2-5 ツクカノ
靴箱のところまでたどり着き、衣知佳が靴を履き替えているところで、俺は自分の分を持って来ていないことに気づいた。
「あ。上履き忘れてきた」
「向こうに置いてあるよねぇ」
「うーん。スリッパ借りてきたほうがいいかな」
「はい。嘉手島さん、お靴です」
「おお、準備がいいな。ありがとう」
俺は飯倉から受け取った上履きに履き替え、脱いだローファーを衣知佳の靴箱へ拝借しようとした手を、――止めた。
ゆっくりと飯倉の方を振り向く。梅雨の空も吹き飛びそうなにこにこ顔がそこにある。
「この上履き、誰の?」
「嘉手島さんのです」
いやいやいや。
「何でここにあるの?」
「私が持ってきたんです。嘉手島さんは運動部で活動されてないので、臭いもなくて洗濯は楽でした」
いやいやいやいやいやいや。
「何でお前がこれを今日ここに持ってきたんだ」
「それは、この間嘉手島さんがお昼時間に、土曜日に衣知佳さんの学校へ行くと仰ってたからです」
おぼろげながらそんなことを言った記憶がある。
「それで、金曜の帰りに嘉手島さんが上靴をそのままにして帰られたので、これは向こうにいったときに困るのではないかと思い、持参しました」
なるほど。気持ちはありがたいが、俺はもっと困った状況に置かれている。
「へー。凛にい、うらやましいなぁ。私も尽くす彼女欲しい」
違う、そうじゃない。




