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デウス・コルプス  作者: 雹呀
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記憶の片鱗(1)

何年ぶりだろうか、弟がいなくなったあの日を思い出すのは。いつ夢でみても、何度みても恐ろしい出来事だ。光に包まれた後は、本当に記憶が全く無く、ただ、何かが自分の中に入り、自分だけではなくなったけど、人格は自分一人しかない。それは、剣の出現と同時に起きた。



俺は神の体軀 出現及び増加の原因であるため、帝国で1番強く、神殿の警備をしている騎士団に入れられた。それは例の事件のすぐあとだった。


今は事件から10年が経ち、俺は16歳になった。気づけば役職は隊長、日常生活では戦闘を専門とした学校の高等科1年首席をとっていた。


「一縷 白蓮、起きろ。たく、今月に入って何回目だ。あれほど授業中に寝るなと言っ………………おいっ、聞いているのか」


「今月に入って、7回目ですけど…何か問題ありますか」


おっと、思わず反論してしまった。なにせ、目を開けたら目の前にカエルの顔とサルの顔が混ざったような、摩訶不思議な怒り顔があってイラッとしたので。思わず、このような心の声が出てしまい、


「ん、やっぱりカエルザルだ……」


『………………(ブハッ…)』


「一縷………後で、職員室に来なさい(ブチッ)」


やらかしてしまった。


だが、クラス内が一瞬笑に包まれ、これでよし、本当のことを言ったまでだからなと思った。その後、結局職員室でみっちりお説教された。まぁ、この先生が「誰がカエルザルですか」と怒りながら言った時の周りの反応は………言うまでもない。



お説教のため騎士団の寮に戻るのが遅くなった。


寮のエントランスホールから自室のすぐそばまで来た時、後輩である、一匡 丁夜がなにか急いでるような感じで走ってきた。


「隊長、大変です。神殿の近くで、何者かが暴れたのが午後2時過ぎ………今から5時間前に確認されました。それで………」


「詳しくは中で聞く」


一言そう言って、自室に入った。そして、お互いが椅子に座り向かい合い、丁夜は入ってきた情報を話し始めた。


「確認されたのは午後2時過ぎ。神殿の警備をしていた騎士が不審人物2人を見つけ声をかけたところ、襲われ、負傷しました。」


「見た目は」


「2人とも、16歳ぐらいで1人は隊長に似ていたそうです」


「他には」


「えーと、『はく兄はどこにいる』と聞いていたそうです。あと、2日後にまた来ると言っていたみたいです。」


「丁夜、神殿の警備、2日後俺を入れといてくれ」


「え……でも隊長、こういうのはやりたくないと……」


「………ちょっと、心当たりがある…からな」


「わかりました、ですが、二人体制ですよ」


「お前でいい………」


「了解です。では、失礼します」


丁夜が部屋から出て行ったあと考えた。«俺に似ている»ということと、«俺をはく兄»と呼ぶこと。この2つの条件が重なる奴は1人しかいないと思った。


一卵性の双子である俺は、ついになる奴と瓜二つだ。そして、俺を名前で呼ぶ奴は家族だけだ。この2つが重なるのは…………あの日から姿を消した………弟しかいない。


この夜は寝付けなかった。弟が無事で会うことが出来る喜びと、恐怖心があったからだ。そして、俺は例の事件の後、光の力を手に入れたが、弟は何を手に入れ、なぜ失踪し、あれからどう変わったのか………全てが不安で仕方なかった。



俺は、いつの間にかデスクで寝てしまっていた。そのため額にはリングファイルの跡がくっきりついていた。結構痛いなと思った。


だが、のんびりしていられたのはここまでだった。時計を見て血の気が引いた。


今日は騎士団の体験会があり、隊長なので参加しなくてはならなかったのだが、開始時刻が9時………………今は10時なのだ。


「…………やべぇ………………遅刻…だ」


急いで準備したが1時間遅れていった俺は、総司令官にこっぴどく怒られた。その時、『あー、人って怒ると………茹でた蟹みたいに見えるなー』と思った。


その後、俺には仕事が無く、1日フリーになった。


まぁ、弟との再開を考えるのに丁度いいかもしれない。そう思えた。



俺は自室に戻り、弟と会うことについて考えた。


可愛くて仕方がなかったあの頃からどのように変わってしまったのか、なんて事を考えていた。


するとふと重要なことを思い出した。あの事件の時に出現した剣はどのように出すのか………何一つ覚えていないことに気がついた。弟との再開に必要な鍵かもしれない。


いてもたってもいられなくなり、俺は駆け出していた。


向かった先は、神話や魔術などに詳しい奴がいる所だった。


「緋雨先生、いますか」


「おー、白蓮。どうしたんだ」


「あの………魔剣のだしかた知ってますか」


「いきなりどうしたんだ」


「いや……その……………」


「………まぁ、いいや。詠唱……っての分かるか」


「あれっすよね、長い文の………」


流石に戦闘と言っても俺の場合、魔剣なんぞものは使ったことがない。その為か、«魔法»や«詠唱»というものはよくわからないのだ。


そう思い、考えていると、緋雨先生がこう言ってきた。


「詠唱…………そうだな。魔剣の場合、剣に宿っている精霊…もしくは魂がある。心当たりはないか」


「魂……………対になるかもしれない……」


「なぜ、対だ」


「生き別れた弟がいるので…………」


確かに、なぜ、対になると言うキーワードが出てきたのかなぞだった。生き別れた弟を思ったからだろうか。


無性に悲しくなった。早く弟に会いたい、そう思った。


「対か…………神話でいちよういるぞ」


先生の声によって不意に現実に引き戻された。そして、こう続けた。


「伊邪那美と伊邪那岐だ。知ってるか、兄妹であり、今では正反対の力を持つ夫婦だ」


「…………」


「お前、光か。それとも闇か」


「たぶん、光…だと思います」


俺が『たぶん』と言ったのは、自分が光かなんて知る訳がなく、記憶の中にある剣が白っぽかったからだ。そして、弟が消えた理由が『闇』かもしれない、そう思った。


「ならば、伊邪那岐を想像してみろ。答えは見つかる………と思うぞ。では、これで失礼、会議の時間だ」



俺は悩むといつも行く中庭に行った。


側にある噴水の音に耳を澄ませながら、『伊邪那岐』について考えていた。いざとなると、自分は無知だということを痛感する。


ぼーっとしていると、突然何者かの声が聞こえ、それは何かの文の様にも聞こえた。


「聖を創り出す閃光よ 汝は全ての真実を開き暴くもの 闇に覆われた中 光導く指標となれ」


「……………」


「おい!坊主、これどう思うか?」


「……カッコいいです」


「そうか、そうか、嬉しい限りだ」


そう言ってまた文を口ずさみはじめた。それを聞いて、またその容姿を見て俺の頭にはとある名前が浮かんだ。


「伊邪那岐…………」


「なんだ坊主………………我の名を知っているではないか」


「は?」


俺は心底マジなんなんだこいつと思った。伊邪那岐とは神、神話上の人物だぞ。いる訳が無い。だが、ひとつ引っかかることがあった。それは、なんとも言いようのない、こいつの格好だった。


「あの……本当に伊邪那岐すか?」


「いかにも。なぜ我に問うのだ」


「…………(疑わしいからに決まってんだろ)」


「まぁ、良い。さっき読んでいた文は『詠唱』とやら言うらしいぞ。これを言って剣が出た者の守護神に我はなるぞ」


『剣』というワードが出てきたことに対し、俺の剣がこれかもしれないと直感で思った。


「あの…………詠唱、試してみていいすか」


「良いぞ、では、我の後に続け」


詠唱を試してみることにした。


「聖を創り出す閃光よ」


「汝は全ての真実を開き暴くもの」


「闇に覆われた中」


「光導く指標となれ」


伊邪那岐の後に続けて言ってみた。すると、光に包まれ剣を握った感触を得た……………と同時に、意識を失った。


「やはり、負担が大きかったようじゃな」




「…………ょう、隊長起きてください。仕事の時間ですよ」


丁夜が起こしに来てようやく目が覚めた。どうやら、意識を失った後、そのまま寝てしまったらしく朝になっていた。


そして、昨日の出来事は夢ではなかったらしい。ベッドの脇には、白く光る剣があり、目の前には伊邪那岐と言っていたおっさんがいた。そして、伊邪那岐は一言「さぁ、待ち人が神殿にいる」と言い笑った。



弟に会う。


そんな重要な日を迎えた。


10年ぶりの再開だ。


ワクワク、不安、楽しみ、悲しみ。


イロイロと思いつくことはあるけれど、神殿の警備に向かった。



そこにある悪夢など知らないオレは…………。

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