嬉しい約束
あぁぁぁ〜・・・疲れた・・・・・。
私は狭いアパートの部屋に大の字になる・・・
6月は仕事が忙しい、やっぱり結婚記念日が多いからかな・・・・。
仕事が忙しいのは嬉しい事ことだけど、彼氏もいないこの私にはみんなの嬉しそうな顔が、やけに心に浸みるよ。
薄暗い部屋の中で天井を見上げてる私の脳裏にあの人が浮かぶ・・・・
フフフフ・・・・・神楽優介・・・・思わず顔が緩んじゃう
だって、だって、だって・・・・あの後すぐに返信をくれるなんて、嬉しいじゃない!
この私にも春が来たのかしら!・・・・・
ダメダメ!浮かれちゃ駄目よ!だって相手は俳優よ!・・・・まわりに綺麗な人が沢山いるはず・・・。
私なんて・・・・ねえ・・・ハァ〜・・・・ため息しか出ないわよ。
あれ!?メールの着信音?
誰かな?
私は携帯を鞄から出す・・・名前は・・・神楽優介!?
「キャー!!!!」
あ!思わず大きな声を出してしまった!
このボロアパートの壁は薄かったんだ・・・・失敗した・・・
私は口に手をあてながら、携帯を開いた。
今仕事が終わりました
明日、久しぶりのオフなので
時間があったら会いませんか?
仕事があるのなら、終ってからでも
どうでしょうか?
返事待っています
神楽優介
うっそ〜!・・・・ムフフフ・・・・
自分でも気持ち悪い顔してるってわかるわよ・・・・だけど、これが普通でいられますかって!
私は思わず携帯電話を抱きしめて、床の上をあっちへゴロゴロ、こっちへゴロゴロ・・・。
キャハハハ・・・・嬉しすぎ・・・・。
携帯電話!ありがとう!
思わずキス!キス!キス〜!!!
どうしよう・・・何を着てく・・・・エヘヘへ・・・どうしよう・・・。
あ!そ、そうだ!返事しなきゃ・・・。
冷静になれば、明日は昼まで仕事だった・・・・。
やだ、また手が震えてる・・・
こら!私の手!落ち着け・・・・
メールありがとうございます。
思わず嬉しすぎて
携帯電話を抱きしめちゃいました
明日は昼まで仕事なので
1時過ぎからなら何時でも
かまいません。
神楽さんの都合のいい時間に
合わせます。
羽生 麻未
送信・・・・と・・・
本当にどうしよう・・・・
頭の中が明日の事で一杯で、思考能力が低下してしまっていた・・・・。
おっと・・・・メール着信っと
やっぱり傘女だ・・・・
俺は羽生麻未の事を携帯に傘女として登録していた。
何々・・・・
携帯電話を抱きしめた!?
クククク・・・・想像しただけで笑えるんだけど・・・・。
1時過ぎね・・・・了解了解っと・・・・。
明日の午後2時に
あの喫茶店で待ってます。
来れなくなった場合だけ
連絡下さい
それでは明日!
神楽
送信・・・・・と・・・・・
ふうぅぅぅ〜・・・・・
俺は自分の部屋のベッドの上に腰を下ろす。
枕元には写真・・・・アイツの澄香の笑顔がそこにある・・・・。
一年前まではお前の笑顔は俺の横にあったのにな・・・・俺はそんな事を思いながら写真を見つめた。
「この間、お前にそっくりな女に会った・・・・お前が生き返ったんじゃないかと驚いたよ・・・・だけどお前と全然違う・・・傘女なんだ・・・・」
俺は自分で言った言葉に思わず鼻で笑った。
なあ、澄香・・・俺だけが生き残ったのには何か意味があるんだろうか・・・・。
なあ・・・・お前はどう思う?
俺はベッドに横になり枕元から額に入った写真を取り、自分の目の前に置く
お前はいつもかわらず澄んだ瞳で笑ってるな・・・・。
あの事故から1年・・・・・
マスコミからは自殺だの殺人だの・・・・色々と書かれたが・・・・
お前が俺の横にいない事が一番辛かったよ・・・・。
お前の気配のないこの部屋で日々を過ごし、お前の声の聞こえない空間でいつも一人で時間を過ごしていた・・・・・。
ハァァァ〜・・・・・ため息で全ての体力を失いそうだ・・・・。
俺は脱力感を感じ、静かに目を閉じた・・・・。
頬を伝って涙が静かに流れた・・・・。
目を開くだけの体力も残ってなくて、そのまま眠りに付いた・・・・。
俺はその夜、夢を見た
あの日のあの時のように水の中でもがき苦しみ、必死に助けを求めていた・・・・・
そして一瞬、光が見えて・・・・
そこに手を伸ばすと誰かが力強く手を握って引っ張り上げてくれた・・・・。
引っ張り上げてくれた手は女性のもので
女性の顔は薄れる意識の中で、ぼやけていてわからなかった・・・・。
その夢はただの夢なのか
それとも何かを意味してるのか・・・・
それは俺にもわからない
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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