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スマホで検索した情報によると、東京の都市機能は10の強制アップグレードの一件で、完全に麻痺してしまっているとのこと。スワイプして記事を閉じる
。
画面をスリープさせて、内ポケットに仕舞った。
茶屋のwifiが安全である保証はどこにもなかったが、正直、他人事のように思えて、その時の俺にはどうでもいいことのように思えた。
目の前にはたっぷりの練乳。餡蜜〔あんみつ〕に食らいつくナナコ女史に俺はいった。
「実は東京に戻ろうと思ってる」
「へ?」てな顔。鳩が豆鉄砲でなんとか。「今まで頑張ってきたのにチョーさんはそれでいいんですか?」
「このまま逃げまわっても無意味なように思えるんだ……」口のなかが胃酸の所為でやけに酸っぱかった。「どうせ逃げきれないなら、さっさと10にアップグレードしょうと思うんだ。それで警察に捕まって……刑期を務めた方が断然能率が良い。俺はテロリストでもなんでもないんだから」
「納得できません、私たち悪いことなんてなんにもやってないのに」
「世のなかには、不条理なことは沢山あるよ。君もそのことは覚えておきなさい」
「本当にいいんですか、チョーさん!」
言葉に詰まった。だけど、俺が今一番恐れていることは7なんかのことよりも、ナナコ女史がこの世界から永遠に失われてしまうことの方なんだ。
「嗚呼」俺はいった。「あと数分でバスが来る。駅に出て、そこから東京付近まで電車を乗り継ぐ。残りは歩くぞ。ナナちゃんはさっさとその餡蜜を食べきってくれ」
「ガッテン!」と口に氷を運ぶが、
ナナコ女史は眉間を抑える。
よっぽど、キーンとしちゃったんだね。




