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遅くなって申し訳ない。


※12/1 最終行に変更と追加を行いました。

翌日、若干寝過ごした俺はギルドに来ていた。昨日は暗くなってから随分動いたからな。赤ん坊的にはハードワークだった。

そんなわけで現在の時刻は午前九時。


「おはようございます。」


周囲の冒険者やギルド職員にあいさつをする。

あいさつはコミュニケーションの基本だよね。

ちょうどそこへ地下の訓練場から上がってきた―――オルドに出くわした。


「お、ヒロか。おはよう。昨日はありがとうな。借りは必ず返すからな。・・・・・・すぐには無理だが。」


「おはようございます・・・・・・くんれんじょうでなにを?」


「そりゃあ、訓練に決まってるだろう?カインに頼んで稽古つけてもらってたんだ。」


「ねえ、モーリス。オルドどこかぐあいがわるいの?それともあたまうっておかしくなったのかな?」


モーリスはただ苦笑していた。


「ヒロ。気持ちはわかるけどな、昨日のことでさすがに俺も考えを改めたんだよ。

死にかけたことで自分がただ甘えてるだけだったって理解できたんだ。

本当は・・・・・・随分前からわかってたことだったんだ。それを俺は今の今まで認めることができなかった。

意地を張って見栄を張って。それで結局死にかけて。一体何をやってるんだって話だよな。

俺が冒険者になろうと思ったのは、モーリスが俺なんかに憧れてくれたからなんだ。

いじめられてたモーリスをたまたま助けて、それからモーリスは俺を慕ってくれるようになった。

俺はそれが嬉しくてな。もっといいところを見せてやろうと思って、それで冒険者になった。」


そうして語られたのはオルドとモーリスのパーティー結成秘話だった。



モーリスはオルドが冒険者になったのを知るやいなや、憧れのオルドと肩を並べたくてすぐに冒険者になった。

オルドにとって・・・・・・いや、二人にとって不幸だったのはモーリスの技量がすぐにオルドに追いついてしまったことだ。

それはオルドと早く肩を並べて戦いたい。お互いが背中をあずけられる存在になりたいと、モーリスが懸命に重ねた努力の賜物だった。

しかし、その努力をモーリスはオルドに見せなかった。

それはモーリスなりの見栄だった。オルドは確かに憧れる対象だ。けれど、同じ歳でもある。だから必要以上にカッコ悪い姿を見せたくはなかった。


オルドも努力はしていたが、なまじ元から力があった分、慢心してしまっていた。

そんな状態のオルドに、努力してい(るように見え)ないモーリスがあっさりと追いついた。

オルドは焦った。このままでは『モーリスが憧れてくれたオルド』という存在が幻滅されてしまう。

モーリスにとって『オルド』という男は頼れる兄貴分でなくてはならない。常に羨望の眼差しを受けるような、そんな男でなくては。

そうだ!先輩らしく振る舞おう。

そう考えてモーリスを引き連れて森でゴブリンを狩る。

モーリスにとっての英雄であるために、普段使う槍ではなく、英雄の象徴である片手剣で。

得意の火魔法で赤熱した槍でチクチク刺して相手を弱らせていくようなみみっちい戦い方ではなく、派手に炎を纏った片手剣で一刀両断にする。


「ははは。どうだモーリス。俺はすごいだろう?」


そう。俺はすごいんだ。すごいんだよ俺は。

同期のやつらが次々にFランクに上がっていく。

ふ、ふん。俺はモーリスを守りながら戦っているんだ。本当の実力はお前らよりずっと上なんだよ。なんてったって、俺はモーリスの英雄だからな。

そうだ、俺は英雄なんだよ。俺がまだGランクなのはら他のやつが俺に嫉妬してランクを上げさせないようにしているだけだ。

俺が英雄だからな。


◇◇◇


モーリスは初め、炎の剣でゴブリンを容赦なく叩き斬るオルドに羨望の眼差しを向けていた。

やっぱりオルドは僕の英雄なんだ、と。

けれど、しばらくしてゴブリンしか狩らないオルドに疑問を持ちはじめた。


「そ、それは、お前を危険な目にあわせないためだ。いいか、そりゃあ俺だってもっと強い魔物でもいくらだって狩れるさ。いくらでもな。けど、それでお前に万が一があってみろ。失うのはお前の命だ。どんな英雄にだって絶対はないんだ。だから、お前のレベルに合わせてやってるんだよ。」


その言葉はある意味では正しかったが、実際にはオルドに自信がないだけだった。

今のオルドの技量では、ゴブリン以上の下級の魔物を相手にしたときに、大きな怪我もなく勝つことは難しかった。

モーリスが冒険者になるまでの間に鍛えてきた槍だったらある程度はどうにかできるだろうとは思っていたが、見栄を張って持ち変えた片手剣では勝てる可能性は相当に低かった。


けれど、モーリスはそんなことは知らない。ただ、自分のことを思って言ってくれているのだと素直にオルドの意見に従った。


それから一年近くの時が経ったが、二人は相変わらずゴブリン以上の魔物を相手にしなかった。

その頃にはさすがにオルドも槍を使っていた時以上の技量を片手剣で振るえるようになっていた。

もっとも、モーリスはオルド以上の技量を完全に自分のものにしていた。

それは訓練の様子を見ただけでも周囲がEランクとほぼ同等の技量があると認めるほどであり、いつまでもGランクでくすぶっているような人材ではなかった。


さすがにこの頃には純朴なモーリスもオルドの言動がおかしいことに気付いていた。

自分の技量は間違いなくGランクよりも上だと自信を持って言えるし、オルドだってそうだ。

これ以上ゴブリンだけを狩り続ける意味なんて全くない。


「オルド、もういい加減Fランクに上がってもいいんじゃないか?」


「うるさい!そうやって慣れた頃に自分の実力を履き違えて死んでいくやつだっているんだ。お前もそうなりたくなかったらおとなしくゴブリン狩ってりゃいいんだよ!」


すでにオルドにはモーリスの言葉が届かなくなっていた。

たしかに、慢心したルーキーが出ていったっきり戻らなかったことはこの一年の間にも何度かあった。

けれど、森の浅い領域の魔物相手ならば、実力も足りているし、引き際もわかる。

オルドはただ臆病になっているだけだ。

そして―


(そうさせてしまったのは多分、俺のせいなんだな。)


それに気付いたとき、モーリスはオルドに付き従う決心をした。


オルドを狂わせた責任をとるために。

本来であれば早い段階でもっとしっかりと根気よく話を続けていれば、オルドの性格も関係性もよい方向に変わっていったはずだし、実際今のモーリスはそう考えていた。

それができなかったのは、当時はまだモーリス自身の心が弱く、若かったからだ。

先を見据えて一時の不和を許容する。そういう選択ができなかったのだ。


モーリスは若手の中では二年目にして頭角を現しはじめていた。

そういったことに鼻の効く冒険者はモーリスの勧誘をしていたが、彼はそれを固辞し続けていた。

気付けばモーリスもまた負のスパイラルへとはまっていった。

中途半端感が否めないですね。

多分後で書き直す・・・・・・かも。

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