雰囲気崩壊!クシャミ女現る!?
愛おしい麻未…
涙に濡れた心も、心の傷とともにおった火傷の痕も…
麻未の過去に何があったのか…
それはわからない…麻未の心の闇も含めて守ってやりたい…いや、守ってやる事によって俺が守られてるのかもしれない…。
それを俺自身が望んでいるような気がした。
俺は麻未の顔を指で軽く持ち上げ、麻未の唇に自分の唇を近づける…
「フ…ファ…ファ〜…ファックション!!」
もうちょっとで唇が触れようとした時、麻未がクシャミをした!
おい、おい、ここでクシャミかよ!?
「ご、ご、ごめんなさい」
麻未は自分がクシャミをしてしまった事にかなり慌てている様子だった。
確かに…いい雰囲気でこれからって時に、クシャミ…
麻未らしいってゆうか…ホントに面白いヤツ
「フ、フ、フ〜…フ、ファ…ファックション!」
またクシャミ…クシャミする寸前の顔って笑えるよな…
あ〜…もったいないな…これからいいところだったのに…雰囲気ぶち壊し…ククク、笑える。
麻未は申し訳なさそうに、口に手をあて上目遣いで俺を見る。
そんな仕草もまた可愛かった…
こいつって、なんでこんなに可愛いんだろう…
いつも一生懸命で、たぶん過去に色々な経験をして、そんな過去を背負っていてるはずなのに…そんな事を微塵も感じさせない…
そんな麻未の雰囲気にいつも俺は元気を貰う
麻未は俺の元気の元だな!
「ファックション!」
またクシャミ…
盛り上がっていたのはしらけてしまったけど、そんなタイミングでクシャミをするのが麻未らしくて、可笑しくて可笑しくて笑いが止まらなかった…。
俺は必死で笑いを堪えながら、麻未にブラウスを着せる
「…ククク…着替えて来い」
「そんなに笑わなくても…」
麻未は少し恥ずかしそうにそう言い、奥の部屋に着替えに行った…
傘女からクシャミ女に変貌…俺は一人でそんな事を思いながら笑った…
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この気まずさはなんだろう…
優介もがっかりしたよね?
私だってがっかり…でもクシャミしちゃった…
こんな時、いい女だったらクシャミなんてしないんだろうな…
「ハ、ハ、クシュン!」
風邪ひいちゃったかな
いい雰囲気をぶち壊す…名づけて妖怪クシャミ女!?…
ハハハハ…悲しい…自分でそんな事を思いながら私は苦笑いした。
私は服を着替えて優介の所に戻る
優介は左足を伸ばした状態で座って、太ももをさすっていた…
やっぱりまだ傷が痛むのね…
優介が私を手招きする。
なんだろう?
優介は優しく微笑むと、自分の無精髭を指差した。
「剃ってくれるって言ったろう?」
あ〜…そうだった、すっかり忘れてた!
私は急いで洗面所から洗面器にお湯を入れて、石鹸とカミソリを持って来る。
石鹸をよ〜く泡立てて…優介の口のまわりにつける
それでは髭剃り開始!
優介の顔を見ると、何やらニヤニヤと笑っている…何か企んでる!?
優介はカミソりを持ってる私の手を掴むと、そのまま床に私を押し倒した!
カミソリはその反動で私の手元から数十cm向こうにに飛んでった!
優介は石鹸だらけの頬を私の顔にくっつける!?
もう!いいかげんに…してよ〜…
「ゆ、優介!」
私は優介の体を自分から必死に離した!
「うっ!て〜…」
優介がかなり痛そうに左足の太ももを押さえている!
あ!優介の怪我してる所に私の足が当たってしまった!!
「優介、大丈夫?ごめんなさい…」
優介はそんな私の態度を見ながら、痛みで歪んだ顔から満面の笑みへと変わり、声を出して笑っている…
何がそんなに可笑しいの?
私は何をそんなに笑っているのかわからなかった…
「麻未…顔!…顔」
優介が私の顔を指差して笑っている。
え!?私の顔!?
私は鏡の所に行って、自分の顔を見てみると、鼻の頭とか頬の辺りとか顎とか、いたる所に石鹸がついていた。
そんな自分の顔が可笑しくて、自分でも思わず吹き出してしまった。
二人で大笑いする…久しぶりに心から笑ったような気がした。
私は優介の口のまわりにまた石鹸をつける
さっきみたいに優介はニヤニヤしてたけど、今度はおとなしく髭を剃らせてくれた。
優介の伏せ目がちの顔…睫毛が長く見える…鼻筋の通った高い鼻…本当に綺麗な顔
こうやって優介が近くにいて、髭を剃ってる私がいて…幸せだった…。
普通の事が普通じゃなかったあの日々…
笑顔で穏やかに日々を過ごす事にあこがれて…それが私の夢だった…
今までに何人かの人と付き合ったけれど…こんなに穏やかな気持ちで一緒にいられる人は初めてかもしれない。
普通の事が普通として、特別な事じゃなく自分の中に浸透しいる事に心地良さを感じていた。
「はい…終わり…」
私は優介の顔をタオルで拭く…
優介がそんな私を見つめていた…
「何?」
私は優介の視線が気になって、聞いた…
優介は私の頬を優しく触り、微笑んだ。
「麻未…俺は何をすればいい?何が出来る?…お前の力になってやりたい」
なぜ、そんな事を急に聞くの!?
私がビックリした顔をしていると、優介は優しい瞳で私を見つめる
「今、一瞬、お前が消えてしまいそうなくらい儚く見えた…」
優介はポツリとそう言う…その言葉が私の心に刺さる…心の中の古傷が疼きだす…
やだ…どうしよう…一生懸命作り上げた自分が崩れそうになる…
そんな崩れそうになる自分がいる事を必死で隠しながら言葉を発した
「辛くなった時…そんな時は声を聞かせてくれるだけでいい…それだけでいいから」
私はそう言った…
優介は私の手を力強く握り、その手を自分の口元に持っていくと、私の手に優しくキスをした。
「麻未…もう会いにくるなとは言わない、会いたい時はいつでも会いに来い、周りの事なんか気にするな、話したい時はいつでも連絡しろ!」
優介は瞳をユラユラ揺らしながらそう言った
「ありがとう」
心が震えた…色々な感情が混ざり合ってりる…
私は涙が流れそうになった…
泣き顔に近い笑顔を浮かべていたかもしれない…
私はそんな顔を優介に見られたくなくて、目線をそらして後片付けをし始めた。
不意に優介の手が伸びてきて、私を引き寄せ抱きしめる
温かい…優介の心が伝わってくるみたい…
「さっきの続きしようか…」
優介が耳元で突然そんな事を言った。
は!?さっきの続きって!?
私は期待してなかった不意の言葉にバタバタと慌ててしまって、洗面器のお湯をこぼして床を水浸しにしてしまった!
急いで雑巾を持ってきて床を拭く
そんな私を見て、優介はまた笑っている…
「お前ってホント可愛いな!」
優介はニコニコしながらそう言った。
その笑顔から漂ってくる雰囲気が私を包み込む。
過去の傷も佐倉さんの事も全てが流されていくような気がした。
もう少しでいい所だったのに…麻未のクシャミが邪魔をする!
だが、麻未の持ってる雰囲気だろうか、それがなんとも麻未らしくて可愛いと優介は思った…。
二人の温かい空気が、お互いの心の傷を癒して行くようだった…
次回、優介の「泊まって行く!」の言葉に麻未は動揺!温かい雰囲気の中で朝を迎える麻未の前に!?