3-2 お前がいる夏
夏の強い日差しがじりじりと顔を焼く。
衣知佳スイミングスクールを受講することになった俺は、市内の屋内プール施設に向かって自転車で県道を流していた。
件の衣知佳センセはいつぞや見覚えのあるニヤニヤ顔を浮かべ、悠々と俺の隣でペダルをこいでいる。
「お前また俺に変な事させるんじゃないだろうな」
「大丈夫大丈夫! 普通に泳ぎ教えるだけだから。とりあえず、クロール出来るようになろ」
プールについた俺達はそれぞれの更衣室で着替えることにした。
「あ、やべ」
帽子着用が義務付けられています、の注意書きを見て俺は頭をかいた。バッグの中には水着だけしかない。海で泳ぐことだけ考えていたせいだ。
水着だけ着替えて更衣室から出ると、ちょうど衣知佳と落ち合った。
「凜にい、帽子どうしたの?」
「忘れた。プールとかほとんど行かないから、うっかりしてたよ」
「あー、でも大丈夫。むこうの突き当りに売店があるから。そこで買ってきなよ」
「でも今日一日だけのために買うのって何か癪だよな」
「男がケチケチすんなって」
「あ。それ男女差別だぞ」
「はい。嘉手島さんお帽子です」
「ん。ありがとう」
……。
「あ。あいりちゃんおはよー! 奇遇だね」
「おはようございます、衣知佳さん」
「飯倉」
「はい」
「どうしてお前がここにいる」
「嘉手島さんのお家をお訪ねしましたら、お父様からお二人がここに来られるということをお聞きしまして。それで、凛太郎が帽子を忘れていってるからもし一緒に遊ぶんだったら届けてもらっていいですか、とお願いされました」
「俺に何か用があったのか」
「はい。まずはプールに来たので水泳を楽しみましょう」
いやまず用件を言えよ。




