夜の街に笑顔のネオンが輝く
ついこの間、迷いに迷った繁華街…
今日は優介…なんてこの呼び方がまだ少し照れくさいけど…
優介が私を友達に紹介してくれるんだって…そうゆうのってちょっと嬉しい!
優介は私の手をしっかりと握って歩いてく…そして一軒の派手なネオンのお店の前に止まると、その店のドアを開いて私の手を引きながら中に入った。
中に入って驚いた!
ここはゲイバー!?なのね…
「いらっしゃ〜い!」
えっと、えっと、もの凄いケバい化粧の人が近付いてくる
「優介ちゃん、みんな来てるわよ」
と言って、私の顔を見てそのオカマさんがもの凄く驚いていた。
優介は店の奥に入って行く…
奥のボックス席に座っているのは…見たことある…前に優介の事を色々と調べてた時に、見たもの!!
一人は長谷川駿、もう一人は黒崎竜太だ〜!!!
写真で見たときよりもずっといい男に見える…ここに人気の俳優が3人も集まってるのよ…
ど、どうしよう…私はドキドキしちゃって、その場からついつい逃げ出しそうになって、思わず振り返ったら!
ゴン!!!
額を柱にぶつけて、その場に額を押さえてうずくまった。
イッタ〜イ…目の前に火花が散ったわよ…
「麻未…お前は何やってるんだよ!」
優介がうずくまってる私の所まで来て、腕を掴んで私を立たせる
「大丈夫か?」
そう言いながら、思い切り笑ってる…
またドジってしまった…
長谷川さんは大声で笑っていて、黒崎さんはニヤニヤしているのが見えた。
…トホホ恥ずかしい。
私は優介に連れられて、ボックス席の所に行き、オレンジ色の光の中に私が立った途端、長谷川さんと黒崎さんの顔が真顔になって、長谷川さんは持っていたグラスを落とした…。
「澄香ちゃん!?」
長谷川さんの口から、微かにその名前が飛び出した。
そうか…私が澄香さんにそっくりだからだ…
「だろう?似てるよな…俺も最初は間違えた…でも麻未は麻未だから」
優介はそう言って、長谷川さんの隣に座り、私を自分の横に座らせた…
長谷川さんも黒崎さんもそんな優介の姿を見て、少し驚いているようだった…。
「何だよ…その顔?俺の顔に何かついているか?」
優介は長谷川さんと黒崎さんにそう言って、笑っている
「いや…その…なあ?」
長谷川さんはそう言葉を濁して、黒崎さんと顔を見合わせる
「お前達の言いたい事ぐらい分かってる…こうやって澄香の話を笑って話してる事にビックリしてるんだろう?…そうだよな…そんな事、俺自身が一番驚いてるよ…」
優介のその言葉に、長谷川さんと黒崎さんが私の方を見る…
タイプは違うけれど二人のいい男が私を見てるのよ…それだけでドキドキしちゃうわよね…
さっきのケバいオカマさんが近付いてきて、私と優介の間に無理矢理座る…
「リ、リンさん!?なんでそこに座るかな?」
優介が不機嫌な顔でそう言った
「あら、私の優介ちゃんが他の女の横なんて許しがたいわ!」
なんだか、この人おもしろい…
「あなたが麻未ちゃんね?まあちょっとはいい女ね、私には負けるけど…ウフ…私の名前はリン、みんなからはリンさんとかママって呼ばれてるわ、好きに呼んでね」
リンさんって…あの時の…私が襲われた時に裏で声をかけてくれた人?
「あ、あの、あのリンさん…この間は」
そこまで言った時、リンさんは私の口に人差し指を当てて、ウィンクした
「無事ならそれでいいの…それで…ね!」
そう言って、リンさんは私の手を軽く握った
リンさんは優介の体に身を寄せる
優介はうっとうしそうに、リンさんを拒絶してる…
私、リンさんの事、とっても好き…この人といるとなんだか心が安らぐ
優介がこの場所を選んだのが分かるような気がした。
「ねえねえ、麻未ちゃん、なんでこんな自己中で融通のきかない優介を選んだわけ?」
長谷川さんが身を乗り出してそう聞いてきた
「えっと…えっと〜…瞳が悲しくて淋しそうだったから…」
私のその言葉に一瞬、その場が時間が止まったように感じた…
長谷川さん、黒崎さん、リンさん、それぞれが意味ありげな表情を浮かべ、そしてみんな優しい笑みを浮かべた…。
「…まいったね…まいった…優介、お前が麻未ちゃんに惹かれるの分かる気がする、さっきのあの大ボケに加えて今の言葉…俺も彼氏に立候補したいくらい…」
長谷川さんはそう言いながら、私にウィンクする…
「駿先輩、もう酔ったんですか?言葉が過ぎますよ!」
隣の黒崎さんが冷たい口調でそう言った。
「竜太…冗談に決まってるだろう?」
「俺が今、言ったのも冗談ですよ」
黒崎さんのその言葉に長谷川さんと優介は可笑しそうに笑っている…とても楽しそうに。
「お前が言うと冗談に聞こえないんだよ…」
優介はそう微笑みながら言った。
「優介…いい女見つけたな!」
長谷川さんのその言葉に優介は満面の笑みを浮かべる
「だろう?…俺もそう思うよ」
優介が照れもせずにそう言った言葉に、長谷川さんは大声で笑い、黒崎さんは鼻で笑う…そして一人だけ不機嫌だったのはリンさん
「優介ちゃん、あまりハッキリ言い過ぎるのは問題よ!世の中には隠しておいた方がいい事もあるんだから…私の心はハートブレイク…」
リンさんの言葉にみんなが大笑いする。
「だけど、リンさんの言う事も一理あるぞ…だからお前は敵を作りやすいんだ」
長谷川さんは優介の肩に手を回しながらそう言った。
「長いものに巻かれろ精神ってゆうのは、どうも苦手なんだよな…自分が納得すればそりゃあ嫌な事だってできるよ…自分のやった事が間違っていれば謝るし…だけど、金や権力で間違いを正しい事にしてしまうのは納得いかないだろう?…なあそう思うだろう?竜太」
優介はリンさんと長谷川さんにそう言われたものだから、黒崎さんにそう問いかけた
「優介先輩、俺は先輩のその考え方は好きですよ…だけどそうじゃない人の方が圧倒的に多いのも事実で、誰でも自分が一番可愛いですから、俺も自分の身にそうゆう現実が振りかかったら、たぶん俳優を辞める…当然俺も自分が一番可愛いですから」
黒崎さんはそう言いながら笑いを吐き捨てるようにする
「ほら、お前がそんな事言うから…竜太が辞めるなんて軽はずみな事を…」
長谷川さんが優介の頭を軽く叩き、黒崎さんの方をトントン叩いていた…
この3人て面白い…長谷川さんは雰囲気を読むのがうまくて、順応性があって柔らかいタイプ、黒崎さんは物静かで冷めてるけど周りを良く見ていて冗談をいわない真面目なタイプ、そして優介は自分の意思をきちっと持っていて、それを主張しないといられない熱血タイプ…
でもこの3人の間には俳優仲間ってゆう枠は感じない…いいな〜…こんな友達って
「もう!男同士で盛り上がっちゃって、つまらないわね…麻未ちゃん、女同士で仲良くしましょう!」
リンさんはそう言って、ロックのウィスキーをガンガン飲んでる…大丈夫なのだろうか…
さっきからかなり飲んでるように見えるけど…
「麻未ちゃん、私の事が嫌い?」
リンさんはそう言って私をすわった目で見つめる
「いいえ、私、リンさんの事大好きです!」
私の言葉に優介と長谷川さんと黒崎さんが一斉に顔を見合わせる…
何か…悪い事言ったかな???
そう思った次の瞬間、リンさんがいきなり泣き出した、しかもかなり大声で…
な、なに?ど、どどどどうしたの?
私には何が何だか分からなかった…
リンさんの手が伸びてきて、私の顔を動かないように掴む…
な、何?
そしたら…リンさんの顔が私の顔に近付いて来て!!!
私の唇にリンさんの唇が〜…!!!寸前でなんとか唇は死守した…
だけど、頬にリンさんのキスマークがついちゃった…ハハハハハ
優介はもの凄い剣幕で、リンさんに殴りかかろうとする!
それを長谷川さんと黒崎さんが必死で止めていた…なんだか笑える…
そんな3人を気にもせず、リンさんは私の膝にもたれかかる…
「ウゴォォォォ…」
え!?何?
いきなり私の膝の上からイビキが聞こえてきた
それはリンさんだった…
寸前まで殴りかかろうとしていた優介も力が抜けて、その場にうなだれる
「ラーメン…一杯…」
リンさんの寝言だった…
私達は4人で顔を見合わせて、大笑いした…。
温かくて、穏やかで、楽しい時間だった…
長谷川、黒崎は澄香を亡くしてからの優介を知ってるいるだけに、優介の明るい姿に驚いた。
その切っ掛けになったのが麻未だと知り、麻未の人柄に触れ、その意味に納得した。
次回はあの竜巻男が優介と麻未の前に現れる…