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「ご免、やっぱり、東京には行けない」
「え、えええ、えええええ」ナナコ女史がいった。「それじゃあ、私も残ります。運転手さん、ご免なさいです」
「駄目だ、君はこのバスに乗るんだ」俺はいった。「このバスに乗って、東京に戻ってくれ」
「えええええ、あんまりですよお、チョーさん」
「すまん、俺の為なんだ。俺は君を失いたくないんだ」
「えええええ、あの、この、その、つまり、普段だったらもの凄く嬉しいお言葉なんですけども……」
挙動不審のナナコ女史が顔を赤らめながらその感情を爆発させた。
「いや、あの、その、これって、愛するふたりが離れ離れ、なんやかんやでしばらく遠距離恋愛、結果、トレンディドラマが古今東西、今更、どんだけ~ご破綻の王道パターンなのではないないないのですかねかねえ?」
「わかってくれ、俺は君が好きだ」
「ぬわわわわわーん」ナナコ女史がいった。「抱いて、抱いて、今すぐ抱いてくれなきゃ、私スネちゃいますからね」
「それはできない!」俺はいった。「君のことを心から愛しているから!」
「もう理由になってねーよ!」ナナコ女史がいった。「お預け食らわしてんじゃねえよ!」
「東京で待っててくれ。俺は君をひとりになんかしない!」
「言葉だけじゃたりません!」
「!」




