八の剣【呼び起こす『トリニティ』】
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そして最奥に行くとそこには何かしらの魔導機が設置されていた。あれがおそらく【狂竜臓】であろう。
「あれか」
俺が呟くと【狂竜臓】の背後から、モノクルをつけた四十代ぐらいのおっさんが出てくる。
「ククク。思ったより早かったな。呪われた女王の犬共よ」
「リシュリュー伯爵!」
アテセが諸悪の根源を睨む。
なるほど、このモノクルオッサンがリシュリューか、いかにもって感じだ。
「おい、リシュリューなんで、女王を裏切った」
大剣を担いでポリーが聞く。
「おかしいと、思わないのか? かつてこの国は、男の王が統治していたんだ。だがしかし、ある時、男が王に着くと流行り病で、男の王だけが、死ぬようになった。以降から、この【フラシェカ】には女が王についている。そして、女王の統治が始まると、国は何故か発展し続けた。それ以降この国は『女尊男卑』の風潮が目立ってきた。おかしい。おかしいんだよ! 流行り病が起きる次期も、国が発展するタイミングも、何もかも! だから、このおかしな間違った国は私が修正するんだよ! 私が新たな王になるのだ! 私が、私こそが真の王なのだよ!」
何を言ってるのか、さっぱり分からない。言っていることが支離滅裂だし、話に筋が通っていない。目の瞳孔が開いている。薬でも決められたか。
「……哀れ」
「さあ、私が最強の王であることを認めさせるのだ! 三剣士よ、我と戦え!」
そう言うと、リシュリューはマジックバックから、骨で出来たような大剣を取り出す。
「俺が行く。さっきは三人に任せっぱなしだったから」
俺がそう言い、前に出た。
「お前が相手か名を名乗れ」
リシュリューの態度にため息を吐き、俺は名乗る。
「Aランク冒険者イツカだ」
「【ガレリア】領主リシュリュー伯爵だ」
「「勝負!」」
俺は居合い抜きで、リシュリューを狙うが、リシュリューに刃は届かなかった。なぜならリシュリューと剣が融合し、リシュリューは龍人のようになって空を飛んでいたからだ。皮膚は黒い鱗で覆われ、背中に翼と尻尾を持った、まさしく化け物と言った様相だった。
「クハハハハハ! これこそ【竜機】の力! 龍人種でなくても半竜化出来る! これにより、私の身体能力は限界まで高まっている! お前に勝ち目はない!」
そう言って、リシュリューは俺に切りかかってくる。
確かにちょっと分が悪そうだ。
「クハハハ。手も足も出まい!」
だが、所詮は素人。
一瞬、俺は抜刀で居合いをした。
次の瞬間、リシュリューの翼は綺麗に根元から斬れていた。
「な、ん、だ、と」
リシュリューは翼を無くし、地面に転がり落ち、【狂竜臓】の方に転がる。
「半竜化はその早すぎる速度を、翼に溜めた魔力で、行っている。その魔力器官を失った今のお前じゃ、勝ち目は無いよ」
リシュリューの半竜化が解けていく。
「ふ、この程度で倒せたと思うな。見よ!」
リシュリューがそう言うと、後ろ壁が崩れ、その奥に魔力の鎖に拘束された白いドラゴンがいた。
「何を!」
「奥の手とは最後までとっておく物だよ!」
そう言って、リシュリューは【狂竜臓】に【竜機】と何かの珠を装着する。
「私が、わたしが、ワタシが、王に、おうに、オウにぃぃぃぃぃぃぃぃいっぃぃぃぃぃぃぃぃltskrjyvrsmt;絵rmtj費jh;ヴィjrtv自治jh位tんヴぃmヴィtmヴィおtヴィと炉vmhんてぃ地h地hvんどいt路員ヴィおtrんヴぃtヴィrhんrとkvprtおryyyyyyyyyyyyyyyっっっっっ!!」
すると、リシュリューは【狂竜臓】から出た黒い触手に取り込まれる。そして、その触手は白いドラゴンに伸び、あっという間に飲み込んだ。
触手が繭のようになると、しばらくドクンドクンと脈を打ち、次の瞬間。黒いおぞましいドラゴンが、繭を突き破り、現れる。
『我こそが王。王なのだ。ふむ、狂竜の王なのだ。狂竜王とでも名乗るとするか』
黒きドラゴンは、そんな事を言う。
そんな事を言っていると、三剣士は攻撃を仕掛けていた。
「【ガイアブレイク】!」
「……【アブソリュートエンド】」
「【ボルケーノ】!」
三人の同時攻撃が直撃する! だが、黒きドラゴンには、傷一つ、ついていなかった。
「まじかよ」
「……ウソ」
「くっ!」
三人が怯んでる。マズい。
「ここは、俺が食い止めるから、三人は退いてください!」
『ふむ。無謀なハエが一匹か』
黒きドラゴンは俺を見てそう言う。
「ハエか、どうか、試してみろよ。お前に本気の身体能力強化を見せてやる! 限界を超えろ! 【ブレイクスピリット】!」
【ブレイクスピリット】。人間の限界を遥かに超えた。超強化魔法。普通の人間の約一万倍の力が出せる。身体強化魔法の奥義とも言える。
「おら!」
『ふん!』
俺は魔力を纏った拳で殴り、向こうと衝突する。
結果は相打ちで二人とも弾き飛ばされる。
「ち、マジかよ」
『中々やるな』
その後も、何度も殴りあう。そして途中、弾き飛ばせれた時、三剣士が前にいた。
「楽しそうだね」
「楽しくない」
アテセの言葉に抗議する俺。だが、その言葉に意味は無かった。
「だって、顔笑ってるよ?」
「ありゃりゃ。そら、すいません」
今まで、本気で戦える相手が、居なかっただけあって、楽しいのは、違いなかった。楽しんでる事は一番よく分かっていた。
「ねぇ。イツカ君。君、セルタさんの弟子かな?」
「!」
それを聞いて動揺する。俺はばれていたのか? 俺がダルタニャンである事が。
「君の右手にある、その【魔刻】を私達は感じ取れちゃうの」
【魔刻】は魔封石の代わりに、術式を人間に刻むものだ。それを刻むと、無属性以外の属性は使えなくなるが、回数制限なく、その魔法が使える。俺はルタの魔法を【魔刻】で、受け継いだのだ。
「だから、君がダルタニャンだって気付いてた。今、あのドラゴンを倒さないと、この国に、いやこの世界に渾沌をもたらされる。だから、私達を使って」
楽しかったが、そう言われたら仕方ない。
「分かった。呼び起こせ【トリニティ】」
俺はそう唱え、三人に手を伸ばす。
魔刻【トリニティ】は、人を武器に変える魔法だ。そして、武器に変えた人の魔法を自由使える。そして相性がいいと複数人で融合し、武器になる事も出来る。
三剣士がその最たる例だ。しかも、三剣士が融合して出来た武器は使用者に一番あった武器になる。
俺の場合だと、刀だ。俺は融合し変身した白い刀を手に取る。
そして黒きドラゴンの前に立つ。
『なんだ。その剣は?』
「切り札だ」
俺がそう言うと、黒きドラゴンは満足そうにする。
『ならば、その剣ごと、貴様を屠ってくれる!』
「やってみろ!」
俺は刀を抜き放ち、走り出す。
黒きドラドンは口に魔力を溜める。
俺は魔力を注ぎ込み、魔法発動させる。
黒きドラゴンも口からブレスを吐く。
「切り開け! 【三剣士の剣閃】!」
『滅べ! 【黒き狂竜王の咆哮】!』
二つは衝突し、結果的に闇の咆哮は、光の剣閃に飲み込まれた。
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