3-33 対峙
スタンドの事務所前に車を横づけて降り立った井岡典史は学生時代のひょろっとした姿から貫禄がついたものの、首と背を前に傾けている姿に卑屈な面影を隠し切れずにいた。目当ての人間を求めてか、せわしなく周りを窺う目元の動きが、彫りが深く陰影の濃い顔立ちに神経質さを加えている。
隠れていた給油機の裏から忍び込み、背後を取る。俺の気配を察知して井岡がこちらを肩越しに振り向く前に、俺は拳銃を突き付けた。
「初めまして。井岡典史さん。動くなよ」
「誰だ」
「名乗る必要はない」
「子供がそんなもの持つもんじゃない」
「ヤクザだったら持っていいっていうのか」
俺はグリップの底で井岡の頭を殴りつけた。短くかみ殺すような悲鳴を上げて井岡は膝をつく。
「お前らみたいに人から奪う事を生業にしてるような奴らには、奪われた人間の事なんて考えたこともないんだろうな」
「あのラインはお前だったのか。嘉手島さん家の人たちに何をしたんだ」
「黙れ!」
今度は強く背中を蹴りつける。手を突く間もなく井岡は地面にしたたかに顔を打つ。俺はうつぶせになった井岡の背中に乗せた足に体重をかけて銃を向ける。
「何をした、だと? お前こそとんでもない事をしてくれたよ。あの人たちの味方のつもりなのか。俺は知ってるんだぞ。母さんに裏切られ、お前にも裏切られた父さんの気持ちなんて分からないだろう」
「君は……凛太郎君」
「気安く名前を呼ぶな。お前のせいでみんな死ぬんだ。だったら俺が、お前の過ちの結晶である俺がお前にふさわしい最期を与えてやる。――いえ、どうして今頃戻ってきた。答えろ。そして懺悔しろ。お前の拳銃で腐った頭に穴をあけてやる」
「再会したのは、偶然だったんだ。僕は、君の母さんへの別れの挨拶と、写真を何枚かもらいに来ただけなんだ」
「それを見せろ」
足をどかせて立たせると、銃口を横に振ってせかす。井岡はポケットから数枚の写真を取り出し、それを両手で俺の顔の前に一枚ずつ出して見せた。
井岡の家で見た、彼らの青春の軌跡の写真がそこにあった。
「今度こそ、君たちの前から完全に姿を消すつもりだったんだ。もう会わないつもりだったから……みんなの思い出を忘れないように、写真をもらいにいったんだ」




