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3-22 This is how I do

 引き出しの奥に当たる部分に鈍い違和感を覚えた。微かだが、閉め切ったはずの引き出しの先が外側に出ている。

 俺は引き出しを箪笥から引き抜くと、前後をひっくり返した。奥の部分の外側に、茶封筒の列がそれぞれ薄いテープで角貼りされて横に並べられている。

 十万の束が三つ。慎重にテープをはがし、中身を確認すると総計九万が三つの二十七万。ニアピン。通帳と同じように今日の日付とその金額をメモして写真に撮ると、寸分たがわぬよう精緻に務め、すべてを元の場所に収める。

「お金なんて調べてどうなるの」

「もし相手の男がお金目当てなら、不自然な高額の出費が、母さんが警察官の妻として何かを利用としているのなら高額の入金が、なにがしか出てくると思う。今のところ、男のやっている事で違法性を問えるのは不貞行為のみだけど、今のところ目に見える証拠はない。おいおいスマホや、出来るならパソコンの中身も確認できればベターだけど、母さんが俺たち二人が夏休みで家にいることを承知でここに相手を連れてくるとは思えないし、車も持っているだろうから、学生の俺たちが探偵のように尾行して写真を収めるっていうのは難しい。それなら、母さんの外出とおかしな出費があった日付をリンクさせて証拠の一つとするんだ。母さんが脅されてるにせよ、自分から浮気を行っているにせよ、こうした証拠を積み重ねれば言い逃れできなくなる。そしてそれは同時に、男に対しての武器にもなる」

「探偵雇った方が確実じゃないかな……」

「依頼料が馬鹿にならないぞ。父さんたちのお金に手をつけるか? ノーだ。探偵を雇うならほぼ確実に行けると思えるような状況って時にしたい。それこそ、父さんに言っても大丈夫って時に。衣知佳も、父さんに話してこの家が壊れてしまうことを心配してたろう? 俺だってその気持ちは同じだ」

 俺は微かに笑みを浮かべて衣知佳の悲しそうな笑顔に応え、そういえば、と以前から聞いておきたかったことを聞いた。

「衣知佳、相手の男がヤクザだって知ってたみたいだけど、それは確実な話か?」

 衣知佳は首を縦に振る。

「どうやってわかった?」

「その人が自分で言ってた。お母さんの部屋で」

「母さんの部屋? 衣知佳、その時家にいたのか?」

「大分前に、体調悪くて学校早退したんだ、その時。そしたら、家の前に車が止まってて。鍵を開けてそっと入ったら、あの人の部屋の中で話し声が聞こえたの。男の声がして、『約束してたやつを受け取りに来たよ』とか、『カタギにヤクザなんて務まるわけねぇ』とか」

 衣知佳が口をとがらせて、男勝りの低い声で物まねを一席ぶつ。約束してたもの、きっとそれはお金の事だろう。俺の推測が正しければ、ここで把握した分のお金から、何らかの動きがあるはずだ。

 衣知佳の物まねをにやにやと見ていた俺の頭に、パッと浮かぶものがあった。

「記憶力がいいって自慢してたよな? 赤ちゃんの頃も覚えてるって」

「覚えてるね。なかなか忘れられない。聞かせてあげよっか?」

「それは後で良いとして。家の前に車が止まってたんなら、車種とか、ナンバーとか覚えてたりしないか?」

 衣知佳が口を開けて手を打ち合わせる。

「えーと、確かねー」

 衣知佳は車の名前こそ知らなかったものの、特徴やナンバーを完全に把握していた。直線基調のグレーの軽。

 俺には一つのやり方が頭にひらめいていた。それが良いやり方か、悪いやり方なのかは分からない。

 だが、俺らしいやり方だと思った。

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