納得のできない理由
はぁ〜…私はため息をついた。どんな顔をするだろうか…
私は優介が来るのを病室で待っていた。
「しばらく会わないようにしよう」と言い出してから、もう2週間…。
自分の中でやっと自分の方向性が見えた…それが間違っているのか正解なのか、自分でもわからない…ただはっきりしてるのは、優介はきっと納得しないだろうとゆう事だけだ
病室のドアが開いた…来た!優介だ…久しぶりに見る優介は、少し痩せたかな…
「よう!」
優介はそう言って、私の傍まで来ると椅子に座った…そしてふっと私の左手を見て、悲しい表情を浮かべた。
私は優介から貰った指輪をはめてはいなかった。
「お前の言葉を聞かなくてもお前の出した答えがわかった…」
優介はそう言いながら、ため息をついて俯く
「なぜだ?…なぜなんだ!?」
優介の怒りが手に取るようにわかる…
「恐いの…」
私の奥底に埋まっていた気持ち
「何が?」
優介はそう言いながら顔を上げる
「優介、子供が好きでしょう?」
「それは…だけど、前にも言っただろう?俺はお前の存在が一番大事だって」
優介は私の手を握ると私を見つめてそう言った。
「ありがとう…その気持ちは十分わかってるの…正直に嬉しいの…だけどね、子供ができないって事が、私自身の中で優介への負い目になっていって、その自信の無さから優介の周りの人たちに対して嫉妬をするだろうし、意味の無い不安と戦わなければいけなくなる…毎日をそんな嫉妬や不安に振り回されて暮らす事に自信がもてないのよ…気持ちの持ちようでどうにでもなる!?…そうね、そうゆう考えもある、でもねそうやって気持ちを変える事ってもの凄く精神力を使う事、自信の持てない私にできるかどうか…わかってるの、わがままだって…だけどそのわがままを許してもらえないかな?」
優介…大好きだよ!傍にいて欲しいよ!心が言葉と裏腹に叫んでる。
だけどこれが今の私の正直な気持ち。
結局、優介を愛してると言いながら自分がかわいいんだな…自分の中のその冷たさにちょっと幻滅する。
「嫌だ…別れない…」
優介は私の手を力強く握り締めて、苦しそうな表情を浮かべる…
その表情を見て、私の心にも痛みが走る…優介、ごめんね…。
「優介、愛してる…だから一緒にいられないの」
私のこの言葉に優介は眉間にしわを寄せる
「愛する気持ちは、人を強くもするけれど…弱くもする…優介を愛すれば愛するほど…不安を大きくなる…愛してれば信用できるだろう?…そんなの偽善に過ぎない…」
私の手は震え、優介への想いが溢れ出す…愛してる…愛してる…愛してる…
涙が溢れ頬を伝う
「愛してるのに、別れるなんてそんなのおかしいだろう…」
優介はそう言いながら私の涙を拭う…
「ごめん…ごめんね…自分勝手でごめん」
私は涙を拭ってくれる優介の手を握りそう言った。
優介は私を激しく抱きしめ、優しく髪の毛を撫でる
「お前の気持ちは理解できない…だけどわかったよ…でも、でも俺は納得しないからな」
優介の声は震えていた…。
優介は私を愛してくれてる…だから…わからなくなる…愛してくれている人は優しいから…
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ったく!
指輪をはめてない段階で、麻未から出てくる言葉は予想はついていた。
別れたい理由が俺のためだって言うなら、そんな事はないって強く言える。
だけど、少し予想していた理由と違ってた。
不安になるのが恐い…そんな事を言われたら…そんな風に言われてしまったら…どう切り抜けていいのかが分からなくなる。
麻未のためだって言われてしまったら…ああ!ちくしょう!!何でだよ!
どうにもならないジレンマが俺の心を襲い、悲しみと苛立ちが一緒になる。
自分ではどうする事もできないのか?麻未の気持ちを変える事はできないのか?
今、こうして麻未を抱きしめている、この腕でもう麻未を抱きしめる事もできなくなるのか!
愛してるのに…別れる?…
麻未の不安になる要素を少しでも除く事ができれば、もしかしたら…
俺の中でそんな淡い期待が生まれる。
…何ができる?俺は自分に一生懸命問いかけていた。
「麻未…俺はお前と別れたくはない…お前が会いたくないって言うなら会いには来ない…だけど別れるとは言わないでくれ…時間はかかるかもしれないけれど、お前にとって何がベストなのか?俺にとって何がベストなのか?俺に考える時間をくれ…頼む」
俺は麻未を抱きしめながらそう言った。
「…ゆう…すけ…くるしい」
思わず麻未を強く抱きしめすぎていた…俺は咄嗟に麻未を抱きしめていた手を解き、麻未の顔を見つめた。
麻未は泣きながら、静かに何度も頷いていた…。
俺は麻未の頬を触り、唇を近づける…だがそれを麻未の手が遮った…
麻未の中ではまだ危うい状態で俺達の関係は成り立っている…
わかったよ…麻未…
「じゃあ、俺帰る…自分なりに答えが出たらまた会いに来る」
俺がそう言うと、麻未は唇をグッと結んで泣き顔で笑った…悲しい笑顔だった。
まるで何かを沢山言いたいけれど、それを必死に堪えてるように見えた。
俺は麻未に背中を向けて病室を出る…
とにかく、考えるんだ…お互いに思い合ってるのに別れるなんて、そんな答えはベストなわけがない!
俺は手をグッと握り締めて、歩き出した。
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優介の足音が遠ざかっていく…
堪えきれない気持ちが噴出して、涙になる
優介…優介!…優介!!心が優介を呼ぶ…
私はパジャマの袖口で口を押さえて、泣き声を必死で堪えながら泣いた…
優介を苦しめている自分
自分の気持ちをどうにもできない自分
優介の傍にいたい自分
苦しかった…辛かった…涙が溢れて止まらなかった。
麻未が出した結論…それは別れだった、読者のみなさんがどう思うのかちょっと不安であります。
ただ理由を優介のため!のような偽善めいたものにはしたくなかったのです。
この先、どうなっていくのでしょう…優介は麻未の気持ちを変えられうのでしょうか