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固まった。硬直していた。ケツの穴からあそこまで。唇と唇が重ねあわさっている。
俺はなんとか、震える手を背中側にまわした。
ブラジャーをしていない。背中の硬さと彼女の震えがダイレクトに伝わってくる。やっとのことで腰に手を置いた。
それはガキみたいに甘ったるいキス。貪った。
たまらず、俺が舌を入れると、彼女は睨みつけ、俺の舌を彼女の歯で弾いた。
唾液を糸が引くほど交換した後に、唇を離しナナコ女史がいった。
「東京で待ってますね、これ受け取ってください」
それはお守りとメモだった。便箋上のメモ用紙には彼女の部屋の住所と電話番号──
勿論、俺は行かない。この旅が終ってしまえば、彼女の元から、姿を消す予定だった。
「わかった、かならず行くよ」
嘘だ。それは悲しい嘘。
もう、愛しのナナコ女史に会うことはできない。彼女の身体に触れることさえできないだろう。目の前でバスのドアが閉まった。嗚呼……
彼女は笑顔で一番奥の座席に進む。無意識にその映像を追っていた。窓を開ける。俺に手を振った。俺も繕った笑顔で手を振る。まるで、カップルみたいだ。
バスは瞬く間に走り去っていった。彼女の唇の甘さが、まだ俺の口のなかで踊っていた。突然に背面からゴリラ野郎の尖った声──
「おい、行くのか行かないのかどっちなんだ?」まくし立てる。「行くなら、着替えてからにしてくれ。そんな格好で俺様のバイクに跨るんじゃねえぞ!」
前が濡れていた。軽い失禁。




