3-11
だだっ広い、和風建築の屋敷だった。渡り廊下を進み、俺たちは角の部屋に通された。
畳。窓には障子。
三方を引き戸で仕切られたこの部屋。出された茶菓子とお茶。毒でも入っていそうな気がして、俺もナナコ女史も手をつけることはなかった。
勢いよく戸が横に引かれる。小柄な身の丈の老人。数名の従者を引き連れ、奥の上座にドスンと腰を降ろす。老人は肘掛けに手を置いた。名前が肛門様って……意味がわからない。
俺たちは下座。ビジネスマナー的にはあまりよろしくない構図。
こいつが偉いさんなのか?──老人がいった。
「はるばる、よう来られた客人の方々!」ゴリラ野郎に目をむける。「お猿!」
モンチッチーと呼ばれていたゴリラ野郎はどうやらこの場所ではお猿と呼ばれているようで……
ゴリラ野郎は俺からラップトップPCを奪い取ると、老人にうやうやしく献上する。どうも不憫である。
「なるほど、なかなか良いデザインである!」女の尻でも撫でまわすように、隅から隅までめで始めた。「お猿、これは何年モノなのだ?」
「は、調べましたところ、購入したのは三ヶ月ほど前でしたが、数日前にメーカー側から最新の夏モデルが発売された為にすでにオワコン。型落ちとなりました7搭載のノートPCにございます」
「なんと、ビンテージではなく型落ちとな!」
よくそこまで調べ……俺の個人情報、流出しまくりじゃないか……
「うむ、型落ちにしては美品じゃのう」
「はは、持ち主があまりPCに詳しくない人物なのだと思われます」
放っておいてくれ……奴は触りまくる。画面にも触れる。電源の落とされた俺のラップトップは奴の指紋ベッタリだ。ちなみにタッチパネル仕様じゃあない。




