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一ヶ月が経った。
ギルドの入り口に『転移』で戻る。
「ヒロ坊おかえり。」
「ただいま、まりあさん。」
ギルドで待っていてくれたマリアさんに、自分の声で返事をする。
毎日の訓練の結果、たどたどしくはあるが少しずつしゃべれるようになってきた。
「討伐証明部位を確認します。・・・・・・確認できました。これでヒロちゃんはFランク冒険者ですね。」
受付嬢―シャルロッテさんからランクアップを伝えられ、順当に上がっているランクに思わず笑顔になった。
◇◇◇
ひと月前のあの日、転移で森に飛んだ俺はポポロ草と依頼を受けていた薬草を採ると、ゴブリンを何匹か間引いて再び転移でギルドに戻った。
そこは突然消え、そしてまた現れた俺に騒然としていた。
どうやら『転移』は一般的な魔法ではなかったらしく、このギルドの擁する魔法使いのトップですら使うことはおろか聞いたこともないらしい。
最初に転移してきたときには『気配遮断』も使用していたので気付かれなかったから騒がれなかっただけのようだ。
まだ歩けないので浮いていたこともあって知らないうちに『座敷わらし(ベビーゴースト)』なんていう二つ名が付いたりもした。
それはともかく。
その後、街の案内はアイリスさんにしてもらい、マリアさんから継続的に授乳することで当初の問題は解消した。
食はマリアさん。衣服は討伐した魔物の毛皮を自分で適当に作り、住居はギルドマスターの厚意でギルドの一室を無償で貸してくれることになったので問題がなくなり、アイリスさんの案内のおかげで街に俺の存在も周知できた。
時折適正ランク外魔物を討伐して資金を稼ぎ、それによって不利益を被るであろう冒険者達には大物を狩った後には酒場で奢る。
・・・・・・そんなことをしていたからだろうか、ベビーゴーストという二つ名に座敷わらしという意味合いが生じたのは。
たしかにギルドに住み着いているし、ギルド職員や冒険者達は広い意味で家族と呼べるかもしれない。
討伐の難しい魔物も狩ってくる上、ランク外ということで依頼報酬も発生しない。
その分素材の卸値が下がり、結果として通常より安価で良いものが買えるようになる。
装備の充実によって冒険者の戦力が底上げされ、怪我や死亡が少なくなることで、戦力の損失を抑えつつそれぞれが強化されるという好循環を生み出しているので、それも座敷わらし効果かもしれない。
ギルドや冒険者に対してこのひと月である程度俺は信頼するようになっていた。
それはこんな異質な俺をすんなりと受け入れてくれたからだ。
ギルドマスターの意向に救われた部分も大きい。Sランクの彼が率先して受け入れたからこそ今の俺があると言っても過言ではない。
それに、ギルドマスター個人だけではない。
冒険者達も、最初俺に抱いていたのは畏怖や猜疑心だったかもしれない。けれど、彼らはいい意味で単純だった。
力があり、仲間(冒険者)を大事にする俺をすぐに受け入れてくれた。
もちろん、全員が全員俺を受け入れてくれたわけじゃない。けれど、大抵そういうやつは元から他の冒険者と折り合いが悪かったり、悪い噂が聞こえてくる者達だった。
俺を受け入れてくれた冒険者達を信頼し、そんな俺を彼らも信頼してくれた。
気付けばこのたった一ヶ月という短い期間で大事な相手だと―家族のようだと思えるようになっていた。
天涯孤独で異世界に放り込まれた俺に、早々に家族と思える存在ができたのは嬉しい誤算というやつだろうか。




