一の剣【三剣士の伝説】
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この国【フラシェカ】には伝説があった。代々、女王が統治するこの国には、【三剣士】どこかで聞いた事のあるそれが国を護り、王国の民は全員、その伝説を知っていた。
豪腕を持ち、賭け事が好きな【大地】のポルトス。
聖職者で、冷静にして冷酷な【氷結】のアラミス
大胆不敵にして、理知的な【火炎】のアトス。
彼らは、王国が危機に瀕した時に、必ず現れると言われる。
はるか昔、王国に現れた巨人を【三剣士】が屠ったとも言われている。
そして伝説がもう一つ。その三人と共に現れる若き剣士が一人現れるそうだ。もっとも、有名なのは、三剣士の方であって、その若き剣士では無いのだが……。
しかし変わった伝承も残っている。その若き剣士が三剣士を操るというものだ。
そして王国の民は、今でもその伝説を信じているらしい。
彼らがいるにせよ、いないにせよ、我らは決して力に屈しない。
我らは国のために、
我らは弱者にために、
我らは一人の民のために。
【三剣士の伝説】第一章第一節より、著プランシェ。
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「これが【三剣士】……。なんだ、これ? 【三銃士】のパクリか? 大体そこは『一人はみんなのために、みんなは一人のために』だろうが」
俺はそんな事をいい、馬車の中で寝そべりながら、【三剣士の伝説】と書かれた古びた本を読んでいた。
「お、冒険者の君。君は三剣士の伝説も知らないのかい?」
すると共に馬車に乗っていた女性がそんな事を聞いてくる。
その女性は使い古されたフード付きの赤いローブを纏い、髪は燃える炎の様に赤かった。美しく強いバラの様に紅い瞳を持った美女だった。
「ああ。あいにく、【フラシェカ】に来たのは最近で。田舎の出身なんですよ」
「へぇ――。そうなの。しかし、そんな古い本を持ってるとは、よっぽど好きなのかと思っちゃったよ」
ニヤニヤしながら赤ローブの美女はそんなことをいう。
「いや、常識に疎いから読んでだけで……。暇だし、勉強でもしてようと思って。ところで俺が冒険者なのは見たらわかるでしょうけど、あなたは何者ですか?」
俺がそう聞くと美女は自分を指さして言う。
「私? 私はアテセ=エリシャ。商人をしているわ。今回は三つほど町に商品の発注をしに行ってたの。今はその帰りついでにある人の道案内してるってわけ。あなたは?」
アテセさんがそう話す。確かに隣にはボロボロのローブを纏った子が一人いた。体格的に俺と同い年か、それ以下ってところだ。
「俺? 俺はイツカ。見ての通りのしがない冒険者です。今は遠征依頼の帰るついでの護衛依頼の仕事中です」
俺は聞かれたこと肩を竦めて答えた。
「ふーん。ファミリーネームは無いの?」
「ああ……。まあ、色々ありまして」
俺はそう答え、本を閉じて体を起こす。ある気配に気づいたからだ。黒のコートを羽織り、片手剣のホルダーを装着する。
「どうしたの?」
「いや、仕事が来たから、働こうと思って。働かないと報酬貰えませんから」
俺がそう言って馬車から降りると馬車は唐突に止まる。
そこには大勢の盗賊が馬車の進路を塞いでいた。
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