はじまり
俺(Aとする)には凄い霊感を持った、歳のそこそこ離れた霊能の先輩がいる。仮にMさんとするか。
ある時、その人の様子がおかしくなっているのに気づいた。
「Mさん、それどうしたんすか、凄いデカイ顔が三つぐらい肩から出てますよ」
「あ~A、ちょっと友達を祓ってやったんだが、どうやらヘマしちまったみたいだ」
「わかりました。うちのオカンに祓ってもらいましょう。いつもお世話になっているし頼んでみます」
「すまんな。ここ最近どうも調子がおかしい……まさか、な」
我々は食べかけのチョコパフェを置いて、ファミレスを出た。
家に着いたら、オカンから速攻先輩は怒られた。
「あんた!あそこの人たちとは関わっちゃだめだと言われてるでしょう!」
「いや、行ったのはMさんじゃなくて、Mさんが祓った人みたいだよ」
「……どちらにしてもあそこの地域の人たちとは関わっちゃだめ、絶対」
おかんはブツブツ言いながらもMさんの肩を便所スリッパで三回ぐらい叩いた。
「おっ、軽くなった。さすがAの母さんだな」
「いいかい、一年の365日牛の刻参りを欠かさないような、地域の人とは付き合っちゃだめだよ」
「あいつらは飢饉があった貧しい時代に、生贄と称して幼い子供や老人を食べてもいたのよ」
オカン……ちょっといくらなんでも言いすぎだと思う。なんか恨みでもあるんだろう。
チョコパフェを食べなおしに行く途中に道を歩いていたら、松子デラックスにそっくりなおばさんに
「あなた何乗せてるの!私は何もできないけど、早く祓った方がいいわ」
と言われた。先輩には業病とも言うべき、常人では祓えない悪魔が憑いているのだ。
「今回は、こいつのせいじゃなかったな」
苦笑いして、そのまま二人で歩いていった。