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3-17 疑念

 俺は父さんに労いの意をこめて、なれない腕で朝早くから食事を作っていた。時間になっても起きないので、ドアを開けてみると、父さんが首をつって死んでいた。

 俺は警察を呼び、それを待つ間、母さんの不在に怒りを覚え、昨晩の父さんの涙の意味を考えていた。

 警察の事情聴取を受けて、それを知ることになった。

 母さんは、逆上した男に殺されていた。その男を、父さんが銃殺したのだ。

 俺は、一夜にして家族みんなを失った。

 葬式は、身内だけの密やかなものとなった。

 通夜の席で、俺は泣いた。泣いて、自分を責め続けた。きっと、俺が父さんを煽ったせいだ。俺が母さんが浮気しているなんて父さんに言わなければ、こんなことにならなかったと。

 身寄りのなくなった俺は、父方の母であるおばあちゃんの家に住むことになった。

 おばあちゃんの優しさに感謝しつつも、俺はどうしてあの時父さんは俺も一緒に連れていってくれなかったのかと天国と思しきところへ心を投げかけていた。あの時、父の手は俺の肩にかけられていた。それは同時に、俺の首にもかけられていたのだ。父さんはきっと、俺も連れて行こうとしたのだ。

 何故やめた、嘉手島正太郎。なんで俺をおいて逝ってしまったんだ、父さん。俺の人生なんて意味なんてない、貴方の立派な姿を見ていられればそれでいい人生だったのに。

 しばらくして、俺はその日の事に向き合おうと、図書館で当時の新聞から事件の詳細を読み漁った。かいつまんでいうと、こうだ。午後十一時二十七分。M市郊外のアパートの一室。母は正面近距離から心臓を相手の拳銃で撃ち抜かれ死亡。身体に残った暴行の跡が死亡後であることから、強い怨恨の線があると警察は見ている。相手の名前は井岡。その後、父さんによって頭を撃ち抜かれ死亡している。深夜零時四十分。父さんから警察に連絡があり、事件が発覚した。

 母さんは拳銃で殺されている。という事は、男は拳銃を手に入れられるような人間という事だ。日本という国で、そんな種類の人間は限られている。警察か、暴力団。

 俺は、父さんが何故俺を残して死を選んだのか、理解できなかった。俺自身が立派な子供だったというわけではない。あの人の裏切られたショックも理解できる。しかし、安易に自殺という選択をする人ではないのだ。その理由が、この事件に眠っている。俺はそう確信していた。

 新聞記事だけでは、事の真実に近づくのは無理なように思えた。どうすればいいのだろう。俺は、その日から数日自問自答を繰り返す。

 そして、答えは出た。

「俺も、警察官になろう。……そして、二人に起きた真実を知るんだ」

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