見えない敵
「優介!それじゃあ撮影に入るから!中央に立って!」
誇りっぽい倉庫の中に監督の声が響き渡る・・・・
今日はCMの撮影だった。
夕日の日差しを利用したいってゆう監督のこだわりで撮影は夕方を待って行われた。
イタタタ
あ〜・・・・昨日は飲みすぎ・・・
頭が割れるように痛かった・・・。
だがそんな事を顔に出すわけにはいかない・・・・
俺は監督の指定した場所に立つ・・・
ライトが照らされる・・・異様に眩しく感じた・・・
「はいそれじゃあ行くよ!」
監督の声とほぼ同時に、俺の頭上で何かがきしむ様な音がした!?
俺は一瞬、天井を仰ぐ・・・・・頭上のライトが微かに揺れたように感じた・・・・
え!?・・・・
「キャー!優介危ない!!!」
佐倉の悲鳴が響き渡った!
俺は咄嗟に後ろ側に飛ぶようにしりもちをつく!
ガシャーン!!
頭上からライトが落ちてきて凄まじい音が倉庫の中に響き渡った!
ライトは俺の足元でひしゃげて壊れ、一つの破片が俺の頬をかすめて飛び、もう一つの破片は左腕に突き刺さっていた・・・・
腕を伝って血が流れる・・・・
俺は突然の事に痛みも忘れ、呆然としていた。
「優介!!」
佐倉をはじめ、スタッフ達が一斉に駆け寄ってきた!
俺は佐倉と監督それにスタッフ達と病院へと向かった。
傷はたいした事はなく、頬の方はかすめただけだし、腕のほうも幸いそんな深手ではなかった。
CMの撮影の事が気になっていたが、頬の傷が薄くなってから撮り直す事になった。
佐倉はもの凄い剣幕でスタッフに怒鳴っている・・・・
それにしても・・・・
気になっていた・・・・ライトが落ちてきた事・・・・ただの事故か・・・・それとも・・・
俺の中で、事故じゃないんじゃないかとゆう気持ちが大きくなっていた・・・・
そう思うのには理由があった。
1ヶ月くらい前から不気味なメールが来ていた・・・・
いたずらメールも多いから、気にしてはいなかったんだが・・・・こんな事故があるとやっぱり気になる・・・・
内容はどれもこれも、芸能界から消えろ!・・・・そんな種類のメールだった。
「優介、タクシーで送ってあげる・・・帰りましょう!」
佐倉が俺の背中に手をかけながらそう言った・・・。
佐倉には悪いが、こうゆう時一緒にいたい相手は佐倉ではなかった・・・
「悪いけど、一人で帰る」
俺のその言葉に佐倉は一瞬表情を曇らせる
「まさか・・・・女の所じゃないでしょうね?」
佐倉のこの言葉は俺の神経の先端に微かに触れた・・・・
「何が言いたい?」
「女は駄目よ!・・・・またあんなスキャンダル・・・命取りになるわ!」
佐倉は俺の右腕を掴みながら強く言った。
またあんなスキャンダル!?
それは澄香との事を言っているのか!?
俺は心の底から沸々を湧き上がるような強い怒りを感じた
「佐倉、お前は確かに仕事は出来るし完璧だと思うよ!・・・・だけどな・・・俺のプライベートまで干渉するな!・・・・もしまた同じ事を言ってみろ・・・・お前でも許さない・・・」
俺は拳を握り締め、壁に叩きつけた!
佐倉は一瞬、怯えたような表情をし目を伏せた。
俺は唇を噛み締め、怒りを抑えながら、その場を後にする。
病院を出ると、外はもう暗くなっていた
ん!?
メールの着信音?
誰だ?・・・・嫌な予感がした・・・・
痛かったろう?
その程度で済んで良かったな
今度はどうかな・・・・
消えろ!
またアドレスが違う・・・・
クソッ!
いったい誰なんだ!!
ただのいたずらだと思っていた・・・・これで違うって事がはっきりした。
脅迫・・・・・俺はそう確信した。大きな不安が押し寄せ、潰されそうになる・・・・。
携帯を握り締めた手は不安と怒りで震えていた・・・・
はぁぁぁ〜・・・・ため息をついた・・・・
あれ!?・・・・・
一瞬、脳裏をかすめて麻未ちゃんの名前が浮かぶ・・・・
羽生麻未・・・・澄香の名前じゃなく・・・
まさか・・・俺が?・・麻未ちゃんの事を?・・・そんな予感を首を横に振って振り払う
澄香と顔が似てるから、気になってるだけだ・・・・
自分の中で麻未ちゃんの存在が大きくなりつつなる事に、この時の俺はまったく気付いていなかった。
麻未ちゃんにメールしてみよう・・・・
自分の行動が自分でも不思議なくらいに、自然な流れの中で、それが当たり前のように携帯を開いていた・・・・
会わない?
一言だけ・・・・送信・・・
空を仰ぐと 星が瞬いていた・・・。
今日は晴れていたから、星が綺麗に出ている
神楽さんに近付くな!・・・か・・・・
体中が痛い・・・・そして心も痛かった・・・・
メールの着信音?
慌てて携帯を手にする・・・・神楽さんから!?
会わない?って・・・・
へ!?・・・え?・・・・えぇぇぇぇ?・・・・
ドキドキした・・・・正直嬉しかった・・・・会いたい・・・だけど・・・・だけど・・・
私の中で、神楽さんの婚約者の事とさっきのメールの事が頭にこびりついて離れなかった。
期待してはいけない・・・・これ以上好きになる前に離れた方が・・・・
そんな気持ちが心の中に生まれていた
自分が傷つくのが怖かったのかもしれない・・・・・。
神楽さん、お誘い嬉しいです!
でも・・・神楽さんと私とでは
立場が違いすぎます
人の目が、あります
会わない方がいいのかなって
思います。
自分の立場を大事にしてください
本当にありがとうございました
私は文面をチェックしてため息を付く・・・
送信・・・・
アハハハ・・・・送っちゃった・・・・儚い夢だったな・・・・
会いたいよ〜・・・でも・・・もう終わりだよね・・・
自然と涙が流れて頬を伝った・・・・
「何だよ!このメール!・・・・・ありがとうございましたって・・・・過去形?」
麻未ちゃんからのメールは遠まわしだけど、断りのメールだった・・・。
俺が振られた?・・・・・この俺が?・・・・ハハハハ・・・・
別に・・・いいけど・・・・だけど・・・・だけど・・・やけに・・・心が重い・・・・
あの麻未ちゃんの天然は貴重だったのにな・・・・・
こんな日は麻未ちゃんのあの笑顔が見たくなる・・・不思議だな・・・
俺はそんなあまえた自分の気持ちに苦笑した。
はぁぁぁ・・・・今日はついてない
俺はそう思いながらタクシーに乗り込み、繁華街へと向かった・・・。
優介の婚約者の死を知り、麻未は優介をあきらめようとする・・・
見えない敵に不安を感じる優介と麻未・・・
これから優介と麻未のふたりはどうなっていくのか・・・
次回をお楽しみに