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3-36 終幕

 父さんは泣きむせぶ母さんに近づき、膝をついて彼女と向き合った。優しく肩に手を置いて、口を開く。

「知ってたよ。でも、当時は知らなかった。大体、赤ちゃんの頃の凛太郎から、君たち二人の事を感づけるわけないだろう? 知ったのは、凛太郎が大きくなってから、叱るときに、凛太郎が典史の目をしてる、と確信した時だ。

 でも、だからと言って、凛太郎に罪はないのだし、もし君を責めれば、それを見ている凛太郎や衣知佳に辛い思いをさせることになる。だから責めなかったのもあるけど、それ以上に俺は、お前たちを信じたかったんだ。何か理由があるのだと。今までそう信じて生きてきた。信じることで、臆病な心に付け入る隙は与えないと、昔、気の弱かった凛太郎にも言い聞かせてきた。

 ……罪悪感は、時に人の優しさをも曲解させることもある、か。ごめんな、俺がもっとはっきりしていれば良かった」

「謝らないで。私が悪かったの。ごめんなさい」

「嘉手島、この通りだ。許してくれなんて言えない。いくらでも、ぶんなぐってくれ」

 父さんは土下座していた井岡に近づくと、その肩を掴み、上半身を立たせた。

「典史。俺の目を見ろ。昔みたいに」

 涙顔の井岡を掴み、父さんは彼の目を見つめる。

 その光景に、俺はどこか見覚えがあった。俺を叱るときの、父さんの姿だった。

「お前や母さんが一番に謝らないといけないのは、俺じゃない。凛太郎の方じゃないのか。俺は、凛太郎に俺の血が入っていようとなかろうと、俺の子供だという事に変わりはない、そう信じてこれからも生きて、この子に接していける。

 でも、凛太郎はまだ子供だ。そんな風に割り切れないし、ショックも大きいんだ。お前の血が入っていることを意識せざるを得ないときに、当の血を分けた人間であるお前が、今のような生き方をこの子に見せたままでいいわけないだろう!」

「嘉手島……」

「典史、もう俺の事で自分を傷つけるのはよせ。自分のためにも、そしてお前を知って生きて行かないといけない凛太郎の為にも、自分の行いを改め、まっとうに生きるんだ」

「……はい!」

「そうだ、その目だ。お前のその真っすぐな瞳を、凛太郎も持っている。俺はお前と、凛太郎のその目を信じているんだ」

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