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三の剣【イツカの過去とギルドからの依頼と貴族の暗躍】

△∮▽



 俺、桐島壱架(きりしまいつか)は異世界人だ。

 かつて地球で剣の修行をしていた俺は、妹が病で死んだ事で気付いた。

 自らを鍛える事にどんな意味があるのかと。

 元々、妹を守るために強くなるために鍛えていた俺だが、妹を失ったことで、自らが強くなる意味を考えていた。

 この平和な日本で大した脅威もなく、平穏な世界で敵もいない。そこで強くなった所で何の役もたたない。せいぜい世界の脅威に認定されるのがいいところだ。

 それどころか、力じゃ妹も救えない。

 自らを鍛える理由を突然失った俺は、修行場である山を降りた。

 そして山を降りたその日に俺は、大地震に巻き込まれ、そこで瓦礫の中から、三人の外人の少女を助けた。しかし変わりに俺は、瓦礫に巻き込まれ死んだ。


 気がつけば俺は、草原で倒れていた。

 傷だらけだった俺は、ルタという老人に助けられた。

 ルタに魔法を見せられた俺は、異世界に来た事を悟った。

 俺はルタに弟子入りし、魔法を一応、覚えた。

修行を終えた頃、ルタは……セルタ=ダルタニアは死んだ。ルタを看取り、魂ともいえる魔法と漆黒の片手剣【ダーク】を受け継ぎ、俺は冒険者になった。


 そして俺はAランク冒険者【悪鬼羅刹】のイツカになった。



△∮▽



「で、【狂竜討伐】を終えて帰ってきたら、【ブーなんとか団】とかいう頭領がモヒカンの謎集団に襲われ、それを撃退、捕縛したと……。流石の【悪鬼羅刹】様ですな――――」


 そんな事を言う茶髪の【ヴェル】ギルド支部受付嬢。この子の名前はライア。


「お前【ブーマ団】って言ってやれよ。それに謎集団ではあったが、あいつら一応盗賊団だからな。それから俺をトラブルメーカーみたいにいうな」


 ため息をついた俺を見てライアはニヤニヤ笑う。


「そんな事言っても実際トラブルメーカーなんだよ――――」


 はぁ。こいつの相手せず、疲れたし早く帰って寝よう。それがいい。

 そう思いながらカウンターに右肘を乗せ、右手で額を押さえる。


「なんでもいいから。さっさと達成報告と報酬を片付けてくれ」


「へいへい。つまんないなぁ――。あ、そういえば、ギルマスがイツカちゃん呼んでたよ。これ終わったら行ってね――」


 ケタケタ笑うライアを見て、俺はまた一つため息を吐く。

 また指名依頼かな、忙しすぎて泣きそうだ。

 ついつい『ベットはお預けか』と、独り言を呟いてしまった。



△∮▽



「【龍巣窟】の調査ですか?」


「そうだ。詳しくは狂化の原因追及、及び可能ならその原因の排除または対応、対策に当たって欲しい」


 俺の目の前には煙管(きせる)を加えたチャイナ服の脚線美が美しい黒髪長髪の美女が座っていた。【ヴェル】ギルド支部の支部長クーリン=スカサさんだ。


「つまり。指名依頼ですよね?」


「そうだな。お前も不幸だな」


 クーリンさんは煙管を吸い、フッと煙を吐く。


「スカサさん、拒否権なんかは……」


「あるわけないだろ? 私を誰だと思っている?」


 それを聞いて『あ、やっぱり』と思ってしまう。


「ですよね――――」


「ついでに言うなら、今回のは絶対無理だ。依頼者は私よりエライからな」


 そう言って一つの封筒を出した。そこには凄く見覚えのある焼印がしてあった。


「よりにもよって王族がなんで俺の事知ってんすか」


 その焼印は王家の紋章だった。つまり、俺に指名依頼をした者は、王家の人間だと言う事だ。


「さてな。悪名高き【悪鬼羅刹】様だ。王家も知っててもおかしくない」


 しれっとクーリンさんはそんな事を言う。


「はぁ。もう寝たい」


「それは残念だ。お前は私が寝かさん」


「そういう事はもっと別のタイミングに聞きたいです」


「減らず口が聞けるなら行けるな。よし」


「もうそれでいいです」


「そうだ。いい忘れていた。イツカ、この依頼が終わればお前はもうランクSだ。ランクSになれば指名依頼も大小あるが、断る事が出来るようになるが、ランクアップに申請するか?」


 クーリンさんは俺の実績表を見ながらそんな事を言う。


「もうそんなですか。とりあえず、申請でお願いします」


 机に突っ伏しながら、クーリンさんの提案に乗る。


「しかしお前の実績は脅威的だな。抱いてやってもいいくらいだ」


 冗談を言うクーリンさんに、俺は冷静に返事する。


「スカサさんを抱くと、後が怖いので結構です」


「よく分かってるじゃないか。出発は明日だ。さっさと私の部屋から出て行け」


 そう言って笑いながら、クーリンさんは煙管で、俺の頭を叩いた。


「うぃっす」


 生返事をし、立ち上がる俺を見たクーリンさんは、頭を乱暴にガシガシとかいて言った。


「まあ、正しい選択肢を出来たお前には特別、私をクーリンと呼ぶことを許可してやろう」


「ありがとうございます。クーリンさん」


 俺は笑ってそう言う。


「無事に帰ってこい」


「はい」


 そんなクーリンさんの言葉を、背に俺は部屋を出た。



△∮▽



『お、繋がった。リシュリューさん。調子はどうですか?』


 薄暗い部屋で【魔石】が青く輝き、調子のいい声が聞こえて来る。それを持ったモノクルをした男、リシュリューが、その魔石を握りつぶしそうな勢いで握り締める。

 しかしすぐに冷静さを取り戻し、力を緩める。


「ええ。バッキンガム公爵。こちらは息災です。あなたの技術提供のおかげで【計画】の方も【()()()】の稼動も順調です」


『そうですか、それはよかった。リシュリューさんの力になったなら、私も嬉しいですよ』

 その従順すぎる対応に違和感を覚えるが、彼らの技術支援は無駄に出来ない。


(私がこの国をあの忌々しい女王から奪うまで、技術力を吸い上げてやる)


「もうすぐ、【竜機(タツノオトシゴ)】も完成します。これからも力を貸してください」


『ええ。任せて下さい。では。我らは蛇に従う、故に渾沌を望む者なり』


 魔石から声が消え、光が消える。


「相変わらず薄気味悪い輩だ」


 リシュリューは協力者の顔を思い浮かべ、殴りたい衝動に駆られた。



△∮▽


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