策略の中に踏み込んだ
服部の誕生日パーティー…ばっくれようかとも思ったけど…そんな事、できるはずもなく、ついにこの日を向えてしまった…
はぁ〜…ため息一つ…
俺はトイレの中の鏡を睨みながら作り笑顔の練習をしていた…
会場は服部グループのホテル…超がつくくらいの高級ホテルだ…
まあ、うまく合わせて笑顔を振りまいて適当なところで抜け出そうかなって思ってる…。
一応、演技者だから…これくらいの演技はできないとね。
しっかし、ここ最近、麻未は仕事が忙しいとかで、俺の事を全然相手にしてくれないくて、淋しい…俺が暇な時にかぎって忙しいなんて…1週間も顔を見てない…今頃仕事だよな…
さて…そろそろ時間だな…行くとするか…。
俺はそんな事を思いながらトイレから出た、その瞬間!人とぶつかって相手を転ばしてしまった!
「大丈夫ですか?…あれ!?」
転んだ相手を見て、ビックリ!…床にしりもちを付いていたのは…どう見ても、麻未にしか見えない…。
麻未に会いたい気持ちが強すぎて、誰でも麻未に見えてしまうのか?
俺は目を擦ってみた…だけど…やっぱりそれは麻未だった…。
「優介…起こしてよ!」
麻未の声で…その女は手を差し出す
やっぱり…本物だ…。
「お前、何やってるんだ?こんな所で?」
俺はそう言いながら麻未の手を掴んで立たせる。
「え!?…え〜っと…仕事よ…」
麻未は俺から目をそらしながらそう言う…怪しい…何か隠してるな…
「このホテルでなんの仕事だ?」
俺は麻未の顔を睨みながらそう聞いた…。
麻未は少し俺の方を見て、俺の顔色を伺っていたが、観念したようにため息を一つついて口を開いた。
「服部真之介の誕生日パーティーの仕事がうちの花屋に来たの…」
麻未の言葉に、心の奥底から怒りににた感情が湧き上がってくる
アイツの事だ…麻未が俺の恋人だと知っていてわざと麻未の所の花屋に仕事を依頼したに決まってる!何を企んでいるんだ!?…あのクソヤロウ!!!
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優介の顔色が徐々に変わっていく…やっぱり怒るよね…
「何で言わなかったんだ?」
優介は私にそう聞いてくる。
「だって…優介に心配かけたくなかったし…言ったとしてもどうにもならないでしょう?」
私の言葉に優介は唇を噛み締める。
「あのヤロウ!」
優介はそう言いながら、私に背を向けてパーティー会場に向う…
私は咄嗟に、優介の手を握る…そうでもしないと優介が怒りで暴走しちゃいそうだったから!
それでも優介の力にかなうはずもなく、優介は私を引っ張るようにして会場に入っていく。
会場の中には沢山の人がいた…その中に…いた!服部真之介!
服部は優介に気付いたらしく、手を上げて近付いてくる!
カメラを持った、記者らしき人たちも服部の動きに合わせて、くっついてくる!
なんか嫌な感じだ…
「神楽さん!ようこそ!来てくれて嬉しいです!」
そう言って、服部はにこやかに近付いてくる。
優介の表情が硬くて、とても好意的と思えるものではなかった…。
「えっと…そちらの方は?」
服部は私の方を見て、しらじらしくそう聞いてくる…
私が優介の方に目をやると、優介はもの凄く不機嫌そうに服部を睨んでいる…まずいな…今にもケンカになりそうな雰囲気…
私は思わず優介の手を力強く握り締めた…。
「羽生麻未と言います…このたびは私どもの花屋を御ひいきくださいましてありがとうございます。」
私は咄嗟にそう言って、頭を下げる…。
「ああそうですか…ところで…神楽さんとはどうゆうご関係で?」
コイツ!本当に知らないってのか!?もしも知っててこの態度なら、ホントたぬきだわ!!
服部のその言葉に優介は私の手を引っ張って、自分の方に引き寄せると私の肩を抱く
「俺の婚約者だ…」
優介がそう言った…私はちょっと驚いた…こんな公の場でそう言って紹介するとは思わなかったから…。
服部は、少しだけ悔しそうな表情をしてるように見えた。
「婚約?…そうなんですか!今日は本当にいい日ですね!僕の誕生日と神楽さんの婚約発表が一緒になるなんて!」
服部はそう言いながら、優介の肩に手をかけ、私と優介…そして服部、3人がちょうど並ぶようにする…その瞬間、沢山のフラッシュがたかれ、一斉にシャッター音が響き渡る!
眩しさでクラクラした…。
優介はそんなフラッシュの中、顔が引きつっていた…。
撮影が終り、落ち着いた…優介たちはいつもあんな感じでマスコミの人たちに囲まれるのね…大変だわ…。
「えっと…羽生さんでしたよね?神楽さんの婚約者なら、僕の大切なお客様です…今、洋服を用意させますから、どうぞ着替えてパーティーに参加していってください…」
服部はそう言うと、指をパチンと鳴らす…すると部屋の隅に立っていた女性が近付いてきた。
「このお客様にドレスを用意して!」
「いえ!…私は…」
私は断ろうとしたけど、その言葉の途中で腕をつかまれ引っ張られる!
「服部!麻未は嫌がってるだろう?」
優介もそれを止めようとしたけど、服部に腕をつかまれる!
「まあ…いいじゃないですか?…楽しんでいって欲しいだけですよ…」
そんな言葉が聞こえた…とても嫌な言い方だった…
優介の手は力強く握られ、微かに震えてるように見えた…。
優介と服部の間に何か目に見えないルールみたいな物があるのか…あの優介がおとなしく引き下がった…。
私は会場から少しはなれた部屋に通され、女性が部屋のクローゼットの中から何枚かのドレスを取り出す。
すご〜い!…どれもこれも高そうなドレス…
「どれでもお好きなものを選んでください…」
女性にそう言われたけれど…なんとなく嫌な予感がして、とてもそんなパーティーに出たいと思えるほどの気持ちに余裕がなかった…。
私がそう思いながら決めかねていると、女性が微笑みながらドレスを持ってきて、私に当てる…。
「あなたには…この色がお似合いだと思いますよ…靴は23くらいですか?」
そう言って渡されたドレスは春の若草を思わせるような淡い緑色のドレスだった…。
靴は白いヒール…23…大当たりだった…。
着るしかないよね…なんだかまんまと服部の策略にはまってるようで怖かった…
私はしょうがなく、服を脱ぎドレスを着た…。
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「どうゆうつもりだ?」
俺は、服部に聞く、服部は嫌な含み笑いをする。
「嫌だな…そんな言い方…まるで僕が何かを企んでるみたいじゃないですか?」
服部はそう言いながら、テーブルに置いてある料理を摘む。
「違うのか?」
俺のその問いに、服部は鼻で笑うだけで何も答えなかった…。
「服部さん、神楽さん、ツーショットの写真が欲しいですけどいいですか?」
そう言いながら、カメラを構える記者達が俺たちを囲む
服部はニコニコしながら、俺の肩に手を回して肩を組む…。
まあこれくらいで済むなら我慢してやる…周りのみんなに迷惑がかからなければそれでいい…。
俺は引きつった笑顔を浮かべながら、記者達の要望に答えた…。
パーティーは始まったばかりです。
これから何が起こるか…
優介と麻未のこの先を楽しみにしていただけると嬉しいです。