かにこの体にはドラゴンの歯が刺さった筈だった。

腹も、腕も、足も、体の至るとこに穴が開き、ぐしゃぐしゃにされた筈だった。


 だが、今の俺の体はとても綺麗だった。

 手を見ると生前と変わらずに皮膚と骨があり、それは全身においても変わらない。魂と言うのは、生前のベストな体を覚えているだろう、と納得した。

 ただし、服は着ていなかったが。


 それから俺は美しい泉に顔を移す。

 確かに俺は死んだように、酷い顔をしている。

 血の気のない肌。腐ったような目、歪んだ表情、生前に鏡で見た時とあまり変わりはないように思えるが、きっと死んだからこういう顔をしているのだろう、と自分を納得させた。

 すぐに自分の顔など見たくなくなった。


「俺ってさ、死んじゃったんだよね――」


 自分の状況を思い返すと、酷く暗い気持ちになる。

 もう家族とも会えない。

 両親には、先に死んでごめんと謝りたかった。彼らはいつも長生きしてね、と言うからとても申し訳なく思う。


 妹にはもっとかまってやればよかった。

 妹はまだ小さいのだ。村に帰ればずっと引っ付いてくるような甘えん坊だ。もっと一緒に過ごせばよかったと後悔している。


 それから暫くの間、俺は湖のほとりで放心していた。

 不思議とお腹は空かなかった。

 どうやら死ぬとお腹も空かないらしい。


 ――俺は、死後の世界があることを知った。


 どうやら死後の世界というのは、とても湖が綺麗で、星がよく見え、緑が美しい場所だった。

 とても“現世”によく似た場所なのだ。

 その事を理解するために、俺は二日もかかった。きっと心が現状を拒絶して、何もする気が起きなかったのだ。



 ◆◆◆



「きゃあああああああああああああああ!!」


 何もする気がなかった俺を現実に引き戻したのは、少女の叫び声だった。

 彼女は木の陰から僕を信じられない顔で見ていた。

 力のない顔でよくよくその少女を見てみると、一目見た感じは髪をポニーテルに纏めたとても可愛らしい少女であるが、何故か俺は汚物を見るような目を送られた。


「初対面の人に対していきなり叫ぶなんてひどいと思わない?」


 ニヒルに言ったつもりだけど、彼女の反応は違った。


「へ……へ……へ……」


「へ?」


「真っ裸の変態がいるぅううううううう!! 誰かぁあああああああ!!」


 少女は赤いスカートを翻しながら一目散に逃げていった。


「変態? 俺が? どこが?」


 何故、そんな事を言われないといけないんだ、と憤りを感じるが、よくよく自分の姿を見てみると素っ裸だった。

 確かに俺は死んで魂だけの状態になったのだから服など着ているわけがない。それを見て変態と叫ぶなんて、天国の住人としていかがなものかと思った。

 と言っても、俺は服を持っていなければ近くにもない。


「どうしようか?」


 少しの間考えると、少女が誰かを呼びに行ったことを思い出す。

 つまり、この近くに他に住んでいる人がいるという事だ。

 俺は今更裸が恥ずかしくなるが、それでも気にしない事にした。どうせ服はないのだ。

 できればの話だが、その誰かが服を譲ってくれるような優しい人だったらいいな、と思う。


 ◆◆◆



「そうかい。君は旅人で、泉の中で泳いでいる時に誰かに服と荷物を盗まれたのかい。それは不幸だったね」


「本当にこんないい服をありがとうございます」


「いや、そんな安物を着せてしまって申し訳ないくらいだ。私のお古だから気にせず来てくれたまえ。プレゼントするよ」


 運がいいことに、あの少女が呼びに行ったのは気のいい男性だった。顎髭を生やした行商人である。

 ジャックという名前で、少女の父親らしい。

 俺が遠目から話しかけて服がないことが分かると、快く服を譲ってくれた。

 だから俺は今、飾りがないシンプルな朝の服を着ていた。


死後の世界とは優しい人ばかりで本当に助かった。

またジャックは近くの町まで荷物を届けに行くらしく、馬車にも乗せてくれた。だから今は、馬の手綱を握るジャックの横で、移り行く景色を楽しんでいる。

隣に座るジャックには、心の外から感謝していた。


「それであんたはどこに行くつもりなの?」


 そんな俺に馬車の荷台からジト目で睨むように言うのが、ジャックの娘であるアレーナだ。

 彼女の僕俺に対する言葉尻は厳しい。

 どうやら森の中で真っ裸でいたということで、変態のレッテルを押されたようだ。


「どこって、そうだね。俺は非常に遠いところから来てね、定住するところを求めてここに来たんだ」


「定住って、怪しいわ!」


 アレーナは叫ぶように言った。

 だが、そんな彼女を宥めるようにジャックが言う。


「怪しいって、それはフラム君が説明していたじゃないか。成人した彼は食い扶持を求めて遠い場所から来たって。農家の次男坊だと仕方のない事さ。小さな村だと畑の数も限られているし、仕事の数も少ないからね」


 はっはっは、と笑いながらジャックは手綱をびゅんと動かした。

 それによって、馬の足がまた一段と速くなる。

 目の前には大きな城壁に囲まれた町がうっすらと現れ始めた。


「……分かったわ。それは頷いたとしてもあそこにいたのはおかしいわ。“黒い龍”が現れた森よ。普通の人なら、ましてや冒険者であっても近づかないような場所よ。私たちだって龍が飛び去ったのを見てからあの森を抜けたっていうのに、彼からはそんな話を聞かないわ!


「……なんだって?」


 黒い龍だって!

 俺は思わず聞き返してしまった。


「ええ。知らないの?」


「いや、知っているよ。黒い龍だろう?」


「ええ、私たちがいた森――ラシーヌアンブルの上空は黒い天災が飛び回っている。まさか、知らないなんて言わないわよね?」


「もちろん…………知っているよ」


 ごまかすように言った。

 ラシーヌアンブルという森を当然のように俺は知っている。その森はフーペール王国の西南に広がる森であり、美しい琥珀が採取できることで有名な森だ。

 もちろん俺が死んだ場所もフーペール王国である。


 その事実に気づいた時、俺は思わず震えてしまった太ももを両手で押さえ付けるようにして、隣にいるジャックに尋ねた。


「ねえ、あの大きな町って、もしかして『アリルエージュ』じゃないよね?」


「ああ、正解だ。やっぱりフラム君も『アリルエージュ』を目指していたんだねー。いやー、よかったよ。目的地が同じで。見たところ、フラム君の体は肉付きがいいから冒険者か傭兵だろう? もしも魔物に襲われても安心ってところだ」


 嬉しそうに語るジャックの言葉が、耳には入っていなかった。

 アリルエージュの事を、俺は当然のように知っている。

 フーペール王国の南にある大都市の一つであり、“過去に訪れた事がある”町の一つだ。

 

 俺の想像していた死後の世界に、フーペール王国と全く同じ世界があるとは思い難い。また今馬車で走っているこの道も、遠くに見える大きなおわん型の山も、また段々と輪郭が露わになる街も、思いかえしてみると全て記憶の中に所在があった。


「――ねえ、勇者、って知っている?」


 だから俺は顔を伏せたまま言った。

 どんな表情をしているのか、自分でも分からなかったからだ。


「ああ、知っているよ。“ウイエ様”だろう? 今は北で活躍中と聞いたよ。そう言えば昔にアリルエージュも訪れたと聞いたことがあるね。あれ、もしかしてフラム君って、勇者様のファンだった? だからここを目指しての?」


「う……、うん。じ、実はそうなんだよ」


「ああ、やっぱりそうか。分かるよー! 冒険者なら勇者様は憧れの的だもんね。誰だって憧れるよ。この馬車の護衛として雇っている冒険者も」


 楽しそうに俺の横で語るジャックの顔をまともに見られなかった。

 激しく動揺していたからだ。


 ――ウイエ。


 その名前を忘れる事はない。

 忘れる事など出来ない。

 俺に引導を渡したのがウイエだからだ。

 複雑な感情が心の中で渦巻く。


 だが、一つ言える事がある。

 この世界にはウイエがいて、ウイエと同じ大地に俺は立っている。


「そう……だね…………」


 ああ、どうやら俺は生きているらしい。

 俺は体を抱きしめるように安堵すると同時になぜ生きているのか、という疑問が浮かんだ。俺の記憶には確かに龍に喰われて、体を八つ裂きにされた記憶があるからだ。


 ありえない、すぐにそう結論を出しそうになった時、ジャックが叫んだ。

 太陽が遮られる。

 まるで真夜中になったかのような錯覚を受けた。


「うわ! あれは何だ!!」


 僕は先ほどまで考えていた頭の中の考えをかき消し、ジャックの目線を見た。

 そこには――魔物がいた。

 太陽を隠すように大きな鳥のような魔物が、僕たち狙っていたのだ。それは鷹の様であり、大きな翼をはためかした。


「魔物……だね――」


 あんなに大きな鳥を他に僕は知らない。

 魔物だろう。

 クリニエールミランと呼ばれるものだ。別名が「たてがみを持つ鷹」と呼ばれており、首の周りに四肢のように黒い毛が生えているのだ。

 かつては何度か遭遇したことのある魔物である。


「へへっ、出番が来たな。馬車を止めてくれ――」


 そんな時、アレーナと共に荷台に乗っていた冒険者の一人が、先ほどの彼女と同じように顔を出した。

 ジャックが言うには彼は町と町の間にいる危険なモンスターから馬車を守るための護衛だ。

 その冒険者は鎧を携えていた。


「わ、分かりました!!」


 ジャックは手綱を強く引っ張って馬を止めた。

 追いつかれたら、馬車ごと魔物に壊される事を危惧したからだ。


「腕がなるぜ――」


 冒険者は馬車から下りると右手を大きく回してから、腰にある長い直剣を抜いた。

 刃こぼれが一つもない素晴らしい直剣だった。

 きっと歴戦の冒険者なのだろう。


「彼は有名なの?」


 俺は思わずと隣のジャックに言う。


「もちろん、有名さ。彼はね、アリルエージュでも腕利きの冒険者さ。持っている“力”だって有能なものさ。今に見てみなよ。彼はね、右手を大きくして人ならざる力を振るう事ができるんだよ!」


 どうやら彼は強いらしい。

 でも、クリニエールミランも油断ならない魔物だ。

 だから思わず俺は馬車から下りながら、声をかけた。


「手伝おうか?」


「大丈夫だよ。オレ一人で!」


「そう。分かったよ。でも、助力はするよ。俺は付加術師だからね――」


「へえ、珍しいな――」


 確かに彼の言う通り、付加術師という戦い方は珍しいかもしれない。

 自らの手で魔物を殺すことが誉れとされている冒険者にとって、自らの手を汚すことが少ない付与術師は蔑まれることが多く、あまりなろうとする人が少ないのだ。


 俺は師匠に鍛えられて付与術師になった。

 もしも師匠がいなかったら、他の戦い方で冒険者になっていたかも知れない。


「『戦士よ、獣のように戦え(スヴァートル)』」


 そんな俺の付与術は大きく分けて、三つしかない。

 今回使ったのはそのうちの一つ――身体能力を強化する付与術だ。勿論、無詠唱でも使う事ができるのだが、今回は早さよりも上げ幅を意識した。


「おお、なんか体が軽いぞ!」


「それはよかったよ」


「これなら戦えそうだぜ!」


 彼は右腕を肥大させて、魔物へと短剣を投げた。

 それをきっかけに、魔物と冒険者の戦いが始まった。

 魔物が上空から冒険者を襲い、冒険者は襲ってきた時に剣でのカウンターか上空にいる魔物へ向けて投げナイフでけん制している。


「もしかして、フラム君も冒険者なのかい?」


「……うん、まあね」


 馬車の中に隠れたジャックへと答えた。

 もちろん馬車の近くにいて、僕は魔物の攻撃がこちらに向くことに対しては深く注意する。


「じゃあ、これを上げるよ。安物だけど、しっかりとした剣だ。だから絶対に私たちと馬車を守ってくれると嬉しい!」


 ジャックが僕に剣を投げ渡す。

 それは鞘に包まれた普通の剣だった。

 僕はそれを抜いた。久しぶりに持つ剣の重さは、想像以上に重たい物だと思った。何かを奪う命の重さだろうか。


「う、うわーー!!」


 そんな風に感慨深く思っていると、冒険者は魔物に襲われていた。

 その魔物は強かった。

 もちろん、強靭な肉体もそうであるが、炎を纏い、炎を操ることができるのだ。冒険者は魔物の操る炎に包まれていた。


「『戦士よ、獣のように戦え(スヴァートル)』」


 冒険者にかけた付与術と同じものを、自分にもかける。

 あまり自分に付与術をかけた事はない。

 何故なら、俺の付与術は、一人にかけるものではないからだ。


 ――付与術と言うのは、簡単に言えばマナを使って行う肉体強化術の事だ。本来なら誰でも使えるもので、戦士ならば己へと使っている者も多い。勿論、口上は人によって違うが、戦士以外にも使う者は大勢いる。


 だけど、他人に使う者はそう多くはない。

 人に使うには自分に使うよりもより多くのマナが必要で、それは人数が多くなるほど必要なマナの量が増える。勿論戦士にとっては自分のマナを使わない分、戦うのが楽になると思う。


 俺は生まれつきマナの量が多かった。

 だから――パーティーメンバー全てに付与術を使う事ができた。


 だけど、その多すぎるマナのあまり、自分に付与術をかけすぎると、自らの体を壊すので師匠から使う事を禁じられていたのだ。


「仕方ないよね?」


 師匠に向かって言うように、空に呟いた。

 罪悪感はない。

 昔から魔物から逃げ出すときにはよく使っていたからだ。


 だけど、全力で使うのは初めてだった。


 俺は全身に力を巡らせて、魔物へと突っ込んだ。

 剣の振り方なんて知らない。昔に習ったような気もするが、既に忘れてしまった。僕は自分でも信じられないような速さで魔物へと突っ込み、斬りかかった。魔物は翼に少しだけ傷を負うが、やはり安物の剣だとそこまで傷つかないようだ。


「うわっ!」


 そのまま勢いを殺すことができずに草原へと顔から突っ込んだ。

 だけど、炎に襲われていた冒険者を救う事ができてよかった。

 その事に安堵しながらも、俺に危機が襲っていた。


 魔物が甲高く鳴き声を上げながら僕へと襲ってきた。翼を畳み、まるで俺を殺す鋭い槍のように。

 その攻撃を僕は避ける事ができず、まともに受けてしまう。


「い、嫌だっ!!」


 だけど、防御反応としてなんとか左手を前に出すことができたおかげで、魔物のくちばしが手の平を貫くことだけでなんとか事なきを得た。


「――い!」


 だが、その痛みは想像を絶するものだった。

 魔物の嘴は僕の左上を貫通し、骨まで貫いた。まるでそれは縦から裂けるようであった。

 また魔物自身が炎に包まれていたので、俺の左手は灼けた。


 しかし、魔物をとらえる事ができた。魔物は腕によって何とか勢いが止まっている。

 俺は無詠唱で剣の持っている右腕へと、“全力”で付与術をかける。

 もちろん、付与術はかける場所が少なくなればなるほど効果が上がる。他の冒険者にかけることもやめて、右腕のみの集中した付与術はきっと凄いだろう。


「はあっ!」


 俺は全力で左手に突き刺さっている首に向かって剣を振り落とした。

 この剣は“なまくら”だけど、俺の力によって強引に魔物の首を断ち切った。もちろん、剣と引き換えにして。

 その瞬間、胸が温かくなるような気がした。


「――うっ」


 それから俺は必死に歯を食いしばりながら痛みに耐えて、絶命したクリニエールミランの頭を左手から抜いた。


 俺は草原に倒れたまま、このまま“二度目”の死を迎えるのかと思うが――左腕に異変が起こる。

 魔物によって開いた左手の穴と火傷が、まるで時を戻るかのように痛みと共に元へと戻っていくのだ。俺は治癒術を使ったわけでもない。勿論、“そういう付与術”も使えるが、ここまで早く直るわけでもない。


「おい、大丈夫かよ? お、すげえな! あの魔物を殺したのかよ!!」


 すっかり治ってしまった左手を信じられないような目で見ていると、炎によって顔が一部火傷を負っている冒険者が話しかけてきた。

 どうやら彼は僕の怪我が治ったところを見ていないようだ。

 そういう余裕もなかったのだと思う。


「ああ、うん。そうだね。魔石を取るのは任せるよ――」


 俺は彼に返事をしながらも、左手を見つめていた。

 信じられない。

 冒険者の顔とは違いって僕の左手は火傷一つなく、また傷も全て直っていた。


「ああ、これぐらいならするさ。それにしても、これを狩ったのは本当に凄いな、あんたがいなかったらやられていたよ。あんたは馬車に戻って十分に体を休めてくれ」


 冒険者はそう言って、俺の左胸を拳で軽くこついてからクリニエールミランの解体へと移った。

俺は馬車に戻る前に、左胸を握りしめる。


 なるほど。

 だから俺は生きているんだね。

 先ほどの怪我が一瞬で治る事もよく分かった。


 俺の左胸には――明らかに骨などではない“固いしこり”があった。


 このしこりは――魔石と呼ばれるものだ。

 簡単に言えば“魔物の証”である。何故なら全てのモンスターは体の一部分に、魔石と呼ばれる特殊な石を持っているのだ。


 どうやら俺はモンスターになったのだろう。

世界にはゴブリン、スライム、オーク、ドラゴンなど様々な魔物が存在するけど、人が魔物になる事例は一つしか存在しない。


 ――不死者だ。

 だから俺は今も生きている。

 死ぬことがなく、永遠の存在。どんな傷でもすぐに治すことができる魔物。


 どうやら俺は一度龍に食べられて死んだけど、新しく魔物となって生き返ったみたいだ。

 これを僥倖と言えばいいのだろうか。

 それとも人類の不俱戴天の敵であるモンスターとなった事に嘆けばいいのだろうか。


 不死者の中にも骨の体しかないスケルトンや腐った肉体を持つゾンビなど様々なモンスターがいるんだけど、どうやら俺の体は生身とあまり変わらないようだ。

 

 握った右手は、在りし日の姿と変わらない。

 だけど、間違いなく龍に食べられた時に僕の体は変わってしまった。


 おそらく俺の体は怪我をしても、やがて元に戻るだろう。なんせ龍に食べられても元に戻ったのだ。実験するつもりはないが、自分の再生能力はなかなかではないだろうか。


 さて、一体、これからどうしようか。

 俺はそんな事をゆっくりと考え始めた。

ここまで読んでくださってありがとうございます。


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