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愛してる だからこそ

今日はなぜか朝早くに目が覚めた。

虫の知らせってやつだったのかな…

朝のニュースで優介の事故を知った…すぐにでも病院に駆けつけたかったけど、冷静になって考えた…今はマスコミも沢山来てるだろうし、私が行ったらパニックになりかねない…そう思った。

自分の気持ちを必死で抑えて無理矢理あきらめた。

今日は朝から夕方までずっと仕事だったけど、優介の事が頭から離れず、ミスしそうになっちゃうし、配達の時には道は間違えちゃうし…

あ!これはいつもの事か…ハハハハ

とにかくずーっと上の空だった。

帰ってきて部屋に一人、何もやる事がないのって、ついつい色々な事を考えてしまうから

意味もなく掃除をしたり、もう何年もやってない編み物をしたりした…


優介からは何の連絡も無い


ニュースでは全治3週間の重傷だって言ってた、怪我は治療をすればちゃんと治る…

だから心配ないって、自分に言い聞かせてた。


ピンポーン

時間を見るともう午後9時半、こんな時間に誰だろう?

私は覗き窓から外を見る…

あれ!?黒崎さん!?

私は急いでドアを開けた

そう、そこには黒崎さんが立っていた。

「ど、どうしたんですか?」

「今から出れる?」

黒崎さんは私にそう聞いてきた

「え!?あ、はい」

「優介先輩が会いたいって…」

「い、今すぐ用意します!」

私は黒崎さんの言葉に即答して部屋に戻ると、急いで用意をしてアパートを出た。

黒崎さんの車に乗ると、私達は優介の入院してる病院へ急いだ。


 ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞


「お前は暇なんだな…」

俺は駿の顔をみながらそう言った。

昨日も来て、今日も来て、仕事はちゃんとしてるんだろうな。

「へ〜…そんなに俺が邪魔か?知ってるぞ〜!俺に内緒で竜太に麻未ちゃん連れてくるように頼んだだろう?」

え!?な、なんで知ってるんだ?

「その顔、やっぱり図星!お前ってさ、思考回路が単純だから読みやすんだよね!」

駿はそう言いながら、愉快そうに笑っている

こいつとこうやって些細な事を話す時間がとても心地よかった…

口には出さないけど、なんだかんだ言って、俺のことを心配してくれてる。

その気持ちが嬉しかった。


コンコン

ドアをノックする音

「どうぞ」

俺の声にドアが開く、そこには竜太とその後ろに麻未がいた。

「じゃあ、邪魔者は退散しますか…」

駿はそう言って、病室を出て行く

「竜太君、俺ってそんなに魅力無い?優介君に振られてしまった!」

駿はそう言って、竜太におどけた笑顔を見せていた。

麻未はそんな駿を見て、笑っている…麻未の輝く笑顔…

病室のドアが閉まり、麻未は俺の傍までくると心配そうな表情で俺を見つめた。

麻未は笑顔を浮かべる…

「笑顔が引きつってるぞ…」

俺はそう言うと、麻未の両方の頬の肉を掴んで横に広げる

面白い、半魚人みたいな口…クククク

「心配するな、大丈夫だから!」

俺のその言葉に麻未は少し安心したのか、弱々しいく微笑んだ

「はい、これ…私が作ったブーケ」

麻未の手には小さな可愛いブーケが握られていた。

嬉しかった…このまま麻未を…この手に引き寄せ、抱きしめられたらどんなにいいか…

俺はブーケを受け取り、麻未の頬に触れる。

愛おしい麻未、瞳も…鼻も…この唇も…麻未の全てが愛おしい…

「麻未…ごめんな」

俺の心はガラスが割れる寸前のように震えていた。

麻未は何の事に対して俺が謝ってるのが分からなくて、キョトンとしている。

「俺たち…しばらく会わないほうがいいと思う…」

俺は麻未への思いを振り払いながら、唇を噛み締めてそう言った…心が痛い…

麻未は一瞬、驚いた表情を浮かべる…だけど、すぐに泣きそうな笑顔になった。

無理矢理な笑顔…

麻未の笑顔は悲しいくらい、痛々しかった。

「わかった」

麻未は何も聞かず一言そう言うだけだった。

この一言は何よりも辛かった…

麻未ならきっと分かってくれる…これは俺の勝手なおごりかもしれない…でもそう願うしかなかった。

「メールはしてもいいよね?」

麻未の声は震えていた…今にも砕けてしまいそうなガラスのように

俺はできるだけ微笑んで頷いた。

「わかった…今日は…帰るね」

麻未は震える声でそう言って俺に背を向ける…その麻未の手を握って引き止めたい…

俺は左手を右手で掴むようにして力一杯握り締める。

麻未の背中が少しづつ俺から離れていく…待ってくれ!って叫びたくなる!

でも今、それを声にしてしまったら、俺は麻未を放したくなくなってしまう…

麻未はドアの前で一瞬足を止める…俺は歯をくいしばり、言葉を飲み込んだ。

振り返りもせず麻未はドアの向こうに消えた行った…

俺は麻未から貰ったブーケを見つめ握り締める…

愛してる…麻未…麻未…


 ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ ∞ 


病室を出ると、そこには長谷川さんと黒崎さんが立っていた…

私は壁にもたれるように頭をつける…平気な自分を保つのが難しかった…

「麻未ちゃん、大丈夫?」

長谷川さんが優しくそう言って、私の肩に手をかける…

私はその手を思わず手で払ってしまった。

長谷川さんの優しさを無にしてしまった…

「ごめんなさい…」

ごめんなさい…

今の私には平気な自分を演じるだけの余裕が無かった。

私は長谷川さんたちを振り返りもせず歩き出した。

もう何か一言でも発してしまったら、自分の気持ちを抑えられなくなる…

私は急ぎ足で階段を駆け下りた、そして救急患者用の出入り口から出る…

その瞬間、心のたがが外れたように私はその場に崩れるように座り込んでしまった…涙が溢れるように流れる…

優介の前ではかろうじて涙は堪えていた…胸が苦しかった。

なぜこんなにも悲しいのか、こんなにも苦しいのか…

何か事情があるのっはわかってる…

その理由を話さないのにも事情があるって事もわかってる…

頭ではわかっている…だけど、だけど、心がついていかない。

優介の声を近くで聞いていたい、優介の手を握りたい、優介に触れていたい…

こんなに、こんなに…優介を愛してる…痛いほど自分の優介への気持ちを思い知らされる。


「よしよし…大丈夫か?」

そう言って、誰かが私の頭を撫でた…涙でグチャグチャになった顔を上げるとそこには長谷川さんの顔があった。

長谷川さんは私の前にしゃがみこんだ。

「優介は不器用だからうまく言えなかったんだと思うけど…あいつはあいつなりに考えて今は会わない方がいいって思ったんだと思うよ…あいつにとっても一番辛い選択だったと思うんだ…だからわかってあげて欲しい…優介も自分の事が落ち着いたら、いてもたってもいられなくて自分の方から会いにくるさ」

そう言いながら長谷川さんは、私の涙を拭ってくれる

「それまで、俺が彼氏になるてゆうのはどうかな?」

長谷川さんはそう言って、ニッコリと笑う

「駿先輩!優介先輩に言いつけますよ!」

後ろから黒崎さんが冷たい声でそう言って、軽く長谷川さんの頭を小突く!

「お前、先輩に向かってなんだその態度は!」

「先輩!?ああ!そう言えばそうでしたね!あまりの不甲斐なさに忘れるところでした!」

何だか、この二人のやりとりって可笑しい…

黒崎さんが私の目の前に缶コーヒーを差し出して、はにかんだ笑顔を浮かべる

「これでも飲んで元気出して!」

「お前こそ!優介のいない間に麻未ちゃんを狙ってるんじゃないの〜!?」

長谷川さんのその言葉に黒崎さんは鼻で笑って、全然相手にしてないようだった…

なんだか三人の中で一番年下の黒崎さんが一番大人に感じる。

二人のやり取りを見ていて、思わず私は笑っていた…。

「もう大丈夫…そうだね?…送っていくよ」

黒崎さんがそう言ってくれた…でも今日は一人で帰りたい気分だった…

「もう大丈夫です…一人で帰ります。」

「だけど…」

そう言いかけた黒崎さんを長谷川さんが止めた

「わかった…じゃあ、気をつけてね」

長谷川さんは静かに微笑んでそう言った。

私は二人に礼をして歩き出した…ふと足を止める、そして優介のいる病室の方を振り返った。

優介が見える事を期待したわけじゃない…ただなんとなく…

そして私はまた歩き出した。


黒崎さんから貰った缶コーヒーは冷たくて、私の泣いて火照った顔を冷やしてくれた。

夏の夜には珍しく、心地いい爽やかな風が吹いていた。


 













優介は麻未をしばらく自分から離すことを決意する。

自分とって一番、傍にいて欲しいって思ってる人を遠ざける…辛い決断。

それだけ麻未を大事に思ってるとゆう事。

麻未は優介の表情から何か事情がある事を悟ってはいたが、心配で傍にいたいと思う気持ちは抑えきれず、涙となて溢れ出した。

次回は優介主演で撮影中に映画に異変が!?

佐倉が優介に対して…!?

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