心に涙の雨が降る
今日はいつもの何倍も疲れた…
精神的に疲れてる…
仕事をしていても、手につかないし…また失敗しちゃった…
こうゆう時はいつもここに来る
大きな川の向こうに夜景に広がってる…
この景色を見ると、なんだか気持ちが落ち着く…
「何一人で浸ってるの…」
聞いたことのある声に驚いて、私は振り返った!
そこには永井涼が立っていた!
「なんで?」
「なんでって?麻未さんを駅で見かけて、僕とすれ違ったのに僕に気付かないで行っちゃうんだもん!!だから後をついてきた…」
永井君…なんだか君をつけるのも面倒になってきた…
永井はふてくされた様な顔でそう言った。
今日は誰とも話したくなかった…一人で静かに過ごそうと思っていたのに
「…麻未さん、もしかして何かあったの?」
永井が私の顔を覗き込むようにしてそう聞いてくる
「別に」
私は言葉少なく、また川のほうを見て、ため息をついた…
永井は私の横に立って川を見ている。
プシュー!
突然隣で缶ビールを開ける音がした。
私の目の前に差し出される、缶ビール…
私は永井の顔を見た…永井は満面の笑みを浮かべていた
「ほら、つまみもいっぱい買ってきたから、ここで二人だけの宴会でもしよう!」
私は永井が差し出した、缶ビールを無言で受け取る
「何に乾杯しようか?」
永井は茶目っ気のある顔で私の顔を覗いて笑った…温かい笑顔…
私は、なんとなく笑った…苦笑いに近かったかもしれない…
「じゃあ、私達の輝かしい未来を祈ってってゆうのはどう?」
私は缶ビールを高く掲げてそう言った…そう自分の気持ちを強く作るために!
「いいんじゃない…僕たちの輝かしい未来を祈って!」
「乾杯!!」
心がなんとなく温かかった…
それから二人で色々な話をしながら酒盛りをした。
永井の夢の話、私の夢の話、それから私の生い立ちの話、義父との事は抜かして話をした。
ビックリしたのは永井の生い立ちの話…
永井は両親共に事故死をして、その後はずっと施設で育ったんだって…
だから、こんなに強いのかな?
私はそんな事を思った。
ポツ…ポツポツ…ポツポツ…
あ、雨?…雨が降ってきた…涙雨!?まるで…今の私だわ…
雨は徐々に激しさを増し、本降りになった…
私達は急いで近くの軒下に入る。
近くの外灯のオレンジ色の光が私達を照らしていた…
「あ!?」
永井は短く言葉を発して…言葉を飲み込む…
次の瞬間、永井が私も背中を覆い隠すように抱きしめた!
私は驚いて、体をよじらせながら振り払おうとした!
「動かないで!」
激しい言い方だったけど、そこには優しい響きが含まれていた
「何もしない…ただこのまま…麻未さんの痛み、僕に少し分けて…」
永井は優しく柔らかい声でそう言った…
私は悟った…火傷の痕…
私は白いブラウスを着ていた…雨で濡れて透けて見えてしまった…過去の傷…
夜の闇に雨の音だけがこだまする…
「麻未さんを守る役目、僕じゃ駄目かな?」
永井の心地のいい声が耳元で聞こえる
こうやって永井に抱きしめられても…心の隙間は埋まらない…。
私は永井が抱きしめてくれていた腕を優しく掴み、自分の体から離して、永井の方に振り向いた。
「私が愛してるのは神楽優介、ただ一人…それは変える事はできない…」
私がそう言うと、永井はため息をついて下を向く
私はそんな永井の手を取り話を続けた
「私は永井に対して嫉妬したりしない分、一緒にいて楽なの…こんな事を言ったら永井に嫌われるかもしれないけど、でも永井には嘘をつきたくないから…ずるい女でごめんなさい」
私の正直な気持ちだった、これを切っ掛けに嫌われてもしかたがない…でもこのまま永井の期待に答えられないのに、優しさとゆう理由をつけて嫌われる事から逃げていても、お互いのためにならない…そう思った。
今…私の心の中で現に嫉妬が渦を巻いている
辛くて苦しい…今まで抑えていた嫉妬とゆう気持ちが溢れ出す。
疑いたくない…でも…でも…
どうしよう…辛い…涙が溢れ出す…
胸が痛い…
私は声をあげて泣いた、しゃがみこんで声をあげて泣いた…
「麻未さん!?」
永井の困っている表情が、見なくても手に取るようにわかる…
でも溢れ出した気持ちは止める事ができなかった。
「麻未さん、どうしたの?」
永井の動揺した声が頭の上から聞こえる
「…ごめん…何も…聞か…ないで…今日だけ…そばにいて…ごめん…ね…私って…ずるい…ね…ごめん…」
そういうのが精一杯で…もうボロボロだった…
永井は何も言わず、ただ傍にしゃがんでいた
空気を伝って、永井の優しさが伝わってくる…
雨の音が小さくなってきた…
さっきまで雨で見えなかった夜景の光がちらちらと見え始める。
「…少し落ち着いた?」
永井の優しい声が聞こえてくる
私は泣きしゃっくりしながら頷いた
「麻未さん、やっぱり何かあったんでしょう?」
永井はいつもの笑顔を見せる
「…ヒック…永井…ごめんね…ヒック」
永井は私のしゃっくりが可笑しいのかクスクス笑う
「俺って育った環境が環境だから、打たれ強いの!麻未さん、覚悟した方がいいよ!しつこいからね〜」
永井はそう言ってケラケラ笑ってる…
永井のこうゆうところにいつも助けられる…
「私って…ヒック…育った環境が環境だから…ヒックヒック…しんは強いし頑固なの…ヒック
…ついて来るなら覚悟してついてきた方がいいよ…ヒック…」
しゃっくりしてるから言ってる事に迫力がない…
「麻未さんと俺って似てるかも!?」
永井はそう言って、私の肩をバシバシ叩きながら、ゲラゲラ笑った。
私もつられてしゃっくり混じりに笑った
永井も私もそんなしゃっくり混じりの笑いが可笑しくて余計に笑った…
雨あがり、びしょ濡れのまま地下鉄に乗る事もできないから、とりあえず歩いて帰る事にした。
私と永井は手が触れない距離を保ちながら横に並んで歩く…
雨上がりの夜空には、雲の隙間に星が光っていた。
涼は麻未の中の優介の存在の大きさを思い知った。
麻未は優介に対する疑惑を持ちながら、不安の中苦しんでいた…
次回は麻未のもとに、優介が病院を抜け出し現れます!
二人のあったかい愛をお楽しみ下さい!