表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/9

四の剣【剣を刀に】

△∮▽



 次の日俺は【ヴェル】を出発し、駐在する町【ダレン】に向かった。そして中継する村【ステラ】についた。

 宿を取った後、【ダーク】を直すため鍛冶屋に向かった。

 鍛冶屋の名前は【ブレイク】。

 この名前、駄目だろと思いながら、俺はその鍛冶屋に入った。


「すいませーん」


「あ?」


 そこには、まるで大樹のように生気溢れる茶色い短髪で、野獣の様に鋭い金色の瞳をした美女が、座っていた。


「……いらっしゃい」


 機嫌が悪そうだった。俺は厄介そうだと思いながら声をかけた。


「剣の修繕をお願いしたいんですが?」


 俺がそういうと、チッと美女が舌打ちをした。


「ちょっと待ってろ」


 そう言って奥へ引っ込んでく。

 俺はやる事が無くなったので飾っている武器を見た。するとある一角を見て俺は奇声を上げてしまった。


「あああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!」


 それを聞いて美女が怒鳴り散らし戻ってくる。


「うるせぇぇぇぇぞ!」


 怒鳴られて、正気に返った俺は、まず謝罪した。


「ああ! すいません!」


「ったく! なにを騒いでんだか」


 独り言のように呟いたのを、聞いて俺は食って掛かる。


「騒ぎもします!」


「なんでだ! うるせぇ!」


 それに美女が、聞き返す。

「だって! 刀が! 太刀が! 小太刀が! あるんですよ! そら騒ぎもします!」


 俺がそう騒ぐと、美女は目を丸くした。


「……あんた、刀が分かるのか?」


 そう言われ俺は、正気に戻る。


「えっと……まあ」


 俺の反応を見て、美女は何かを察したのか。ため息を吐く。


「我らは一人の民のためにか……あんた名前と職業は?」


「い、イツカ。冒険者です」


 唐突な質問に思わず、真面目に答えてしまう。


「ランクは?」


「えっと、俺はまだまだで」


 誤魔化すようにそう言うと、美女は眉を潜める。


「正直にいえ。それから敬語やめろ」


「……ランクは一応Aだ」


「合格だ。それから言い忘れてた。謙遜もするな」


「え……」


 この世界で始めて、謙遜を聞いたため、俺は驚く。


「まず、自己紹介をしてやろう。アタシはポリー=ウィンラ。それから、まずあんたの事情は、聞かないで置いてやる。とりあえず、修繕して欲しいって、言ってた武器、見せてみな」


 俺は言われるがままに、片手剣【ダーク】を見せる。【ダーク】を見たポリツは、笑ってとんでもない事を言う。


「あんた、コイツを刀にしたいか?」


 その言葉を聞き、俺は驚く。


「そんな事が出来るのか?」


 そう聞くと、ポリーは笑って言う。


「当たり前だ! まあ、銘は変わっちまうがな!」


「なら、ぜひ頼む。欲しい材料があったら言ってくれ。素材はマジックバックに腐るほど入ってるから」


 俺の言葉を聞き、会った時とは打って変わり、ポリーの機嫌は非常によくなっていた。


「おう、まかせな! 今日は賭けに負けてイライラしてたが、刀の良さが分かる奴に会うわ。いい武器を改良出来るわ。最高の日だな!」


 ガハハハハとポリーはそう言って、豪快に笑った。



△∮▽



 二日後、漆黒の片手剣【ダーク】は、漆黒の刀【夜未斬(やみぎり)】へと生まれ変わった。


「振ってみろ」


 ポリツにそう言われ、【夜未斬】を振ってみる。


「ふっ!」


 手に馴染んでいた。俺は歓喜に震えていた。

 刀だ。俺の分身がここにある。

 俺の反応見て満足したのか、ポリーは言った。


「今回、打ち直し代はいらねぇ。変わりにアタシと勝負しねぇか?」


「よろこんで。それから、ありがとうウィンラさん」


 俺は微笑んで頷いた。


「ふん。ポリーでいい!」



△∮▽



「魔法は無し、純粋な剣術で勝負だ。一撃でも有効打を与えた方が勝ちでいいな?」


 ポリーは大剣を担ぎ、そうルールを提案してくる。


「いいですよ。俺に関係は余りありませんが」


 俺は【夜未斬】を腰に帯刀しながら了承する。


「よし。じゃあ、このコインを投げるから、地面に落ちたら決闘開始だ」


 俺がそれに頷くと、ポリーがコインを投げ、大剣を構える。

 カンッと音が鳴り、コインが落ちる。

 戦いが始まった。まず、笑みを浮かべ、ポリーが切りかかってくる。俺はそれを間一髪のところで避ける。ポリーの剣が叩きつけられ、地面が抉られる。


「おお、すげぇ威力」


「関心してる場合じゃないよ!」


 ポリーは返す太刀で、横薙ぎしてくる。それも体を逸らして避ける。そこで俺は刀を抜刀し、ポリーに切りかかる。しかしそれをポリーは大剣を振った遠心力で、受け止めた。

 っ! 予想より速いっ!

 俺は弾かれそうになる【夜未斬】を振るい、受け流す。


「ほう……」


 ポリーは俺の反応に関心した様で、顎に手を当てる。バックステップをし、俺は距離を取った。


「やるじゃないか」


「まあ、これでも、ランクAなので」


 【夜未斬】を右手だけで持ち、トントンと足のつま先でならす。


「じゃあ、第二ラウンドを……ちょっと待て」


 戦いを再開しようとしたとき、ポリツは何かに気付き、戦いを中断した。

 するとそこにワシが飛んでくる。


「ストライク! 元気だったか?」


「クルゥッ♪」


 ポリーの腕に降りたワシの足には、紙が巻きついていた。

 それを読み表情を変えるポリー。


「悪いな。決闘はお預けだ。決着は今度必ずつけようぜ!」


 そういうとポリーは旅支度をして、店を閉め、行ってしまった。ため息を吐き、宿に戻った。【夜未斬】の使い心地は最高だったが、刀を使った最初の戦いだったのに水を差されて、肩を落とした。まあ、刀を腰に帯刀しているのが落ち着くから、いいことにしよう。



△∮▽



『どうやら、私の【計画】を察された様です。【三剣士】が動いています』


「そうですか……」


 銀髪の美青年、バッキンガムはそれを聞き、眉を潜める。


(【フラシェカ】に伝わる伝説が俺の邪魔か――――。なんのつもりだろう? 国家の危機だから? それとも……。なんにしても面白そうだな。これは踏んだほうが面白うな虎の尾だな。なら!)


 バッキンガムはニヤリと不適な笑みを浮かべ、囁く悪魔になる。


「なら、最新の魔道機の設計図を贈りましょう」


『おお!』


「申し訳ありませんね――。その【魔道機】にはドラゴンの素材が必要なんです。こちらには足りていない物資ですから、そちらで用意して頂くしかないんですよ――」


『いや、それは仕方ないことです。では、よろしくお願いします』


「はい。では、魔道機【龍合装置(サラマンドラ)】の設計図贈らせて頂きます。では、我らは蛇に従う、故に渾沌を望む者なり」


 そう言ってバッキンガムは通信を切った。


「これは、楽しくなってきた」


 これから起こる事を想像し、バッキンガムのニヤケ顔は止まらず、とうとう笑い出してしまう。


「あははははははははっっっっっ!! なんて素晴らしいんだろう! やっぱり狂ってこその世界だ! 俺は狂った人間も! 狂った物事も! 狂った世界も! 狂った物を全て愛している!」


 バッキンガムはその後も月に向かってその笑い声を響かせていた。



△∮▽


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ