麻未の退院
今日は私の退院日…
昨日一日色々と考えて、思いついた…今までなぜこの事に気がつかなかったのか…花屋に働き出したのも花が好きだったから…
女であるまえに1人の人間として、輝かなきゃ意味が無い!優介との関係をどうするかとゆう前にまず自分が輝かなければ…そんな気持ちから最終的に出した結論が、フラワーデザイナーの資格を取りたい…その思いだった。
これで自分に自信がとりもどせるかどうかはわからない…だけれど今自分が好きな事…できる事…そうやって少しづつでも自信を作り上げていけたら!そんな気持ちが自分の中にあった。
私は荷物をまとめて、深呼吸した…。
あの卵巣ガンで入院している工藤さんが朝早くに私の病室をわざわざ尋ねてきてくれた。
あの人のおかげで、今まで気づかなかった事に気づく事ができた…私はまた会いに来る事工藤さんと約束した。
私は荷物を持って、ナースステーションに挨拶に行く…この1ヶ月の間、お世話になった看護師さん達、色々な面で勉強になった…本当にありがとうございました。
看護師さん達は「定期健診の時には顔を見せてね」と言って、笑顔で送り出してくれた。
私はエレベーターの前に立って、ボタンを押す。
1階から順々に光が上がってくる…そして扉が開いた…あ!?…扉が開いて一番最初に目に入ったもの…それは優介の姿だった!
「優介…」
私が驚いて固まっていると、優介が私の手を引っ張ってエレベーターの中に引っ張り入れる。
「迎えに来てやったんだから…感謝しろよ!」
前と何も変わらない口調…この話口調が大好きだ…ただ前と違うのは、色々な感情が渦巻いていて一緒にいても気まずい気がするとゆう事だけだった。
私は下に降りるまで一言も口を開かなかった…エレベーターに乗っている時間がもの凄く長く感じた…。
1階に着いて、エレーベーターの扉が開くと優介は私の荷物を持って先に下り歩き出した、私は何も言わずに優介の後を追った。
優介は病院を出ると駐車場に行って、自分の車の後部座席に荷物を入れると、助手席のドアを開けて私が来るのを待っていた。
当然、ここに乗れ!とゆう事だろうな…私は助手席に座る。
優介は助手席のドアを閉めると、運転席に座り、車を発進させる…。
私は優介の横顔を見る…長い睫毛…高い鼻…ポテッとした唇…
優介…ドラマの仕事を降ろされたって本当なの?
私はそう聞きたかった…だけどさすがに聞けない…
私のせいだよね…ごめんね…辛い思いをさせてしまって…わがままでごめんね
「優介!」
「麻未!」
お互いに言葉を発しようとして、声が重なった…。
それが可笑しくて滑稽で、お互いに笑みをこぼす
「先にどうぞ…」
優介がそう言って、私に微笑む
言うタイミングがずれてしまって、言いにくくなってしまった…けれどここで言わないとまた言いそびれてしまう…。
私は深呼吸して、口を開いた。
「私、フラワーデザイナーの資格を取ろうと思うの…それが叶ったら自分の中で何かが変わるような気がするの…今はね自分に自信が持てなくて、優介の事をどんどん好きになっていく事が恐くてしかたがないけど…それを切っ掛けに自信を少しでも持つ事ができたら、気持ちが変わるような気がするの…それまで待っててくれる?…ううん、違う待ってくれなくてもいい優介の気持ちが変わってもいい…本当は嫌だけど…もう!!とにかく決めたから!」
私は通り過ぎていく景色を見ながらそう言った。
時間がもしかしら完全に私達を引き離してしまうかもしれない…だけど私は新しい自分を作りたかった…
優介はその言葉に何も言わずに優しく微笑んでいた…
見慣れた景色が目に飛び込んでくる…たった1ヶ月だったのにとても懐かしく感じる。
車はアパートの前に止まる…。
「俺の話は、お茶でも飲みながら聞いてもらおうかな」
優介はそう言って車から降りると、後部座席から荷物を降ろす。
私も車から降りた。
アパートの階段を上る、足音が響く、そんな小さな事までもが嬉しくて感動する自分がいる。
何事も無く過ごしていたら、感じる事のできなかった感覚だろう…
こんな小さな事に感動できる自分はもしかしたら凄く幸せなのかもしれない…そう思った。
私は久しぶりにアパートの鍵を開ける…ドアを開いて中に入った…。
帰ってきた…はぁ〜…やっぱり落ち着く…私は思わず部屋の中に大の字になって寝そべった。
たったのこれだけ…だけど私のとってはもの凄く安心を与えてくれる空間だった。
優介がなにやら、台所で動いてる…私は上半身を起こして台所を見ると、優介がやかんにお湯を沸かしていた。
「あ!ごめん…私がやるから!」
そう言って立ち上がって、優介のそばに行く。
「いいよ…ゆっくりしてろ…今日は俺がやるから…」
そう言って、優介が振り向いた…うわ!優介の顔がもの凄く近くに!?ドキドキした…
麻未は自分自身を輝かせるためにフラワーデザイナーになると言い出した。
そうする事で自信を持つ事が出来れば、自分の中の不安も薄れるような気がしたからだ。
優介は麻未に何を言おうとしたのか…