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もしも、俺がハリウッドの映画スターなら、あらゆるCG技術を駆使してここからジャンプ、あっさり着地、ヒロインとロマンス、渋い中年の悪役俳優が戦慄き、映画のスクリーンはエンドロール……してみせるのだが現実はそんなには甘くはない。
学生時代のハンマー投げを思いだす。
「俺を信じてくれ!」
嫌な予感がしたのだろう……ナナコ女史は忘れ物をしたことを思いだしたようにあわてふためき、
俺の腕のなかでもがき始めるが、俺は有無をいわさない。
勢いに任せて回転を開始する。
「キャアァァァァァ嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼嗚呼あああああ!」
目がまわる……
一気に投げ捨てた。
ナナコ女史の御身が空中で放物線を描く。
「愚鵜うおおおぉぉぉぉぉ!」どうか届いてくれ!
崖の先から落下しそうになるナナコ女史の身体をレオギがしっかりと掴む。
「チョーさん、早く!」
「勿論!」
俺はヒーローになるつもりだった。
噛ませ犬なんてまっぴらゴメンだ。
むこうに行けばナナコ女史からの熱い抱擁が待ち構えている。
そんなことを考えると、全身の血が熱く沸き立った。景色が変な風に色めいている──そう、俺はすっかりのぼせてしまっていたのだ。
地球の重力場はあらゆる物体を引きつけて離さない。
俺は愛の力で難なくそんなもの飛び越えられると信じきっていた。
漫画じゃないんだぜ。完全に論理的適合性を欠いている。




