勘違いから生まれた出会い
人々が行きかう雑踏の中、いきなり私の腕を掴む手があった!
驚いてその手の持ち主を見上げると、切れ長の眼に高い鼻・・・端整な顔立ちの男性が私を見つめていた。
見たことも無い男性だった・・・
男性は私の腕を引き寄せ、そのたくましく広い胸に私を押し当てるように抱きしめる。
ちょ、ちょ、ちょっと待って!?・・・いったい何?
いったい何が起こってるのか・・・私は理解できずに混乱していた
「・・・会いたかった」
男性は震える声で微かにそう言った。
会いたかった!?・・・私に?・・・おかしい・・・私は貴方なんて知らない・・・
私は男性の腕の中で体をよじり、無理矢理その腕からすり抜ける。
男性は私の顔を揺れる瞳で見つめ・・・そしてあ!?っと何かに気付いたような表情を見せて、顔を赤らめた・・・。
「・・・ごめん」
男性は一言そう言うと伏せ目がちに視線を落として、私に背中を向けて歩いていく・・・悲しく淋しそうな瞳をしていた・・・。
私はその男性の背中を見えなくなるまで見つめていた・・・。
私はその一件を切っ掛けにして、その男性の事が忘れられなくなっていた・・・。
あれからどのくらいの日にちが経ったのだろう・・・
私はあの日から、仕事の帰りにかならずあの男性と会った道を通って帰っていた。
もしかしたら!?・・・なんて淡い期待を抱きながら・・・だけどあんな偶然がまたある可能性なんて・・・それこそ低い・・・。
私はそんな事を思いながら、通りにある小さな喫茶店にはいった・・・。
帰宅時の一つの楽しみになっていた・・・ここで決まった席に座り、外の人通りを見ながら紅茶を飲む。
お店の人ともすっかり顔なじみになっている・・・紅茶1杯で2時間ねばる女・・・嫌がられるかしら?そんな事を思いながら外に目をやる
あの淋しい瞳が忘れられない・・・外を歩く人達の中にその瞳を追い求める自分に気付き、私は苦笑した・・・。
何をしてるんだろう・・・そんな事をポツリと思った・・・。
あ!雨だ・・・外は雨が降り出した・・・。
またダラダラと時間を過ごしてしまった・・・私は席を立ちレジへと向かう。
喫茶店の扉を開けると、外は本降りになっていた
私って用心深い性格だから、いつも傘を持ち歩いてるのよね・・・私は折りたたみの傘を鞄から出す・・・。
その時!私の隣に雨宿りをするために人が一人走りこんできた・・・私は隣にいる人の顔をゆっくりと見上げる・・・・
え!?・・うそ〜・・・え!?ちょと待って!!!
私にはその顔がどう見てもこの間の男性にしか見えなかった・・・。
男性はゆっくりと私の方を向く!
咄嗟に私は下を向く!やだ!!下向いちゃったよ・・・この出会いを待っていたのに・・・なにやってるのよ!しっかりしなきゃ!・・・私は自分にそう言い聞かせ、もう一度男性の顔を見上げた・・・
あ!目が合っちゃったよ〜!!!ど、どうしよう!!
「ど、ど、どうも」
しっかりしろ!
「待ってました・・いや・・違う」
何言ってる!?
「え〜・・・っと、愛してます」
頭がパニック!
「ごめんなさい!」
ギャー!言葉が暴走!!!
私は男性に傘を無理矢理押し付けて、土砂降りの雨の中、その場を逃げるように走り去った。
もう駄目だ〜・・絶対に変質者か何かと勘違いされてるよ〜・・・・
私は自分の口から出た言葉一つ一つを思い出していた。
咄嗟に出た言葉・・・・愛してます・・・・なんであんな事言っちゃったんだろう・・・。
まさか・・・まさかね・・・だって一目見ただけよ・・・そんなはず無いわよ・・・。
私はジグソーパズルを組み合わせるように自分の気持ちを整理していく。
あの日のあの時から、忘れられなくなっていた・・・。
そしてあの人と会いたくて、毎日のようにあの道を通った・・・・気付かないうちに気なって・・・気になって・・・好きになってた?・・・・そうか・・・自問自答しながらあの男性に対しての自分の気持ちに納得する。
一目惚れなんて・・・あるわけがないと思ってたのに・・・。
フ・・・ファ・・・ファファ・・・・ファックション!
雨に濡れたせいか・・・大きなクシャミが出た。
初めて一目惚れをした事に気付いた自分とこのクシャミになんだかとても笑えた。
風邪引いちゃう、早く帰らないと・・・・私は足早に家へと急いだ。
私はその日の夜から、風邪なのか恋わずらいなのか・・・熱にうなされ3日間寝込んでしまった。
初めての書いたものなので、雑なところもあるかと思います。
どんな事でもいいので感想やご意見を書いていただけたら嬉しいです。
よろしくお願いします