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名演技に笑顔で喝采を

どうしていいのかわからなかった…

とにかく抱きしめたかった…神楽さんの痛みに苦しんでる心を抱きしめてあげたかった。

神楽さんの心と私の心が共鳴するように、私の頬を涙が伝って落ちる。

自分でもなぜ自分が泣いているのかわからなかった…


何に対しての苦しみなのか…何に対しての悲しみなのか…

私にはわからない…ただ神楽さんの辛さが私の体に伝わってきて私の心を揺さぶる

私は心の底から神楽さんを守りたい…そう思った。

何ができるかわからない…ただ神楽さんを笑顔にしてあげたい…そう思った。

同情じゃない、ただひたすら大切で大事で傍にいることを許されるのなら、傍にいてあげたい、この人の傍にいたい…そう願った。

私はこの人を愛してる…そう愛しているんだ…

自然とそんな思いが心の奥底から湧き上がり、零れてゆく…


時間は私達の周りをゆっくりと過ぎて行った…


クククク…

私の胸元から微かに鼻声の笑い声が漏れてくる。

な、何!?

「騙されてやんの!…どう俺の涙の演技最高だったでしょう?」

神楽さんのその言葉に私は咄嗟に抱きしてめいた腕の力を緩めて、神楽さんから離れた。

神楽さんはケラケラと笑っていた…

だけど、私にはその笑い声がなぜか泣き声にしか聞こえなかった…

嘘が下手ね…

「麻未の胸って以外にちっちゃいね」

神楽さんはそう言い、自分の胸の所に手で胸をかたどって、一人でケラケラ笑ってる。

名演技だよ…人に心配かけまいとする演技、悲しいくらいに名演技だよ。

今、私にできる事…

「私の胸はそんな小さくないわよ!」

私はそう言って、思い切り胸を張ってみせる。

神楽さんが自分を奮い立たせようとしている、これは私のおごりかもしれないけど、私に心配をかけまいとしている…

それなら…私もできるだけ笑顔でそれに答えたい。


「胸はちっちゃいけど、麻未の心は温かくて大きいな…」

神楽さんは私を真っ直ぐに見つめて優しく微笑んでそう言った。

や、やだ〜…そんな事言われたら、また泣いちゃう〜…涙がポロポロ落ちてくる。

神楽さんは私の頭をクシャクシャと撫でた…。


フッと顔を上げるとすぐ目の前に神楽さんの顔があった…そして頬の傷…

自然と私はその頬の傷をなぞるように触っていた…

「つっ!」

神楽さんが痛そうに顔を歪める!

え!?どうしよう!

「ごめんなさい」

私がそう言うと、神楽さんは自分の頬の傷を指差した。

「ここに…麻未がキスしてくれたらすぐに治るかも!?」

へ!?思わず私は固まった…そして時間差でボッと顔が耳まで熱くなる!

きっと、私の顔、真っ赤なトマトみたいになってる…

「麻未ってホント可愛いな…」

そんな事を言われて、私はもうパニックを起こしていた。

嬉しすぎ!?恥ずかしい…もうどうとでも言って下さい!!!

この時の私はアタフタとしてかなり滑稽な仕草をしていたと思う…


「そういえばさ〜…今日は怒らないの?」

へ!?何が?

私は神楽さんのその言葉の意図が分からずキョトンとしていた。

「俺、さっきから麻未って呼び捨てにしてるんだけど…麻未…麻未?…麻未!?」

神楽さんは茶目っ気タップリの笑顔でそう言った。

そう言われて初めて気付いた…確かにそうだった…でもなんだかその麻未って呼ばれるのが心地よく感じる…

前の時はあんなに違和感を感じたのに、今はそう呼ばれるのが素直に嬉しいって思える。

「もしかして、俺に惚れちゃった?」

神楽さんはそんな事を軽々と言った…たぶん冗談のつもりだったんだろうな…

でも私はその言葉に頷いていた…自然と頷いてしまっていた…

そんな私を見て、神楽さんは驚いた表情を浮かべて何も言わない…

答えは必要なかった…今こうして神楽さんの傍にいれることが幸せだから…

そして神楽さんが笑ってくれたことが幸せだから…

今はそれ以上は何もいらない…

私は心の中でそう思っていた…いやそう言い聞かせていただけかもしれない…

実際は神楽さんの本当の気持ちを知るのが怖かっただけかもしれない…


神楽さんは数秒の間、真剣な表情で私を見てたけど静かに私から視線をそらす。

「帰ろうか」

一言そう言うと、私と腕を組むようにしてまた体重を支えてくれる…

私の片思い…

澄香さんに似てるだけの私に興味を持ってくれて

私ではなく私の向こう側にいる澄香さんを見ていた…それだけでもいい…

これもたぶん自分にそう言い聞かせてるだけ…


神楽さんは私のスピードに合わせてゆっくり歩いてくれる…

わざともっとゆっくり歩いちゃおうかな…少しでも神楽さんと一緒にいれるように…

そんな事を思ったりしたけど、時間とは無常なものであっとゆう間に車についてしまった…

神楽さんはゆっくりと私を車に乗せ、自分も車に乗った。


車は動き出して家路に向かう…

帰りの車の中、神楽さんは自分の仕事の話とか、これからの夢の話をしてくれた。

海辺での話には一切触れなかった…。


神楽さんは、私を部屋の前まで肩を貸して送ってくれた。

最後に「またな!」って言って、私から流れるように視線を外して背を向けて離れていく…


「またな!」その言葉は私にとってとてもとても嬉しい言葉だった…

まだ終わりじゃないって、会ってくれるって事だから…


そう思っていていいんですよね…


私は願いにも似た気持ちを心の中で呟きながら、車を見送った。


麻未にとって優介の存在は

何よりも大切なものだと再確認する

片思いだと思っている麻未だが

はたして優介の気持ちはどうなのか?

次回は麻未が優介を抱きしめた事がスキャンダルに!

熱烈なファンは時として怖い存在になる…


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