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「おい、なんなんだよ、これ?!」
オフィスの隅から荒らげた声。バイトくんの悲鳴。
「なんで勝手に10にアップグレードされてんだよ!?」
どうした、とレオギが俺より先に駆け寄った。
俺も後に続く。バイトくんからの報・連・相──席を立ったほんの数分の間に勝手にアップグレードが始まっていたとのこと。
今回は警告すらなかった。
「いや、これなんでだよ──??」
俺は焦りを隠せない。
続けざま、レオギがいった。無造作にマウスをクリック。
「駄目だ、チョーさん。こっちもやられてる」
「なんだって!?」
「こっちのPCも10へのアップグレードが始まってる。もしかしたら、会社のPC、全部乗っ取られたかもしれない!!」
「だけど、なんでだ?!」
俺はいった。
「充分に対策は練っておいたはずだ。勝手にアップグレードされるはずがない!!」
「そういわれても……」
視線を反対側にむける。青ざめた顔のシムラー。
あり得ない速度で指先を動かし続けている。あいつのPCも乗っ取られたようだ。
奴でも無理ならもうお手上げだ。