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3-18 どん底

 高校をおばあちゃん家の最寄りのところへ編入し、それからの俺は自分で言うのもなんだが人が変わったように勉強した。引きこもっていた独学分の遅れを取り戻し、進学校とは呼べないところだったけれどクラスで一、二番をとれるような成績を出していった。警察学校に入ってからなめられてもいけない、そう思って柔道と空手を掛け持ちして自分の体に鞭を打った。

 父さんがあそこで何を見てきたのか、何を思って自ら死を選んだのか。それを知りたい一心で俺は前に進み続けた。

 地方の国立大学に合格し、奨学金とおばあちゃんの援助を受けつつ、大学三回生から国家公務員試験を受けた。一種は東大などのトップクラスの大学を出ていないとまず採用されないと聞いていたので、二種を受けることにした。

 教養、作文、体力、面接。どの検査も手ごたえはばっちりで、合格と相成った。俺は、じきに来るはずの採用通知を待つ身となった。

 だが、そこで落とされた。

 何がまずかったのだろう。どこか偏屈で扱いにくい奴だと思われたろうか。4回生。次の試験では、面接の方に力を入れて臨んだ。

 合格はした。しかし、不採用だ。

 俺は、自分の心の内に何かが生まれてくるのを感じた。それに目を向けまいと、いやまさかなと力なく笑い飛ばした。

 しかし自分の疑念に負けて、地方公務員の方を受けてみた。

 やはり駄目だった。

 試験はパスしている。なのに、採用されない。

 俺の心に生まれた疑念が、はっきり形となって表れる。それは面接の際、試験官に必ず聞かれた共通の質問に集束していった。

 ――嘉手島正太郎の息子さんですね?

 俺は、はいと答えた。調べられれば分かる事と開き直ったのではない。父さんを、嘉手島正太郎を誇りに思っていたからこそ、どの面接でもはっきりとそう答えたのだ。

 だが警察は、俺の想いなどどこ吹く風のようでいた。

 以前耳にした話で、警察は、身内に重犯罪を犯した者がいれば、彼の者を採用しないと聞いていた。

 俺は頭を抱えた。妻を殺された父さんが結果的に殺人を犯し、自殺という道を選んだのもあの人なりの重大な理由があったのだ。それをあいつらは、自分たちの仲間だった人間を顧みることなく、落伍者の殺人犯と同じ烙印を押して父さんを、そしてその子供である俺を遠ざけている。

 俺は怒りと無力感の中、地元の一般企業に就職した。俺のために色々援助してくれたおばあちゃんと一緒に生活し、奨学金を返済していく。何の目的も楽しみもなく、日々の返済に追われる生活。それでも、おばあちゃんは俺のために我が子のように、色々尽くしてくれた。警察官になれなかったのは仕方ないことだ。これからは、残された大切なもののために生きていこう。

 奨学金の完済まであと一年を切り、ようやっと肩が少し楽になる、そう思えた矢先。

 おばあちゃんが脳梗塞で倒れた。半身麻痺を起こし、俺は介護のため離職せざるを得なくなった。

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