3-26 隠し事
日曜日の夕方には帰らないといけなかったので、名残惜しそうにするおばあちゃんに挨拶をし、俺たちは家を出た。帰る電車の途中で衣知佳からラインが届く。
――お母さんの部屋でアルバムを見せてもらったんだけどね、写真が何枚か抜けてるんだ。びっしり詰まってる間に、ところどころ。
――もとから抜けてたわけじゃなさそうな感じか。で、その事を母さんに聞いたか?
――とぼけられた。何だったかなって。
――気になるか?
――うん。でも、危ないのをアルバムに貼ったりするかなぁ?
――だな。俺、ちょっとした裏技で相手の男の住所見つけたから、そこに行って調べてくるよ。隣の市だけど。
――私も一緒に行っていい?
――衣知佳を危険な目に合わせたくはない。俺に何かあって家に帰れなくなったら、その時は頼む。
――冗談でもそんなこと言わないでよ。
――悪い、悪い。
衣知佳とのやり取りを終えた俺は、ホッと一息ついて自分がとったメモを取り出した。住所を確認する。衣知佳と一緒に行くわけにはいかない。何故なら俺は――。
「何ですか、それは」
顔のすぐ横で飯倉に声をかけられた。俺は小さく飛びのいて、胸に手を当てる。
「びっくりするなぁ、もう」
「それは、嘉手島さんがおっしゃっていた男の人と関係があるんですか」
問われてハッとした。飯倉にパトカーでの件を見とがめられたときにした説明を、どうやら信じ切っているらしい。
「ああ……いや、大丈夫だよ。そもそも、俺の家の中の話だから。飯倉は気にする必要ないって」
その後、何かとしつこく聞かれたが、俺はのらりくらりと彼女の追及をかわし続けて家に着いた。
玄関口に着くなり、おかえりの声にまじって、衣知佳が弾んだ足取りで近づいてくる。
「やけにうれしそうだな」
「母さんのロック番号分かったよ。触ってたのを後ろから見ちゃった」
そう言うと衣知佳は四桁の番号を暗唱した。
「それで、中身は見たのか?」
「まだ。一度凛にいに話した方がいいかなと思って」
「別に大丈夫だよ。気を遣ってくれてありがとう」
俺が衣知佳の目を見てそう言うと、彼女は照れくさそうに笑みを浮かべ、人差し指でえくぼをかいた。
夕餉の席で俺と飯倉との動静を探る父さんの追及をかわし続け、政治家の気持ちが少しわかったような気がして俺は一日を終えた。
翌日。
俺はメモしておいた、井岡典史の住所に向かった。




