3-8
俺たちは奴の隠れ家を目指し歩く。忍の里。突然、ナナコ女史がいった。
「あの、チョーさん。すいません」
モジモジしながら俺の肩に触れる。
「この上着、すごく汗臭いんですよ。なんていうか……もう、脱いじゃってもいいですかね?」
振り返り俺はいう。「駄目だ。脱がないでくれ。これは上司としての俺の命令だ!」
昨晩の出来事が俺の脳裏に蘇る──あれはナナコ女史の勝負下着だったのだろうか?──際どい布地のブラジャーとショーツ。
あんな格好のナナコ女史を間近でもう一度見たら、確実に俺の理性はぶっ飛んでしまう。先を急ごう。
朝霧が薄っすらと、俺たちの行く先にかかっている。山脈──裾野が顔を出し、雲がその中腹から滝のように降りそそいでいた。たどたどしい表情のナナコ女史に俺はいった。
「本当のことをいうよ。俺には娘がいてね。君はうちの娘より年下なんだ。だから無理なんだ……わかってくれるよね……」
「その方って、離婚した人とのお子さんですか?」
「離婚したのとは別……若気の至りだよ……認知はしたけど、籍は入れてないんだ……」
離婚で資産の半分をぶん取られ、大学院ご卒業後、海外留学などと洒落込む娘に多額の金銭をなぜだか要求されてしまっている今の俺には、うら若き乙女であるナナコ女史との逢瀬など……堪能している暇も身を重ねちゃう余裕すらもない……というのが良識的なこの俺の建前なのであった。




