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3-24 縁日へ

 飯倉の奇遇に文字通りの意味はない。俺はマスク越しに引きつった笑みを浮かべて、頭を下げた。

「お、おう。奇遇だね。それじゃ、俺はこれで」

「待ってください」

 踵を返し、駆け足をしようとしたところで首筋を掴まれる。

「話があります」

「もしかして、……見てた?」

「はい! もうこの数日不審者そのものです」

 その発言ちょっと待て。その数日、お前は俺をつけてたということか。

「すまんっ。必要な事だったんだ、ここは堪忍してくれ」

「駄目です!」

 慈悲はない。

 飯倉は俺の腕をつかむと、リードするように先頭を歩き出した。

「私と一緒に来ていただきます」

「頼む。事情があるんだ。聞いてくれ」

 交番に行きたくない一心で母さんと間男の事情を説明した。身内の事なので、配慮をしたそれにはなったが、それでも他人が聞けば首をかしげるようなものだったろう。そりゃそうだ。「然るべきところにさっさと相談しろ」で済むことだからだ。俺個人の事情を説明しても、勧められる先が警察や弁護士から医者に変わるだけのことだ。

「事情は分かりました。嘉手島さんのおばあちゃんのところへ行きましょう」

 こんな説明した俺が思うのもなんだが、お前は何を言っているんだ。

「おばあちゃんのところに行ってどうするんだよ」

「もちろん、今週末の神社の縁日に行くんです!」

 は?

「縁日にいってどうするんだよ」

「色々見て回るんです!」

 ひとりで行け!

 ……と、言いたいところだったが、飯倉には以前もだが社会的に見られてはならないところを目撃されている。俺にはその弱みがあって、飯倉の意に強くは逆らえない。

「分かった。こうしよう。俺はお前と神社でデートに付き合う。お前はそれで俺が今さっきやってたことの分をチャラにする。どうだ?」

「チャラにするだなんて、不潔な事言わないでください! 私は真剣です! ですから当日は、嘉手島さんも浴衣を持って来て下さい!」

 何を言ってるんだ、この生き物地球奇行女は。

 数日後、土曜日。俺は連休に行われる縁日のため、両親と衣知佳にことわって、飯倉と一緒におばあちゃん家に再び赴くことになった。

「凜にい、いってらっしゃい」

「怒らないのか、衣知佳」

「私、あいりちゃんのことも凜にいのことも信じてるから大丈夫だよ」

 飯倉は過去二つの事件を解決した実績がある。衣知佳の言いたいことも分かる。

「嘉手島さん! このタコ焼き、美味しいですよ! あ、忘れてました。これ、嘉手島さんのお面です」

「……」

 俺にとっては、飯倉を信じるのは傾奇者の実績が多すぎるのだ。

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