幸せの代償
ピンポ〜ン!ピンポン!ピンポン!ピンポン!
うるせぇな〜!!もう…こんな朝っぱらから誰だよ…
時計を見ると、朝7時だった…
今日は昼まで寝ている予定だったのに…
俺はショボついた目を擦りながら、インターホンのカメラを見る
映っていたのは、佐倉だった…
今日の仕事は昼からだろう?…なんでこんなに早いんだよ…
俺はうんざりしながらドアを開けた。
佐倉は化粧もしない顔でそこに立っていた…
「どうゆう事よ!!!」
佐倉が凄い剣幕で怒って、部屋にドカドカと上がる…
そんなにまくし立てられても、何の事だか…さっぱりわからなかった…
佐倉は俺の目の前に雑誌を広げて見せる。
「これは、どうゆう事なの!!!」
その雑誌には、海辺で俺と麻未が抱き合っている写真!?
あの時の写真が載っていた。
俺の頭の中には、すぐに麻未の事が浮かんだ…俺はいい…だけど麻未は違う…
頭の中は麻未の事でいっぱいだった…麻未に危害が加えられたらどうしよう…
それだけは避けなければ!
俺は慌てて脱衣所に入って、干してあった洗濯物から白シャツとジーンズを引っ張り、それを着て玄関へと急ぐ!
「どこへ行くの!」
佐倉の激しい声が聞こえてくる
俺は答えるのも面倒で黙っていた
「行かせない!どうせ女の所でしょう?いいかげんにしてよ!今行って、また写真を撮られたりしたらそうこそ取り返しがつかないでしょう?」
取り返しがつかない!?それはどうゆう事だ!?
麻未に何かあってからでは…それこそ取り返しがつかないんだぞ!!
そうは思ったが、口にするのはやめた…言ってもたぶん無駄だから…
「今日、記者会見を開くわ!…会社の方針としては熱狂的なファンに抱きつかれただけだと…そうゆう事で押し通す事に決まったから!」
佐倉は俺の前に立ちはだかってそう言った。
「何だよ…それ!?…俺の意思は!?俺の気持ちは!?無視かよ!!!」
俺は佐倉に激しく言い返す。
「そんなにその女が大事!?仕事より!?…いいかげん大人になりなさい!!」
何だよそれは…俺はいったい誰だ!?誰のものだ!?…俺のものじゃないのかよ…
沸々と悔しさと怒りと悲しみが入り乱れて湧き上がってくる…
俺は拳を握り締めて、どうにもならない気持ちを壁に叩きつけた!
何度も何度も…手に血が滲む…
「やめて!!」
佐倉が俺の腕にしがみ付いて、俺の手を止める…
「俺には…あいつが必要なんだ…大事なんだ…」
無意識的に俺はそう言っていた…。
自分の言った言葉に一番驚いたのは自分かもしれない…
俺の中の気付いていなかった気持ち…いやもしかしたら、澄香の存在を俺の中から消したくなくて、違うと言い聞かせていただけかもしれない…。
「女の所に行くのは後にしてもらうわ!これからすぐに会社に行って、社長とこれからの対策について話し合うことになってるから!嫌でも納得してもらうわよ!」
佐倉はそう言うと、俺の手を握って引っ張る
…仕事…か…納得せざるおえないのか…
そんな自分に対して腹立たしさを感じていた…。
俺は佐倉に促がされて、会社へと向かった…
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神楽さんと一緒に海に行ってから一週間…
仕事の合間なんかにメールを送ってくれる…
たわいない話ばかりだったけど、メールをくれる事が嬉しかった…。
それにしても…今日は朝からおかしい…
店の前を通る人達の中に私の方を見て指差したり、クスクス笑ったりする人がいる…
何故だろう?
私はそんな人たちと目が合うのが嫌で、ひたすら下を向きながら店前を掃除していた。
「ちょっと!あんた!!」
そんな声が頭の上から聞こえてきて、私は顔を上げた。
そこには高校生くらいの女の子が3人立っていた…
「この写真の女って、あんただよね?」
女の子の一人が私の目の前に雑誌を開いて、私に見せる…
あ!?…私は言葉を失った…あの時の…海辺での写真…
「やっぱり…よくも私の優介を!!」
女の子は私の顔つきから悟ったのか、そんな事を言った。
はい!?私の優介???その言葉に私は一瞬こめかみにピクピクと怒りを感じる。
そう私が思った瞬間、その子の平手が私の頬に飛んできた!
「…つっ!」
口の中に血の味が広がる…
私が引っ叩かれた反動で下を向いていると、今度は髪の毛を鷲掴みされて、路上に叩きつけられた…
…ものすごく痛かった…それと同時に怒りを感じる…
でも多勢に無勢…1対3…勝つ自信は無い…
そんな事を私が思ってるうちに、女の子達は店先に置いてある花の入ったバケツをひっくり返す!
「やめて!何するの!?」
私は女の子の腕を掴んで引っ張って、吹っ飛ばした…
まずい…吹っ飛ばしてしまった…
外の騒ぎに店長が気付いたらしく、店の奥から外に出てこようとしていた…
その時、私は一人の女の子に襟元をつかまれ、唾を吐きかけられて…怒りは頂点に!
私は思わず、その子の顔に頭突きをしていた…女の子はその場に顔をおさえて座り込む…
他の2人の視線が一気に私の集まる!
まずい!!!
「逃げなさい!!」
その時、店長の声が響き渡った!!
私はその店長の言葉に反応して、街の中を走り出した…
まだ足には痛みが残っている…だけどそんな事を気にしてる余裕は無かった…
私は後ろを振り返らずにひたすら走る!
「待て〜!!」
後ろから怒鳴り声が聞こえてくる!
その時だった…私の視界ギリギリに一人の男の人が入ってくる!
そして私の手を握り締めた!
え!?何!??
「こっちだ!」
その男の人は私の手を引っ張りながらそう言った…
私はワラをもすがる思いで、その男の人に従いながら走った…。
細かい路地をいくつか曲がり…古びれたスナックの裏側へと飛び込んだ!
はあ、はあ、はあ、はあ…凄い息切れ…年を感じる…ハハハまだ24なんだけどな…
私は、手を引いてくれた男の人の顔を初めてまともに見た…
金髪で耳にピアス…一件、遊び人風の人だった…
もしかして私より若いとかね…そんな印象を受ける。
男の人は私の方を見て、ニッコリと笑う…
か、可愛い…思わずそんな事を思ってしまった。
ちょっとヤンキー風だと思ったけど、その笑顔でそんな雰囲気はどこかへ消えてなくなってしまっていた…。
とにかく逃げ切れて良かった…
私はそう心を撫で下ろした。
優介はやっと自分の気持ちに気付いた。
自分のおかれている立場と麻未とゆう存在の狭間で苦しむ優介…優介は麻未に何をしてやれるのか?
一方、麻未は逆恨みを買い、追いかけられるはめに…そこへ一人の男が現れた!
この男、麻未にとってどんな存在になっていくのか?
次回、麻未を助けた金髪の男の正体が明らかに!
突然、その男が麻未に向かって言った言葉とは?