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2-8 相談

 女の子が怯えた上目遣いで俺を見ている。まるで俺が主犯格みたいになってるじゃないか。

「よその生徒に迷惑かけるなよ。受験だってひかえてるのに」

「母校だったら好き勝手やってもいいんですか? 暴力はいけないと思います」

 至極ごもっとも。

「もともと、あそこまでやる気はなかった。それに、衣知佳の様子をラインで聞いて問題なければすぐにでも帰るつもりだ。面倒が起きる前に飯倉も一緒に帰るぞ」

「駄目です!」

 飯倉が俺の手首をつかむ。

「嘉手島さんは私に、微力ながら尽力いたす所存です、と言いました。一緒にいてもらいます」

 衣知佳が口笛を吹いてたじろぐ俺の脇腹をつつく。いい気なもんだ。

「一緒にいるのはいいが、結局お前はその子をどうしたいんだ」

「この子がすごく思い詰めた顔をしていたので、相談に乗ってあげようと思いました。それで、声をかけたのです」

「私も最初は面食らったんだけど、話を聞くうちに、これは凛にいのところへ連れて行かないとと思って」

 後半論理が飛躍してますよお嬢さんたち。俺は、小さく咳ばらいをする。

「つまり、相談事だな。君、名前は?」

「私、遠崎奏絵っていいます。衣知佳ちゃんと同じクラスで――」

「奏絵ちゃんもあの子たちにいじめられてたんだよ」

 衣知佳が言葉をかぶせるようにして言う。

「それで飯倉にも絡まれて難儀していると。この度はすいませんでした」

 俺が皮肉を込めて頭を下げると、遠崎は顔の前で手を振った。

「いえ、私が悩んでるところに、飯倉さんが話しかけてくれたんです。困った事があるのなら、私たちに相談してください、って」

 たち!

「それで、何を困っているのかな」

「あの……」

 遠崎は困ったような上目遣いで俺を見ている。

「ああ。これは衣知佳の趣味だ。気にしないでくれ」

「ちょっ」

 突然のアウティングに衣知佳の目つきがこわばるが、すぐにそれをとりなすように遠崎の肩に手を置いた。

「ね、ね。かなえちゃん、可愛いでしょ? これ、うちのお兄ちゃんなんだけど、優しいから私のメイクの練習に付き合ってくれて、あのその」

「え……衣知佳ちゃん、じゃあこの人、男の人なの」

 遠崎が口元に両手を当てて俺を見上げる。

「そ、そうなの。かなえちゃん、でもね――」

「衣知佳ちゃん、すごい! お兄ちゃんすごくかわいいよ!」

「で、でしょ、でしょ!」

 ブルータスよお前もか。

「衣知佳のメイクの腕はともかく、本題に入ろう」

「そうでした。実は、給食費の袋が盗られてしまったんです」

 美谷台中学校は昼食に給食制度を採用していた。月額五千円弱。月に一度、納付日を決めてその日までに納付。数日前からはホームルームで教師から催促の言葉を受け、納付日当日には持ち物・風紀検査を兼ねて徴収にかかる。俺は当日の検査で納付するクラスメイトの姿が目立って恥ずかしいだろうなと思ったので、予め早めに出すようにしていた時の事を思い出した。

「盗られたとはっきり分かっているのなら、その相手もはっきりしているのか」

 遠崎は眉根を寄せ、瞳に薄幸そうな輝きを貼り付けて目を伏せた。

「……そのあと、犯人から手紙が来るんです」

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