1-3 リプライ
おかしなやつだと思ったが、よくよく考えれば俺の夢で俺の頭が映し出してるのだ。文句を言うのは天に唾を吐くようなものだろう。
俺は溜息をついて顔の前に両手を掲げた。
「突然クラスに来て悪かった、俺は――」
「よぉ、カテキン」
背中から声をかけられる。肩越しに振り向くと、見覚えのあるようなないような男子が3人分、俺の背中を囲むようにして立っていた。
「お前、ちょっと早く夏休みとりすぎじゃね」
「今更何しに来たんだよ」
「挨拶しろよ」
一人が俺の座っていた椅子の足を蹴った。
カテキン。やっと思い出した。俺は、いじめられっ子だった。某ユーチューバーのもじりとかそんないいもんじゃない。ばい菌扱いのカテ菌だ。
全く失礼な奴らだ。カテキンには殺菌作用があるのに。
振り向いたまま、三人の顔をそれぞれ見やる。何でこんなやつらにビビってたんだろう。何せ十数年前のことだ、はっきりとは覚えていない。
殺菌してやるか。
「忘れてました」
俺は立ち上がると、椅子を蹴った男子の鼻面に自分の頭をうち下ろした。
くしゃり。柔らかい鼻骨の潰れる音がする。
「はよざいます」
仲間の一人が指の間から血を垂らして鼻を抑えている。それを横目で見つつ、後の二人が激昂した。
「何すんだお前、カテキンッ」
挨拶に決まってんだろ。
一人が足を半歩踏みこむ。腹から腰を狙った右中段後蹴り。俺も踏み込む。相手の重心側へ。
相手の蹴りが俺の横をかすめる。棒立ちになった相手の足の付け根に、俺は体重をかけて左前蹴りを差し込んだ。
短い悲鳴が上がり、蹴り手が仰向けに倒れた。足を抑えて悶絶している。
残る一人は戦意の喪失した二人と俺を交互に見ている。ゲームオーバーだ。四天王方式万歳。
「挨拶したら返事するのは当然だろ」
「お、おはようございますっ」
素直でよろしい。俺はあっという間の出来事に呆然としている飯倉の方へ振り返ると、改めて自己紹介した。
「俺は、嘉手島凛太郎」