六の剣【三剣士推参!】
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俺達は、ようやく【ダレン】に向かう事になった。今まで俺が、移動してした手段を話そうと思う。
簡単に言うとバイクだ。難しく言うと、二輪駆動魔導機【グレン】である。【魔導機】とは簡単にいうと魔封石が道具になっただけのものである。魔封石のように、物その物に魔法式が組み込んである。そのため魔力を流すだけで、その【魔導機】は稼動する。それをバイクにしたのが、俺の【グレン】というわけだ。しかしバイクでは、三人そろって移動できない。というわけで俺は魔導機【マジックバック】からサイドカーを出し、【グレン】に連結させた。そして、アルマをサイドカーに、メグを後ろに乗せ、俺達は【ダレン】に向かった。
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「おい、あとどれくらいで、着くんだ? 尻がいてぇ」
メグが後ろで愚痴を言う。
「二時間くらいだ。それから、メグ、お前、女なんだから、汚い言葉使うなよ」
そんなメグの言葉を聞き、俺はメグを注意する。
「うるせぇ、ほっとけ」
「……そんなにツライなら、……私と変わればいい。……こっちはかなりいい乗り心地。……どうする?」
逆にアルマは何故か仕切りに、俺の後ろに乗ろうとする。
「なんか、ヤダ」
「……そう、残念」
メグの言葉を聞いて、落ち込むアルマ。
ここ、はっきり言って乗り心地悪いけど、そんなに乗りたい?
「ジャンケンで決まったから、文句言わないでアルマ先生」
そう言うメグに、アルマは手を開いて、恨めしげにその手を睨んだ。
「……あそこで、チョキを出していれば……」
そんな二人の様子を見て、空笑いしか出なかった。
突然、メグが何かに気付いた。
「イツカ、あれ、何?」
メグが指を指した方にいたのは、黒い鱗をしたドラゴンだった。しかもこっちに向かって来ている。
「狂竜だ! マズい! 二人とも速度を上げる! しっかり捕まってくれ!」
アクセルのスロットを全開にする。
「うわぁ!」
メグが驚きの声を上げる。
狂竜。それは、正気を失い、狂ったドラゴン。
ドラゴンは元々、大人しい気性で、よっぽどの事が無い限り、襲ってくる事はない。ただ黒い鱗の狂竜は、激しい気性で、人間を襲う。俺はしばらく【狂竜】を狩りまくっていた。それゆえに、狂竜の凶暴性は良く分かっている。
とにかく、二人がいては、戦えない。逃げの一手である。
「グォガァァァァァァァァァァァ!」
狂竜が俺達を追ってくる。
すると、目の前を影が二つほど通り過ぎた。
「ちぇすとぉぉぉぉぉぉぉっっっっっ!」
そんな怒鳴り声が聞こえ、直後、爆音が聞こえる。
思わず、バイクを止め、反転する。
そこにあった光景は、ドラゴンの体が地面にめり込んでいるという不思議な光景だった。すると、その二つの影の片方が何かを言う。
「アラミス。翼を拘束して」
それにアルマが反応し、サイドカーのシートから飛び上がる。
「……合点」
アルマは、首から下げていたロザリオの、下の部分を切り離し唱える。
「……伸びろ。【ニョイキンコソウ】」
するとその切り離した部分が、見る見るうちに大きく長く伸び、槍になる。
「……氷よ、形を成せ【アイスフォーク】」
今度は魔法だ。魔法によって、槍の穂先に氷が伸び、穂先が二つに別れ、柄は伸び、巨大な刺又のようになる。
「……えい」
それを狂竜に向かって軽々と、投げつけた。巨大な刺又は、狂竜の背中を通して、両方の翼に深々と突き刺さった。
「グギャァァァァァァァァァッッッッッ!」
狂竜は悲鳴を上げ、立ち上がろうとするが、顔を上げるともう一人が、剣を構え、背中に炎を背負っていた。
「炎よ、飲み干せ【ボルクイーター】」
その呪文の後、炎は膨れ上がり、狂竜を飲み込み、跡形も無く消し去った。
「凄い」
メグが素直に感想を言うと、二人の影にアルマが並ぶ。
「我らは国のために」
赤髪の影、アテセが、剣を前に掲げる。
「我らは弱者にために」
アルマが元の大きさに戻し、槍を前に掲げる。
「我らは一人の民のために」
そして緑髪の影、ポリーが前に出て、大剣を前に掲げる。
「「「我ら、王国に忠誠を誓いし剣士! 三剣士推参!」」」
それぞれがキメポーズを決めると、三人の後ろで配色の違う爆発が起きる。
「「は?」」
そして俺とメグは図らずとも、三剣士と出会った。
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