2-4 共鳴
「どうしてお前がここにいるんだ、飯倉」
「嘉手島さんの自転車の後ろに乗ってきました」
なるほどね。いやいやいや。
「そうじゃなくて、どうしてここについてきてるんだ。俺はこの子――妹の衣知佳が学校に復帰するっていうからいじめられないように見に来たんだぞ。学校はどうしたんだ」
俺が自分の事を棚に上げて飯倉に説教すると、彼女はくりくりとした目をさらに丸くして、首をかしげた。
「嘉手島さん、今日は土曜日ですよ。私たちの学校はお休みです」
思い出した。そうだった。うちの学校はゆとり教育から抜けきっていないんだった。
「凜にい、誰? 彼女?」
衣知佳は目を細め、腕組みをして飯倉を見つめる。飯倉あいりという人間の説明。難しい。NHKドキュメンタリー、ヒューマン・飯倉あいりはなぜヒトになれたのか。
「この子は――そう、以前に話していた、猫わんわんだ」
「猫わんわんはそう言う使い方をしてるわけじゃないです! 誤解を招かないでください!」
その言葉自体が誤解のもとだろ。俺は冷ややかな視線を飯倉に送った。
「……この女の子が?」
俺たち二人のかけあいを見ていた衣知佳が、細めていた目を丸くしてその言葉を復唱する。
「そうです! 猫わんわんです!」
衣知佳の瞳が急にらんらんと輝き始めた。両手で握りこぶしを作って飯倉と相対する。おい、やめろよ。冗談だろ?
「もう一回お願い!」
「猫わんわん!」
「可愛い! 萌えってやつだ! 猫わんわーん!」
「猫わんわーん!」
俺は空を見上げて両目を手で覆った。だめだこいつら、化学反応を起こしやがった。




