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滑らかな放物線を描きながら、ホルターネックのモノキニ水着が水面にむかって吸い込まれていった。
やがて底面にたどり着いた彼女の身体は捻りあげられ、夏空みたいに澄みきった水色のプールから浮きあがってくる。
ゴーグルには度が入っていて彼女の視力を補っているのだろう。
単刀直入にいうと──いい眺めだ。
水の表面から大きく息を吸い込んだ。笑顔が浮かんでる。
俺にむかって微笑んでいるのか?──いや、それは完全に錯覚だろう。
ステンレス製の梯子を伝って彼女の身体が水辺から抜けていく。
若い肌が水を弾いた。曲線の窪みから透き通った雫が滴っている。
大胆に別れた白と黒の胸まわり。金の輪っかが悩ましげに両胸を繋いでいた。
プールからあがると、俺に近寄り、ナナコ女史は恥ずかしげに胸元にパレオを巻いた。
俺の隣に腰を降ろす。
まさか、自殺のメッカであるこの富士樹海の周辺にこんな高級リゾートがあるなんて誰も思わないだろう。勿論、ふたりきりでお忍びなどということなどあろうはずもなく……