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ゴブリンレンジャー(仮)に初手を潰された俺は、しかしそれで諦めたりはしなかった。っていうか、チートなめんな。


地面に手をついて土魔法を発動させる。

ボコボコと地面が盛り上がり、それが大人の全力疾走よりも速いスピードでゴブリンの群れに向かっていく。

当然ゴブリンレンジャーはそれをキャンセルするために土の盛り上がっている先端に移動して杖の先端を地面につける。

その瞬間、ゴブリンレンジャーの頭が胴体がズルリとずり落ちた。

ゴブリン達は目の前の光景が信じられなかっただろう。

ゴブリンレンジャーは自分の身に何が起きたのか理解できなかっただろう。

だが、種を明かせば簡単なことだ。

素早く動き回るゴブリンレンジャーの足止めと、魔法が触れればキャンセルされる厄介な吸魔石を自分の思った位置に留めるためにこれ見よがしに土魔法を撃って、それに気をとられている隙に風魔法で首をはねた。それだけ。

魔法使いが二人いればできるし、俺みたいに魔法の同時発動ができるなら一人でも問題ない。

吸魔石自体は未だにそこにあるので範囲魔法が撃ちづらいが、どのみちオルドの居場所を特定できなければむやみに撃てないので条件はそれほど変わらない。


「さあ、せんめつのはじまりだ。」


無邪気な顔に似つかわしくない物騒な言葉とともに蹂躙が開始された。


◇◇◇


部隊の後方にいたある一匹のゴブリンはその光景を信じられない思いで見ていた。

この部族最速にして守りの要、魔封じの石を持ったゴブリンがあっさりと魔法で殺された。

そもそもなんだあの赤子は!

途中で防いだ光魔法も、こちらの右翼が一部とはいえ一瞬で削られた。

次いで放った土魔法はあっさりと防ぐことができたが、首をはねたのは風魔法か?

確かに人族の中には並外れて強いやつもいるが、あれは赤子だぞ?

とはいえ目の前に脅威がいるのは間違いない。魔封じの石がこの場にある以上、範囲魔法は撃ちづらいはずだ。あれは石の周囲の魔法もかき消してしまうからな。

そうなると単発での攻撃にならざるを得ないから、すぐにこちらに攻撃が届くことはないだろう。

俺は逃げることに決めて、隣にいる親友に逃げるぞと声をかけようとして肩を掴んだ。

しかし、俺は声をかけられなかった。

そこにあったのは頭を失った親友だった物だったからだ。


(もうこの位置にまで攻撃してくるなんて冗だ・・・・・・)


そのゴブリンの最期に見た景色は、光に包まれたただただ白い風景だった。


◇◇◇


前方のゴブリンの首を風魔法ではねながら、ゴブリン部隊の後方に火や水、光魔法を撃ちこむ。

光魔法を利用して光をねじ曲げ、普通なら視界の通らない場所まで見れるようにしたので誤射の心配なく撃ちまくれる。

確実に周辺にオルドの姿がないことを確認できたポイントには光魔法でゴブリンの頭上から極太ビームで丸ごと消し飛ばしたりしながら視界を確保していく。

あるものは瞬く間に全身を焼かれ、あるものは顔面を覆う水の玉に溺れ、あるものは一瞬の光の後に消滅する。

そんな地獄絵図が目の前に展開していた。

やってるの俺だけど。

しばらくそうしていたが、オルドの姿はここには無かった。


「モーリス。オルドここにはいないからもっとおくさがそう。」


「あ、ああ」


掠れるようなモーリスの返事だったが、この辺りは静かだったので聞き取るには十分だった。

先程までうめいていたゴブリン達も既に息をしているのは一匹もいない。

この辺りにあんなにもゴブリンがいたということは下手するとオルドはもう・・・・・・。

一瞬そんな考えが頭を過るが、それをすぐに打ち消して思考を切り替える。

とはいえどれだけポジティブに考えても一刻を争う状況であることには変わりはない。のんびりと構えて救えるはずの者を救うことが出来なかったなんて笑い話にもならない。

ゴブリンどものせいで余計な時間をくった。これ以上モーリスに気を使ってやる(いとま)も惜しい。

まあ、ゴブリン自体は接敵から一分足らずで潰したので、時間的にというよりは状況的にのんびりしていられなくなっただけだが。

というわけで、モーリスにも俺が普段浮かぶのに使っている重力魔法をかける。

さっきまでのモーリスは自分で動くことでどうにか最低限の冷静さを保っていたが、俺がゴブリン部隊を瞬殺したのを目の当たりにして焦燥感とかいろいろぶっ飛んだみたいなので、パニックを起こす前にとっとと行動を起こす。


「え?お?」


「さっきのたたかいのおかげでよゆうができたからモーリスもはこぶ。」


半分嘘だが。

とはいえ、さっきの戦闘中に『暗視』スキルを手に入れたので余裕ができたことも事実だ。


◇◇◇


モーリスとともに飛び続けて十数分。


「モーリス。なにかきこえる。」


モーリスに声をかけて止まる。

モーリスの飛行をコントロールしているのも自分なので止めるのにいちいち声をかける必要もないのではあるが、そこはきちんと連携をとっておかないとな。

連携の不備が原因でミイラ取りがミイラになるなんてのは笑えない話だから。


音の元を探る。

『気配察知』にはほとんど反応がないが、確かに何かいる。

こういう場合に考えられるパターンはふたつ。

ひとつは『気配察知』をごまかすスキルを使用している場合。

もうひとつは今にも死にそうな状態という場合。

周囲の警戒をしながら慎重かつ素早く音の元に近づいていく。

すると、大きな木の裏側にうろがあるのを見つけた。ちょうど背の高い草が覆い隠していて、そう簡単には見つけられそうにない隠れるのに適した場所だった。

その中から掠れた息づかいが聞こえてきた。

正直、『聴覚強化』でその息づかいに気付かなければ見落としていたに違いないと言えるほどわかりづらいものだった。

そしてそこにいたのは・・・・・・


「オルド!」


瀕死の重傷を負ったオルドだった。



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