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その笑顔を見ていたい

病室の窓から外を見る…今日は雨だった…


昨日一日の出来事は、俺の中の麻未への思いを改めて考えさせられるものだった。

俳優を辞めようかな…なんて軽々しく口にした俺が恥ずかしい…

確かに色々な事があって気持ち的に腐っていたのはあった…

だけど…だけど…麻未の過去の出来事に比べたら…あの苦しみに比べたら…

いつもすぐ感情的になってしまって、先を急ごうとする俺が…

皮肉にも麻未の事の一件が、自分自身を冷静に見て考える切っ掛けになっていた。


昨日の夜…麻未を1人置いて帰って来るのが心苦しかった…

麻未はいつもの麻未で、笑顔で送り出してくれた…

メールは来てたけど…心配で眠れなかった…

今日は朝にメールが来て、それっきりだ…

もう、仕事は終ってるはずなんだけど…


あ!メールの着信音!

俺は飛びつくように携帯を開いた!

麻未からだ!

これから来るって!

思わず心が躍る!…ちょっと前までの俺には考えられない気持ちだった。


こうゆう時の時間って、長く感じるよな…

外は太陽が落ちて、もう暗くなっていた…


コンコン!

ドアの音…麻未かな?

「どうぞ」

ドアが開いて…そこに立っていたのは佐倉だった…表情は今までになく硬かった

佐倉が病室に入ってきた…

「優介…」

佐倉がその続きを言う前に俺は遮るように言葉を発した。

「気にしてない!」

いいや…気にしてないわけがなかった…だけど佐倉にはそう思われたくなかった。

佐倉は、瞳を揺らして、俺の前に立つ

「優介…私は…ずっと、ずっと貴方が好きだった!」

佐倉はそう言った。

俺が今まで知っている佐倉とは別人だった…

「佐倉…俺はお前の事をいいマネージャーだと思ってる、仕事をする上でこれ以上のパトナーはいないと思ってる…だけど…だけどな…人生のパトーナーにしたい相手は麻未だけだ…俺には麻未しか考えられないんだよ…」

俺はキッパリと言った。

佐倉の瞳から涙が溢れた…そして俺に背を向ける…肩が震えていた…。


コンコン

ドアをノックする音だ…

ドアが開き、麻未が立っていた!?

今のをもしかして聞かれたか?

麻未は佐倉の方に歩いて行く。

佐倉の表情を見ることはできないが、一瞬佐倉の体が強張ったように見えた

「佐倉さん、お久しぶりです」

麻未が佐倉に挨拶をした。

あれ!?麻未と佐倉って面識あったかな…俺はちょっと不思議に思った。

佐倉は何も言わずに病室を後にしようとする

「佐倉さん、これからも優介のマネージャーとしてよろしくお願いします!」

麻未はいつになく冷たい表情でそう言った。

やっぱり聞かれてたのか!?

佐倉は無言で病室を出てドアを閉めた。

この時、佐倉の瞳に冷たい影が差し、殺気に満ちていた事など、俺は知る由もなかった。


「麻未…」

俺の言葉の続きを知っているように、麻未は人差し指で俺の口を塞ぐ

「ごめんね、立ち聞きするつもりはなかったんだけど…聞こえちゃったんだ…嬉しかった…優介の気持ち…」

麻未はそう言って優しく笑う…

こらこら…そんな顔をされたら、また自分の気持ちが抑えられなくなる…

「そんな顔するなよ…襲うぞ!」

俺は密かに麻未がどんな反応をするか楽しみだった…

麻未は俺の方に手を伸ばして、俺の頬を触れる…そして麻未の唇が近付いてきて俺に口づけをした。

俺は目も閉じずに、口付けされた…

驚いた…おかしいぞ…何なんだ?麻未の事を色っぽく感じる…

麻未はその腕で優しく俺の顔を包むように抱きしめる…目の前に麻未の小さな胸があった。

「優介…ありがとう…私の過去を受け入れてくれて…」

麻未の言葉に、俺の鼓動が早くなる!

俺は一気に麻未をベッドの上に押し倒して、麻未の瞳を見つめる…

「お前は俺の過去をひっくるめて愛してくれた…俺はお前が過去に繋ぎとめられないように、未来と照らしてやる」

俺はそう言って、麻未に口づけをする…

麻未の手が首筋に回ってきた…麻未の思いが伝わってくるようだった…


コンコン!

ドアのノック音!?

俺たちはその音に驚いて、飛ぶように離れた!

麻未は咄嗟に上半身を起こしてベッドに座り、俺は立ち上がって窓の外を見た!

「ど、どうぞ…」

内心あせっていた…

入ってきたのは看護師だった…

「傷の消毒に来ましたよ」

看護師にそう言われて、麻未はベッドから立ち上がると、病室の隅っこに俺に背を向けた状態で立っていた。

俺はベッドに足を投げ出して座る…

麻未の肩が微かに震えていた…あいつ、笑ってるな…

それを見たら、俺の方まで笑いたくなってきて、笑いを抑えるのが大変だった


看護師はそんな俺たちの不自然な雰囲気にも気付かず、傷口を消毒して、包帯を巻きなおして出ていった…


俺は思わず、噴出した!

あせって麻未から離れた自分も笑いを堪えている麻未の姿も可笑しかった!

「あせっちゃった…」

麻未もそう言いながら、笑っていた。


お前は本当に不思議なヤツだな…おっちょこちょいでドジなヤツだと思ってたのに、俺の気持ちに敏感に気付いてくれて、あんな事があった後なのにこうやて朗らかに笑ってる…

こいつと一緒なら、何も怖いものなどないような気がした…

辛いことも苦しい事も、すべて乗り越えていけるような気がした…

こうやってずっと傍にいれたらどんなにいいだろう…

俺は心の中でそう思った…。



優介は佐倉にはっきりと自分の気持ちを言った。

麻未のその気持ちを知り、安心する

佐倉の表情だけが未来に不安を残した

次回、優介は退院する…そして佐倉は行動に出る!?



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