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間一髪。なんとか躱すことができた。
だが、俺のペニスはブリーフのなかで鉛のように痺れていた。
軽い失禁。
鉄パイプはナナコ女史のデスクを直撃。
ひび割れたディスプレイ。
だけど、奴の一撃をもってしてもアップグレードを阻止することはできなかった。
数字とともに10が増殖されていく。
「頭を冷やしてこい!」
レオギが俺のすぐ側で戦慄いているシムラーを突き飛ばした。
一歩間違えれば、あの鉄パイプが俺の脳天を直撃していたのだろう……
こんな時に一番かけてもらいたい言葉。暗示のように唱えた。
「冷静になれ!」
自分自身にそういい聞かせた。
俺はLANケーブルをペンチで切断し、
念の為に電源も引きちぎった。
だが、全て、焼け石に水だった。
結局、オフィスのPCは全て10にアップグレードされ、俺たちの高額な仕事道具は、全部、鉄の塊に変わってしまったのだから。