過去の呪縛
此処は今日も、気持ちのいい風が吹いてる・・・・
澄香の墓は小高い丘の上にあった・・・・
俺は澄香の墓を前にして立つ。
ついつい此処へ足が向いてしまった。
麻未ちゃんに会って、お前に会いたくなった・・・
やっぱり麻未ちゃんがお前にそっくりだからかな・・・
本当にそっくりなんだ・・・・ついついお前にそっくりだって言いそうになった・・・。
そんな事、麻未ちゃんに悪いだろう?
麻未ちゃんを通して、お前の幻想を見ている俺に気付いて、逃げ出してきてしまった・・・。
悪い事したな・・・・
俺は持ってきたウィスキーの小瓶を出して一口飲む・・・・
こんな事で酒に頼って、自分でも情けない・・・・だが自分でもどうしようもない気分だった
澄香の墓は無機質で冷たい・・・・。
その墓を背もたれにするようにして、俺は地面に座り込んだ・・・・
麻未ちゃんってさ、すんげえ天然ドジなんだ・・・・そこが俺のお気に入り・・・・。
お前が生きてたらいい友達になってるな、きっと!
今日だって、からかうとすぐに赤くなったり、ひっくり返ったり、大騒ぎ!
一緒にいると、嫌な事忘れて笑わせてくれる・・・・いいヤツ!・・・・そういいヤツ!
アハハハ・・・俺酔ってるな・・・・
お前の前で他の女の事を話しすぎだ・・・・悪い悪い・・・
やきもち妬くなよ・・・いや妬いてもいいぞ!
怒れよ!・・・・怒ってくれよ!
なぜあの時助けてくれなかったんだって!
なぜあの時手を握ってくれなかったんだって!
なぜ私だけ死なせたの!って・・・・怒れよ・・・・
水に沈んでいくお前を見つけてやれなかった・・・
この手でお前を助けられなかった・・・
クソッ!
俺は思い切り、拳を地面に叩きつける!
なぜ・・・なぜ・・・・・・
俺はあおるようにウィスキーを飲む・・・・
涙が頬を伝って、墓石の上に点となって落ちた。
俺はどうすればいい・・・・
そんな俺の気持ちと関係なく風はいつものように吹いていた。
神楽さんの瞳・・・なんとも言えなく淋しそうってゆうか・・・・悲しい瞳をしていた・・・・
私はアパートの床の上に寝転びながらそんな事を思っていた。
去っていく背中もなんとなく儚げで、消えてしまうんじゃないかって・・・・
そんな風に見えたな・・・・
だけど・・・・だけど・・・・今日はなんだか嬉しかった・・・・からかわれただけだったけど・・・・
神楽さんの笑顔が見られた・・・・。
神楽さんのハンカチ・・・・
クンクン・・・・思わず匂いをかいでみる・・・・おかしい!?私の頭おかしいかな?
「また会いたい」な〜んて言われちゃった・・・・・うっれしい〜!
ハンカチ、洗わないでとっておきたいけど・・・・やっぱり洗って返すべきよね?
そうよ・・・そうよね・・・・
う〜ん、もったいないな〜・・・・
ハァ〜・・・・ウフフ
ため息と共の気持ち悪い笑いを浮かべてしまった。
今日一日はきっと顔がヘラヘラ緩みっぱなしで、気持ち悪い私になってるな・・・・
窓の外に目をやると
綺麗な夕焼けが空を紫色に染めていた・・・・
優介の悲しい過去を
麻未のあたたかい雰囲気が包み込み
優介の心の傷が癒されますように・・・・