表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
57/81

3-21 捜索

 衣知佳のいう男は、俺が見た男と一緒なのだろうか。同一だと仮定して、だとすると暴力団の交際の目的は、凡そどの交際にも共通なお付き合いの範疇に加えて金銭目的、警察官の妻として新たに加えるところは警察内部の捜査情報、といったところか。

 俺は、母さんが父さんを裏切ったなどと信じたくはなかった。俺が家族を失ったのは、俺が母さんと向き合わず、父さんをいたずらにけしかけたせいなのだ。もう二度と、あんな悲劇は起こさせない。

 警察に連絡することも考えたが、その暴力団員との交際に事件性が認められるのか、まだはっきりしていない。なければ、民事不介入で終わるし、それを機に事の詳細を知った父さんが動いて、あの時の出来事の引き金にならないとは言えなかった。

 徐々に外堀を埋めていき、父さんには内密に母さんを説き伏せる。間男には俺がその頭に引き金を引きたいぐらいだがそうはせず、犯罪の構成要件となる何らかの証拠をつかみ、交渉になるようなら法律に強い人間を間に挟む。そうならないなら通報し、身柄を確保。

 そこから母さんがどうなるかは家族全員での話し合いになるだろう。男は賠償金を支払い、所属している組からも白い目で見られる。果たして、それだけで済むかな。

 母さんが外に買い物に行くのを確認して、俺は母さんの部屋のドアを開けた。至って普通のディスクシリンダー錠なので、鍵がかかっていればピッキングを試みるところだったが、その必要はなかった。

 押し入れとベランダ付きの、ごくありふれた六畳一間だった。部屋の隅っこにベッドが置かれ、その逆側にロングテーブルと箪笥、本棚が並んでいる。開かれたカーテンから煌々とした真昼の光が漏れ、閉め切っていた熱気にさらに不快感を加わったように思えたのは、今からやる事への軽い罪悪感のせいもあるのだろうか。

 衣知佳を従えて中に入ると、俺はまず箪笥に近づいた。

「凜にい、私、何すればいい?」

「通帳と、できればへそくりを探す。衣知佳、母さんのパソコンのパスワードとか知らないよな?」

「分かるわけないよ」

「じゃあパソコンは放置だ。まずはお金の流れを洗おう」

「お金? 浮気の証拠だったら、写真とかを見つけるのが先じゃない?」

「そういうのはスマホに保存してあるだろう。アルバムにでも貼ってみんなで見るのか」

 衣知佳は「そりゃそうだね」と緊張感の欠片もない声を出して笑った。

 箪笥の上の引き出しを探ると、果たして目的のものはそこにあった。帳面に羅列された数字を上から順に追っていく。数字が大きく動いた形跡はないが、貯蓄されていた元の分は目をむくような数字で、俺は別の意味で父さんの仕事に感心した。

 終端の日付と数字をメモして、元の場所にしまう。

「通帳には今のところ問題はなさそうだ。つづいてへそくりを探そう。箪笥にある下着の類は、衣知佳に出してもらってもいいかな」

「おっけい」

 上の段から順に引き出しをひいて探りをいれる。結婚指輪のケースや桐の箱。実印。母子手帳。一番上にはなさそうだ。

 二番目は春・秋物がしまわれてあった。慎重に服のつづらおりを一つずつ抱え、脇に並べる。空になった中身にペンライトをくまなくあてる。ノビというよりは空き巣だな。

 三番目は下着類や今時分の夏物の段で、これは衣知佳に出してもらった。同じようにして中に光を当てて目を凝らすが、何も見当たらない。

「ん?」

 俺は引き出しを持つ手に違和感を感じた。この段のものだけ、少し重みが加わっているようが気がする。

 俺は何度かスライドを繰り返し、元に戻す。

「――やっぱりだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ