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「え、チョーさん……なにいってるの?!」
「君が大好きだったパパのことを知ってる。君がパパのことを殺したことも俺は知ってる」
静寂──俺も彼女もなにもいわない。
俺はナナコ女史のことが大好きだ。好き過ぎて現在のこの状況に陥るまでに、彼女に関するあらゆる種類の個人情報を収集し続けてしまった。
当然の如く、彼女がうちに入社した時、身辺調査も欠かさなかった。興信所にご依頼。探偵もどきが結果報告。
おかげで、今の俺は彼女のことならなんでも知っている。もはや、端から見たなら立派なストーカー行為だ。気まずい雰囲気のなか俺は、彼女に言葉を紡いでいった。
「今の日本じゃ珍しくもなんともない話だ。
保守論者の君のパパはイデオロギーのない国粋主義とか、頓珍漢な規制緩和とか、八方塞がりな家族主義とか、すかすかな愛国心とか、声高にそんなのを叫ぶ一方で、家庭においては君と、君のママのことを虐待し続けた。
初めての相手はパパだったのか?」
熱を帯びた彼女の瞳が、次第に冷めた軽蔑の視線に変わっていった。




